インスリン産生の誘導方法およびその使用

著者らは特許

A61K31/366 - 6員環を持つもの,例.δ−ラクトン
A61K38/16 - 21以上のアミノ酸をもつペプチド;ガストリン;ソマトスタチン;メラノトロピン;その誘導体
A61K38/17 - 動物由来;ヒト由来
A61K38/28 - インシュリン
A61K45/06 - 化学的特性をもたない活性成分の混合物,例.消炎剤および強心剤
A61K48/00 - 遺伝子疾病を治療するために生体の細胞内に挿入する遺伝子物質を含有する医療用製剤;遺伝子治療
C12N - 微生物または酵素;その組成物(殺生物剤,有害生物忌避剤または誘引剤,または植物生長調節剤であって,微生物,ウイルス,微生物菌類,酵素,発酵生産物,または微生物または動物材料から生産されたまたは抽出された物質を含むものA01N63/00;医薬品製剤A61K;肥料C05F);微生物の増殖,保存,維持;突然変異または遺伝子工学;培地(微生物学的試験用の培地C12Q1/00)
C12N5/00 - ヒト,動物または植物の細胞,例.セルライン;組織;その培養または維持;そのための培地(組織培養技術による植物の増殖A01H4/00)
C12Q - 酵素または微生物を含む測定または試験方法(免疫試験G01N33/53)そのための組成物または試験紙;その組成物を調製する方法;微生物学的または酵素学的方法における状態応答制御
C12Q1/6883 -
G01N - 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析(参照,免疫分析以外の酵素または微生物を含む測定または試験C12M,C12Q)
G01N33/50 - 生物学的材料,例.血液,尿,の化学分析;生物学的特異性を有する配位子結合方法を含む試験;免疫学的試験(酵素または微生物を含む免疫学的なもの以外の測定または試験方法,そのための組成物または試験紙;そのような組成物を形成する方法,微生物学的方法または酵素学的方法における条件応答制御C12Q)
G01N33/68 - 蛋白質またはペプチドまたはアミノ酸を含むもの

の所有者の特許 JP2016517404:

ユニベルシテ ドゥ ジュネーブ

 

本発明は、非β細胞にインスリン産生を誘導する方法または非β細胞をインスリン産生細胞に変換させる方法に関し、かつ、糖尿病を予防および/または治療する方法および糖尿病に罹患した被験体の感受性を予測する方法に関する。

 

 

本発明は糖尿病の治療に関し、さらに詳細には、膵β細胞以外の細胞(「非β細胞」)をインスリン産生細胞に変換させるための組成物および方法に関する。
2012年に、全世界の糖尿病患者は約3億4千7百万人と推定されており、この数はなお増加し続けている(世界保健機関のデータによる)。糖尿病は世界中で発生しているが、先進国においてより多くみられる(特に2型)。しかしながら、将来の有病率が最も高くなるのはアジアおよびアフリカであると予想されており、おそらく2030年までには患者の大部分がそれらの地域にみられるであろうと考えられている。
糖尿病は、膵臓が十分なインスリンを産生しない場合か、または産生されたインスリンを身体が有効に利用できない場合に起こる慢性疾患である。インスリンは、血糖を調節するホルモンである。高血糖症、すなわち血糖値が高くなった状態は、制御されていない糖尿病において一般的にみられる影響であり、これが長期にわたると、多くの身体システム、特に神経および血管に深刻な損傷が引き起こされる。基礎となる異常によって、糖尿病は2つの主な型である1型および2型に分類される。1型糖尿病、すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者の膵腺にインスリン産生β細胞が存在しない。2型糖尿病、すなわち非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)では、患者のβ細胞の機能が損なわれており、インスリンの作用に変化がみられる。
現在、1型糖尿病患者にはインスリンの注射による治療が行われ、一方でほとんどの2型糖尿病患者には、β細胞の機能を刺激する薬剤または患者の組織のインスリンに対する感受性を増大させる薬剤を用いた治療が行われている。2型糖尿病の治療のために現在用いられている薬物としては、アルファグルコシダーゼ阻害剤、インスリン増感剤、インスリン分泌促進剤、メトホルミンおよびインスリンが挙げられる。
糖尿病を治療するための別のアプローチは、細胞置換に基づいた治療法である。しかしこの方法は、適合性ある機能的なインスリン産生β細胞を多数供給することが困難であるという問題に直面している。インスリン産生β細胞の数を増やす一つの方法は、個々の患者に内在する別のタイプの細胞の再プログラミングを介することである。近年の研究によれば、特定の誘導条件下では、膵臓のα細胞とβ細胞の間に顕著な可塑性が存在することが明らかにされており、形質転換されたα細胞によるインスリン産生経路の可能性が示唆されている。ほとんどすべてのβ細胞を破壊し、再生した成体マウスのモデルでは、グルカゴン+インスリン+移行状態の二ホルモン性(bi−hormonal)を経由して、α細胞から新規のインスリン産生細胞がある割合で産生された(Thorel et al,2010,Nature 464:1149−1154)。
生活習慣、食事制限および薬物治療を通した治療法ならびに患者管理の進歩にもかかわらず、糖尿病の治療および管理を成功させるための組成物および方法が、なお強く必要とされている。膵臓のα細胞およびβ細胞を含む細胞間の可塑性、ならびにそのような可塑性を促進し得る薬剤を利用する可能性をより良く理解することによって、患者の治療の可能性を増大させ、かつ生活の質を改善する、新しい治療上の戦略がもたらされ得る。
インスリン受容体アンタゴニストであるS961は、ラットに、高血糖症、高インスリン血症、インスリン抵抗性および貯蔵エネルギーの枯渇を引き起こす(Vikram and Jena,2010,Biochem Biophys Res Commun 398:260−265)。
真菌ペニシリウムフニクロスムのステロイド代謝産物であるワートマニンは、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)に特異的な、共有結合性の阻害剤である。ワートマニンについては、インターフェロンβ−1aによって治療した多発性硬化症の患者の再発に対する臨床試験が行われている。ワートマニンの誘導体であるPX−866は、経口投与した際に、新規かつ強力な、PI3Kの非可逆的阻害剤としての効力を示している。PX−866については、現在、ヒトの主要な癌に対する単独および併用療法を含む治験が行われている。
本発明の第1の態様は、インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞からのインスリン産生を刺激する工程を含む、非β細胞にインスリン産生を誘導する方法を提供する。
本発明の第2の態様は、インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞からのインスリン産生を刺激する工程を含む、非β細胞をインスリン産生細胞に変換する方法に関する。
本発明の第3の態様は、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを、必要に応じて治療上有効な量被験体に投与する工程を含む、糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。
本発明の第4の態様は、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストと組み合わせて、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞を自家移植または同種移植する工程を含む、必要に応じて被験体の糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。
本発明の第5の態様は、糖尿病の治療および/または予防のための薬剤の製造における、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストの使用に関する。
本発明の第6の態様は、糖尿病の予防および/または治療のための薬剤の製造における、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストと組み合わせた、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞の使用である。
本発明の第7の態様は、糖尿病の予防および/または治療に用いられる、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストに属する。
本発明の第8の態様は、糖尿病の予防および/または治療に用いられる、(i)前記アンタゴニストおよび(ii)膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞を含む組成物に関する。
本発明の第9の態様は、インスリンのシグナル伝達経路の阻害能を有する化合物をスクリーニングする方法に関し、この方法は、
a)β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞を試験化合物に曝露する工程、
b)インスリン産生細胞である前記細胞の数を、試験化合物の存在下および非存在下で決定する工程、および
c)工程b)で決定したインスリン産生細胞の数の2つの値を比較する工程を含み、
試験化合物の存在下でのインスリン産生細胞の数が、非存在下での数よりも多かった場合に、その試験化合物はインスリンのシグナル伝達経路を阻害可能であることが示されたとする。
本発明の第10の態様は、治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを投与することを含む糖尿病の治療に対する、糖尿病に罹患した被験体の感受性を予測する方法を提供し、該方法は、前記被験体の非β細胞に、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を検出する工程を含む。
本発明の第11の態様は、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストと、任意に、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞とを含む医薬組成物に関する。
本発明のその他の特色および利点は、以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。
図1A〜1Fは、DTを用いたβ細胞の除去後、Pdx1によって成熟α細胞にインスリン産生が誘導されたことを示した図である。(A)用いた導入遺伝子を示す。(B)実験計画を示す。(C)α細胞を含む膵島(YFP+)はすべてインスリンを産生している。(D)インスリン産生細胞の数は、DTによる処置後のαPdx1OEマウスの膵臓において増加している。(E)DTによる処置後の成熟α細胞に由来する大多数のインスリン陽性細胞はPdx1を発現している。(F)DTによる処置後のαPdx1OEマウスでは、再プログラミングされたα細胞(YFP+Ins+)の数が増加している。 図2A〜2Cは、成熟α細胞にPdx1を異所性に発現させると、グルカゴン産生が阻害されるが、未変化のβ細胞集団の存在下ではインスリン産生は誘導されないことを示した図である。(A)実験計画を示す。(B)αPdx1OEマウスでは、膵グルカゴンの量が減少している。(C)未変化のβ細胞集団の存在下では、ほとんどのα細胞が、Pdx1を介したインスリン産生に対して抵抗性である。対照的に、Pdx1は大多数のα細胞(YFP+)からのグルカゴン産生を効率的に阻害する。 図3A〜3Dは、DTを用いたβ細胞の除去後、成熟α細胞にPdx1を発現するマウスでは、膵インスリンの量が増加し、外来のインスリンをあまり必要としなくなったことを示した図である。(A〜B)DTによる処置後、αPdx1OEマウスの高血糖は低くなる傾向がみられる。(C)αPdx1マウスでは、血糖値を25mM未満に維持するために必要とされるインスリンの量が少ない。(D)αPdx1OEマウスの膵インスリン量が改善されたことは、インスリンペレットの必要性が少なくなったことと関連する。 図4A〜4Cは、DTを用いたβ細胞の除去後、成熟α細胞にPdx1を異所性に発現させると、グルカゴンの産生が阻害されることを示した図である。(A)DT後のαPdx1OEマウスでは、グルカゴンを発現する細胞の数は減少している。(B)DT後のPdx1陽性α細胞の大部分は、グルカゴンを産生していない。(C)DT後のα細胞にPdx1が発現されると、膵グルカゴンの量は迅速に減少する。 図5A〜5Dは、部分的なβ細胞の除去後、α細胞にPdx1を異所性に発現させると、インスリンの産生が誘導されることを示した図である。(A)ストレプトゾトシン(STZ)を用いてβ細胞の除去を行う実験計画を示す。(B)RIP−DTR半接合体の雌における、DTを用いたβ細胞除去の実験計画を示す。(C)STZを用いて大多数のβ細胞を除去した後、Pdx1を発現するα細胞のほとんどはインスリンを産生する。(D)部分的(50%)なβ細胞の除去によって、Pdx1を発現するα細胞の一部にインスリンの産生がみられる。 DTを用いたβ細胞の除去後、インスリンのシグナル伝達が低下することを示した図である。DTの使用後にインスリンシグナル伝達のほとんどの構成要素が低下する。インスリンの競合物質(S961)、IGF1−R受容体アンタゴニスト(PPP)、およびPI3キナーゼ阻害剤(ワートマニン)の作用部位を示す。 図7A〜7Bは、Pdx1を発現するα細胞が、インスリンのシグナル伝達の阻害後にインスリンを産生することを示した図である。(A)実験計画を示す。(B)Pdx1を発現するα細胞は、S961およびワートマニン(「Wort」)の投与後にインスリンを産生するが、PPPによる処置後には産生しない。 α細胞が、インスリン/IGF1シグナル伝達の欠如によってインスリンを発現する傾向があることを示した図である。(A)用いた導入遺伝子を示す。(B)実験計画を示す。 ヒトα細胞が、インスリン産生を再プログラム可能であることを示した図である。(A)実験計画を示す。(B)グルカゴン+/インスリン+である非α細胞のパーセンテージを示す。(C)インスリン+/グルカゴン+であるα細胞のパーセンテージを示す。
図中、「OE」は過剰発現、「DT」はジフテリア毒素、「Ins」は「インスリン」、「Gcg」はグルカゴンを表す。
本明細書で用いられる用語「α細胞」、「β細胞」、「δ細胞」、「PP細胞」および「ε細胞」は、膵臓に見出される5種の細胞カテゴリーを意味する。「α細胞」または「アルファ細胞」は、膵ランゲルハンス島内にある内分泌細胞であり、これはヒト島細胞のおおよそ35%を占め(Brissova et al,2005,J.Histochem.Cytochem.53(9),1087−1097)、血中のグルコース濃度を上昇させるペプチドホルモンであるグルカゴンの合成および分泌に関与する。「β細胞」または「ベータ細胞」は、同じように膵ランゲルハンス島内にある別のタイプの細胞であり、これはヒト島細胞のおおよそ54%を占める(Brissova et al,2005、上記)。β細胞の主要な機能は、血中グルコース濃度を低下させる機能をもたらすホルモンであるインスリンの製造、貯蔵および放出である。β細胞は、貯蔵されたインスリンの一部を分泌しながらさらに多くのインスリンを産生することによって、血中グルコース濃度の一過性の増大に迅速に応答する。「δ細胞」、「デルタ細胞」および「D細胞」は、胃、腸および膵ランゲルハンス島に見出されるソマトスタチン産生細胞である。「F細胞」または「PP細胞」は、膵ランゲルハンス島に見出される膵ポリペプチド産生細胞を意味する。「イプシロン細胞」または「ε細胞」は、ランゲルハンス島に見出される、グレリンホルモンを産生する内分泌細胞である。
用語「非β細胞」は、膵β細胞ではないいずれかの細胞を指す。この用語には、膵α細胞(「アルファ細胞」)、膵δ細胞(「デルタ細胞」)、膵PP細胞、ε細胞(「イプシロン細胞」)、肝臓由来の細胞および腸由来の細胞のような、消化管に付随する神経内分泌細胞、および皮膚由来の細胞のような末梢細胞が含まれる。
本明細書で用いられる「β細胞に特徴的な転写因子」は、膵臓の発生およびβ細胞の分化に関わる転写因子、ならびに成熟β細胞の遺伝子発現を調節する転写因子を指す。β細胞に発現されるこれらの転写因子としては、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3、NeuroD1が挙げられる(ME Cerf,2006,Eur J Endocrinol 155:671−679)。これらの転写因子のうち、Pdx−1は、膵臓の初期発生、β細胞の分化および成熟β細胞の維持に対して鍵となる転写因子であるとみなされている。NKファミリーメンバーであり、ホメオドメインタンパク質であるNkx2.2の活性がβ細胞の成熟には必要であるが、その遠隔ホモログ(distant homologue)であるNkx6.1(NK6ホメオボックス1)はβ細胞の増殖を制御する。
本明細書で用いられる「Pdx−1」は、「Ipf−1」、「Idx−1」、「Iuf−1」、「Mody4」、「Stf−1」、「Pdx−1」とも称される、ヒトまたはマウスの「膵臓および十二指腸ホメオボックス1」を指す。マウスでは、Pdx−1タンパク質は284アミノ酸を有し、その配列はGenebankアクセッション番号(NP_032840.1)として開示されており(配列番号1)、Genebankアクセッション番号NM_008814として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、Pdx−1タンパク質は283アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_000200.1として開示されており(配列番号2)、Genebankアクセッション番号NG_008183として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語Pdx−1は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。Pdx−1タンパク質は、インスリン、ソマトスタチン、グルコキナーゼ、島アミロイドポリペプチド、および2型グルコース輸送体(GLUT2)を含む幾つかの遺伝子の転写活性化因子である。
本明細書で用いられる「Nkx6.1」は、「Nkx6A」または「Nkx6−1」とも称される、ヒトまたはマウスの「Nk6ホメオボックス1」を指す。マウスでは、Nkx6.1タンパク質は365アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_659204.1として開示されており(配列番号3)、Genebankアクセッション番号NM_144955として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、Nkx6.1タンパク質は367アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_006159.2として開示されており(配列番号4)、Genebankアクセッション番号NM_006168として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語Nkx6.1は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。膵臓では、Nkx6.1はβ細胞の発生に必要であり、これは標的遺伝子のプロモーター領域内のATリッチ配列に結合する強力な二機能性の転写制御因子である(Iype et al.,2004,Molecular Endocrinology 18(6):1363−1375)。
本明細書で用いられる「Nkx2.2」は、「Nkx2B」または「Nkx2−2」とも称される、ヒトまたはマウスの「Nk2ホメオボックス2」を指す。マウスでは、Nkx2.2タンパク質は273アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号AAI38160.1として開示されている(配列番号5)。ヒトでは、Nkx2.2タンパク質は273アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_002500.1として開示されており(配列番号6)、Genebankアクセッション番号NM_002509として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語Nkx2.2は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。Nkx2.2は、膵島における細胞の運命の決定および神経管腹側の細胞パターン形成に必要とされる。Nkx2.2は、補助抑制因子であるGroucho−4(Grg4)との相互作用を通して、神経管腹側のパターン形成を調節する転写抑制因子として作用する(Muhr et al,2001,Cell 104:861−873)。この相互作用はtinman(TN)ドメインと称されるモチーフを介したものである。このtinman(TN)ドメインは転写抑制因子であるエングレイルド内のエングレイルド相同性1ドメインのコア領域と配列相同性を有し、これを介してGrg/TLEタンパク質と相互作用する(Jimenez et al,1997,Genes Dev 11:3072−3082)。発生途中の膵臓では、Nkx2.2は、時間的または細胞特異的な環境に応じて、転写抑制因子または活性化因子として機能するようである(Anderson et al,2009,J Biol Chem 284:31236−31248)。
本明細書で用いられる「Pax4」は、「MODY9」、「KPD」、または「ペアードドメイン遺伝子4」とも称される、ヒトまたはマウスの「ペアードボックス遺伝子4」を指す。マウスでは、Pax4タンパク質は349アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号アクセッション番号BAA24516として開示されており(配列番号7)、Genebankアクセッション番号NM_011038として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、Pax4タンパク質は350アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号O43316として開示されており(配列番号8)、Genebankアクセッション番号NM_006193として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語Pax4は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。Pax4は、胎児の発生および癌の増殖に決定的な役割を果たす。Pax4遺伝子は膵島の発生に関連しており、マウスでの研究によって、インスリン産生β細胞の分化におけるこの遺伝子の役割が示された。
本明細書で用いられる「Pax6」は、「無虹彩症II型タンパク質」、「AN2」または「oculorhombin」とも称される、ヒトまたはマウスの「ペアードボックス遺伝子6」を指す。マウスでは、Pax6タンパク質は422アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号AAH36957として開示されており(配列番号9)、Genebankアクセッション番号NM_001244198として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、Pax6タンパク質は422アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_000271として開示されており(配列番号10)、Genebankアクセッション番号NM_000280として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語Pax6は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。Pax6は、眼、鼻、中枢神経系および膵臓の発生に重要な機能を有する。Pax6は膵島α細胞の分化に必要とされ、グルカゴン、インスリンおよびソマトスタチンプロモーターに共通のエレメントへの結合に対してPAX4と競合する。
本明細書で用いられる「MafA」は、「hMafA」または「RIPE3b1」とも称される、「膵β細胞特異的転写活性化因子」を指す。マウスでは、MafAタンパク質は359アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_919331.1として開示されており(配列番号11)、Genebankアクセッション番号AF097357として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、MafAタンパク質は353アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_963883.2として開示されており(配列番号12)、Genebankアクセッション番号AY083269として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語MafAは、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。Wangらによって開示されるように(2007,Diabetologia 50(2):348−358)、MafAはDNAに結合して、Glut2およびピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子、ならびにGlut2、Pdx−1、Nkx6.1、GLP−1受容体、プロホルモン転換酵素1/3のようなその他の遺伝子の転写を活性化する。
本明細書で用いられる「Ngn3」は、「Atoh5」、「Math4B」、「bHLHa7」、または「Neurog3」とも称される、ヒトまたはマウスの「ニューロゲニン3」を指す。マウスでは、Ngn3タンパク質は214アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_033849.3として開示されており(配列番号13)、Genebankアクセッション番号NM_009719として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、Ngn3タンパク質は214アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_066279.2として開示されており(配列番号14)、Genebankアクセッション番号NM_020999として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語Ngn3は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。Ngn−3は内分泌前駆細胞に発現しており、膵臓および腸における内分泌細胞の発生に必要とされる(Wang et al.,2006,N Engl J Med,355(3):270−80)。Ngn3は、神経外胚葉内の神経前駆体細胞の決定に関与する、ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子ファミリーに属する(Gradwohl et al.,2000,PNAS 97(4))。Serafimidisらによって開示されるように(2008,Stem cells,26:3−16)、Ngn3タンパク質はDNAに結合して、NeuroD、デルタ様1(Dll1)、HeyL、インスリノーマ関連1(IA1)、Nk2.2、Notch、HesS、Isl1、ソマトスタチン受容体2(Sstr2)遺伝子およびその他の遺伝子の転写を活性化する。
本明細書で用いられる「NeuroD1」は、「Beta2」、「Bhf−1」、「bHLHa73」、または「NeuroD」とも称される、ヒトまたはマウスの「神経原性分化1」を指す。マウスでは、NeuroD1タンパク質は357アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号AAH94611として開示されており(配列番号15)、Genebankアクセッション番号NM_010894として開示される配列の遺伝子によってコードされる。ヒトでは、NeuroD1タンパク質は356アミノ酸を有し、そのアミノ酸配列はGenebankアクセッション番号NP_002491として開示されており(配列番号16)、Genebankアクセッション番号NM_002500として開示される配列の遺伝子によってコードされる。本明細書で用いられる用語NeuroD1は、種の変異型、ホモログ、実質的に相同な変異型(天然または合成の)、対立遺伝子形、突然変異体、およびタンパク質の構造または機能に不利な影響を及ぼさない保存された置換、付加、欠失を含むそれらの等価物もまた包含する。NeuroD1タンパク質は、その他のbHLHタンパク質とヘテロ二量体を形成して、Eボックスとして知られる特異的DNA配列を含む遺伝子の転写を活性化する。NeuroD1タンパク質は、インスリン遺伝子の発現を調節し、NeuroD1遺伝子の変異によってII型糖尿病がもたらされる。
一般に「インスリンのシグナル伝達経路(insulin signaling pathway)」または「インスリンのシグナル伝達経路(insulin signal transduction pathway)」との表現は、細胞によるグルコースの取り込みの調節を導く、細胞表面のインスリン受容体(インスリン受容体IR)へのインスリンの結合に始まり、細胞質内での生化学反応までの、一連の反応を意味する。
用語「相同」が、遺伝子変異型またはポリペプチド変異型に対して用いられる場合、この用語は参照遺伝子またはポリペプチドと実質的に相同な遺伝子変異型またはポリペプチド変異型を意味するが、これらのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、参照遺伝子またはポリペプチドのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列とは異なっており、別の種に由来するものであるか、または1以上の欠失、挿入または置換の結果としての天然もしくは合成変異型に相当するものである。実質的に相同であるとは、変異型ヌクレオチド配列が、参照遺伝子または同等な遺伝子、すなわち他の種において同じように機能する遺伝子のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同等であることを意味する。実質的に相同であるとは、変異型アミノ酸配列が、参照ポリペプチドまたは同等なポリペプチド、すなわち他の種において同じように機能するポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同等であることを意味する。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性は、目視および/または計算によって、またはさらに簡単には、Clustalパッケージバージョン1.83のようなコンピュータプログラムを用いた配列情報の比較によって決定することができる。遺伝子の変異型は、少なくとも1の保存的に置換されたアミノ酸、すなわち所定のアミノ酸残基が同様な生理化学的特性を有する残基によって置換されたアミノ酸、を有する配列を含んでよい。一般に、未変性のポリペプチドに存在する1以上のアミノ酸の置換は保存的に為されなければならない。保存された置換の例としては、単数または複数の活性化ドメインの外側に起こるアミノ酸の置換、および参照ポリペプチドの二次構造および/または三次構造を変化させないアミノ酸の置換が挙げられる。保存された置換の例としては、一つの脂肪族残基の別の脂肪族残基による置換、例えばIle、Val、Leu、またはAlaが互いに置換されること、または一つの極性残基の別の極性残基による置換、例えば、LysとArg、GluとAsp、またはGlnとAsnとの間での置換が挙げられる。その他のこのような保存された置換、例えば、同様な疎水特性を有する全領域の置換は公知である(Kyte et al.,1982,J.Mol.Biol.,157:105−131)。本発明には、天然の変異型も包含される。このような変異型の例は、オルタナティブmRNAスプライシング現象からもたらされたタンパク質、または未変性タンパク質のタンパク質分解性切断からもたらされたタンパク質であって、未変性の場合の生物学的特性が保持されたタンパク質である。例えば、「保存されたアミノ酸置換」には、未変性ではない残基による未変性のアミノ酸残基の置換も含まれてよく、この場合、その位置におけるアミノ酸残基の極性または電荷は、わずかに影響されるか、もしくはまったく影響されない。所望のアミノ酸置換(保存されているか、保存されていないかにかかわらず)は、そのような置換が所望される際に、当業者によって決定することができる。
インスリンのシグナル伝達経路の「アンタゴニスト」との用語は、インスリンシグナル伝達に関連する生物分子の活性に対して、完全に、または部分的に拮抗する分子を指すものとして定義される。アンタゴニストには、非ペプチド構造エレメントを含むペプチド類似体として定義される「ペプチド模倣薬」が包含され、このペプチドは、天然の親ペプチドにみられる単数または複数の生物作用を模倣可能であるか、またはこれに拮抗可能である。ペプチド模倣薬にはもはや、酵素的に切断可能なペプチド結合のような、古典的なペプチドの特性はみられない。アンタゴニストには抗体も包含される。インスリンのシグナル伝達経路の「アンタゴニスト」には、S961、S661(Schaffer et al,2008,Biochem Biophys Res Commun 376:380−383;Vikram and Jena,2010,Biochem Biophys Res Commun 398:260−265)、および2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体(Knusden et al,2012,PLoS ONE 7,12,e51972)のようなインスリン受容体の公知のアンタゴニスト、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)阻害剤、例えばワートマニンまたはPX−866((4S,4aR,5R,6aS,9aR,E)−1−((ジアリルアミノ)メチレン)−11−ヒドロキシ−4−(メトキシメチル)−4a,6a−ジメチル−2,7,10−トリオキソ−1,2,4,4a,5,6,6a,7,8,9,9a,10−ドデカヒドロインデノ[4,5−h]イソクロメン−5−イルアセテート)およびSF1126((8S,14S,17S)−14−(カルボキシメチル)−8−(3−グアニジノプロピル)−17−(ヒドロキシメチル)−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1−(4−(4−オキソ−8−フェニル−4H−クロメン−2−イル)モルホリノ−4−イウム)−2−オキサ−7,10,13,16−テトラアザオクタデカン−18−オエート)のようなワートマニンの誘導体、GDC−0941(4−(2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−((4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル)メチル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)モルホリン)、XL−147(N−(3−(ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール−5−イルアミノ)キノキサリン−2−イル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド)、XL−765(2−アミノ−8−エチル−4−メチル−6−(1H−ピラゾール−3−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン)、D−87503(N−[3−(4−ヒドロキシフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン−6−イル]−N’−2−プロペン−1−イルチオウレア)、D−106669(N−エチル−N’−[3−[(4−メチルフェニル)アミノ]ピリド[2,3−b]ピラジン−6−イル]ウレア)、GSK−615()、CAL−101(イデラリシブ、5−フルオロ−3−フェニル−2−[(1S)−1−(7H−プリン−6−イルアミノ)プロピル]−4(3H)−キナゾリノンとも称される)、NVP−BEZ235(またはBEZ−235、2−メチル−2−{4−[3−メチル−2−オキソ−8−(3−キノリニル)−2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]フェニル}プロパン−ニトリル)、LY294002(2−(4−モルホリニル)−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)(Sauveur−Michel et al,2009,Biochem.Soc.Trans.37,265−272)、ブパリシブ(BKM−120、5−[2,6−ジ(4−モルホリニル)−4−ピリミジニル]−4−(トリフルオロメチル)−2−ピリジンアミンとも称される)、GDC−0032(1H−ピラゾール−1−アセトアミド、4−[5,6−ジヒドロ−2−[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル]イミダゾ−[1,2−d][1,4]ベンゾオキサゼピン−9−イル]−α,α−ジメチル−)、BAY80−6946(5−ピリミジンカルボキサミド、2−アミノ−N−[2,3−ジヒドロ−7−メトキシ−8−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]イミダゾ[1,2−c]キナゾリン−5−イル]−)、IPI−145((S)−3−(1−((9H−プリン−6−イル)アミノ)エチル)−8−クロロ−2−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン)、BYL−719((S)−N1−(4−メチル−5−(2−(1,1,1−トリフルオロ−2−メチルプロパン−2−イル)ピリジン−4−イル)チアゾール−2−イル)ピロリジン−1,2−ジカルボキサミド)、BGT−226(8−(6−メトキシピリジン−3−イル)−3−メチル−1−(4−(ピペラジン−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2(3H)−オン)、PF−04691502(2−アミノ−8−[トランス−4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシ−3−ピリジニル)−4−メチル−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン)、GDC−0980((S)−1−(4−((2−(2−アミノピリミジン−5−イル)−7−メチル−4−モルホリノチエノ[3,2−d]ピリミジン−6−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−プロパン−1−オン)、GSK−2126458(2,4−ジフルオロ−N−(2−メトキシ−5−(4−(ピリダジン−4−イル)キノリン−6−イル)ピリジン−3−イル)ベンゼンスルホンアミド)、PF−05212384(N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)−1−ピペリジニル]カルボニル]フェニル]−N’−[4−(4,6−ジ−4−モルホリニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]ウレア)(Akinleye et al.2013,Journal of Hematology & Oncology,6,88)が包含される。インスリンのインスリン受容体への結合によって開始される、細胞内でのインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストもまた包含され、このようなアンタゴニストとしてはTaniguchiらにより開示されるインスリンシグナル伝達ネットワークの決定的な中心点(Nature Reviews Molecular Cell Biology,2006,7,85−96)およびSiddleにより開示される標的(Journal Molecular Endocrinology,2011,47,R1−R10)が挙げられる。
本明細書における用語「β細胞の除去」は、例えばジフテリア毒素およびストレプトゾトシンをそれぞれ用いて、膵臓にアポトーシスまたは壊死を起こすことによる、全体的または部分的なβ細胞の減少を意味する。β細胞の大量除去は、Naglichら(cell,1992,69(6):1051−1061)またはSaitoら(Nat Biotechnol,2001,19(8):746−750)に開示されるように、ジフテリア毒素受容体をホモ接合性にトランスジェニック発現させた後、ジフテリア毒素を投与することによって達成される。β細胞の部分的な除去は、ジフテリア毒素受容体をヘテロ接合性にトランスジェニック発現させた後、上記のようにジフテリア毒素を投与するか、またはLenzen,2008,Diabetologia 2008;51:216−26に開示されるようにストレプトゾトシンを用いることによって達成される。
本明細書で用いられる用語「糖尿病」は、グルコース不耐性をもたらす、比較的または絶対的なインスリンの欠乏によって特徴付けられる慢性疾患を指す。この用語は、患者が高血糖である代謝疾患群としての糖尿病も網羅する。本明細書で用いられる用語「糖尿病」には、自己免疫による膵臓のインスリン産生β細胞の破壊からもたらされる糖尿病の型である「1型糖尿病」、インスリン抵抗性およびインスリンの比較的な欠乏に関連した、血中の高グルコースによって特徴付けられる代謝性疾患である「2型糖尿病」、事前に糖尿病と診断されてはいない女性が、妊娠中に高い血中グルコース濃度を示す状態である「妊娠糖尿病」、インスリン産生に影響を及ぼす遺伝子の変化によって、6か月未満で診断される糖尿病の稀な型である「新生児糖尿病」、および単一遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性糖尿病の稀な型である「若年発症成人型糖尿病」(MODY)が包含される。本明細書で用いられる「治療」および「治療する」などは、一般に所望の薬理的および生理的効果を得ることを意味する。この効果は、疾病、症状もしくはそれらの状態を予防するかまたは部分的に予防するという点で予防的であってよく、かつ/または疾病、状態、症状もしくは疾病が原因である有害作用を部分的または完全に治癒させるという点で治療的であってもよい。本明細書で用いられる用語「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける疾病のいずれの治療も網羅し、(a)疾病にかかりやすい傾向があるようだが、まだそれと診断されていない被験体に、例えば初期の無症状時に予防的な治療介入を行うことによって疾病の発生を予防すること、および(b)疾病を抑制すること、すなわちその発生を停止させること、または疾病を軽減させること、すなわち、これは例えば損傷の改善または修復のような、疾病および/またはその症状もしくは状態を後退させることに起因する、が包含される。特に、本発明の方法、使用、製剤および組成物は、糖尿病の治療において、かつ/または糖尿病の進行の予防において有用である。糖尿病に関して、疾病または疾患の予防には、例えば個体の血縁者の中で過去に糖尿病を発症した者がいることにより、糖尿病発生のリスクがあると同定された個体における糖尿病の出現または発生の予防が包含される。糖尿病の「予防/治療」との用語は、既に糖尿病と診断された個体の安定化も網羅する。「安定化」は、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性非ケトン状態、低血糖症、糖尿病性昏睡、呼吸器感染症、歯周病、糖尿病性心筋症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性足病変、糖尿病性網膜症、冠動脈疾患、糖尿病性筋壊死、末梢血管疾患、脳卒中、糖尿病性脳症のような合併症を誘導する糖尿病の進行の予防または遅延を意味する。
本明細書で用いられる用語「被験体」は、哺乳類を指す。例えば、本発明によって意図される哺乳類としては、ヒト、霊長類、家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、実験用げっ歯類などが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「有効量」は、本発明の少なくとも1のアンタゴニスト、組成物またはその医薬製剤の量であって、想定される細胞、組織、系、動物、またはヒトにおいて生物学的または医薬的な応答を誘発する量を指す。一実施形態によれば、有効量は、治療される疾病または状態の症状を緩和するための「治療上有効な量」である。別の実施形態によれば、有効量は、予防される疾病または状態の症状を予防するための「予防上有効な量」である。本明細書において、この語には、疾病の進行を減少させるため、糖尿病の合併症を明らかに遅延、減少または阻害させるために十分な、活性化されたアンタゴニストの量であって、想定される応答が誘発される量(すなわち「阻害の有効量」)も包含される。
本発明による治療の「有効性」との用語は、本発明の使用または方法に応答した、疾病の経過における変化に基づいて測定可能である。例えば、糖尿病治療の有効性は、安定的に制御された血中グルコース濃度および/または血中糖化ヘモグロビン濃度の定期的なモニターによって測定可能である。
用語「医薬製剤」は、単数または複数の有効成分の生物学的活性がはっきりと有効となるような形の製剤であって、前記製剤を投与され得る被験体に対して毒性のある追加成分を含まない製剤を指す。
細胞にインスリン産生を誘導する本発明の方法
第1の態様によれば、本発明は、非β細胞にインスリン産生を誘導する方法であって、インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞からのインスリン産生を刺激する工程を含む方法を提供する。
本発明に従った、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞は、例えば前記転写因子を、被験体の糖尿病状態の結果として自然に発現し得るか、または、例えばβ細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現させるための、遺伝子工学またはその他の手段による誘導の結果として、人工的に発現し得る。
特定の実施形態によれば、本発明は非β細胞にインスリン産生を誘導する方法を提供し、この方法は、
a)膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を誘導することによって、前記非β細胞を改変する工程、および
b)インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、工程a)で得られた改変非β細胞のインスリン産生を刺激する工程を含む。
別の態様によれば、本発明の方法は非β細胞をインスリン産生細胞に変換させる方法に関し、該方法は、インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を既に発現している非β細胞のインスリン産生を刺激する工程を含む。
上述したように、本発明に従った、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞は、前記転写因子を、被験体の糖尿病状態の結果として自然に発現し得るか、または、β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現させるための、遺伝子工学またはその他の手段による誘導の結果として、人工的に発現し得る。
一実施形態によれば、本発明の方法は非β細胞をインスリン産生細胞に変換させる方法に関し、該方法は、
a)膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を誘導することによって、前記非β細胞を改変する工程、および
b)インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、工程a)で得られた改変非β細胞のインスリン産生を刺激する工程を含む。
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、工程b)で得られた細胞の少なくとも10%、詳細には少なくとも20%、さらに詳細には少なくとも30%、さらになお詳細には少なくとも40%がインスリン産生細胞である。
本発明の方法の別の実施形態によれば、工程b)で得られた細胞によって産生されるインスリンの量は、被験体における血中グルコース濃度の制御能を有意に改善するために十分である。血中グルコースの測定方法は、当業者に公知である。
特定の態様によれば、本発明の方法は膵α細胞をインスリン産生細胞に変換させる方法に関し、該方法は、
a)膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を誘導することによって、前記α細胞を改変する工程、および
b)インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、工程a)で得られた改変細胞のインスリン産生を刺激する工程を含み、
これによれば、工程b)で得られた細胞の少なくとも10%、詳細には少なくとも20%、さらに詳細には少なくとも30%、さらになお詳細には少なくとも40%がインスリン産生細胞である。
本発明の方法は、ランゲルハンス島が含まれるものが包含される、分離細胞、培養細胞、組織またはその切片を用いたex vivo、または動物、特に非ヒト哺乳類、例えばマウスのような実験用げっ歯類の全身を用いたin vivoに応用可能である。
本発明の方法は、膵α細胞、δ細胞、PP細胞、ε細胞、消化管に付随する神経内分泌細胞、例えば肝臓由来の細胞および腸由来の細胞、ならびに皮膚由来の細胞のような末梢細胞を包含する、様々な非β細胞型に応用可能である。
膵組織、ならびにα細胞、β細胞、δ細胞およびε細胞を包含する島細胞は、ヒト島細胞の蛍光標識細胞分取(FACS)(Bramswig et al,2013,J.Clin.Inv.123,p1275−1284)のような、当該技術分野における標準法に従って分離することができる。肝臓由来の細胞および腸由来の細胞のような、消化管に付随する神経内分泌細胞、およびこれらの細胞を含む組織は、当業者に公知の標準法に従って分離することができる。皮膚由来の細胞のような末梢細胞、およびこれらの細胞を含む組織は、当業者に公知の標準法に従って分離することができる。
本発明に従った、膵β細胞に特徴的な転写因子には、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3およびNeuroD1が包含される。
特定の実施形態によれば、本発明の方法の工程a)は、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3およびNeuroD1からなる群より選択される、β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を、前記非β細胞、特に膵α細胞に誘導することによって行われる。
さらに特定の実施形態によれば、本発明の方法の工程a)は、Pdx−1の発現を、前記非β細胞、特に膵α細胞に誘導することによって行われる。
別の特定の実施形態によれば、本発明の方法の工程a)は、恒常性または誘導性プロモーターの制御下に置かれたPdx−1遺伝子のコード配列を含む核酸を、前記非β細胞、特に膵α細胞にトランスフェクトすることで、前記細胞にPdx−1の発現を誘導することによって行われる。
特定の実施形態によれば、本発明の方法の工程a)は、Nkx6.1またはNkx2.2の発現を、前記非β細胞、特に膵α細胞に誘導することによって行われる。
本発明によれば、β細胞に特徴的な転写因子の発現の誘導は、恒常性または誘導性プロモーターの制御下に置かれた前記転写因子の遺伝子のコード配列を含む核酸を、非β細胞にトランスフェクトすることによって行われる。
本発明の方法において、前記非β細胞にトランスフェクトするための核酸はベクター(ウイルス性または非ウイルス性ベクターのいずれか)の形であり、この核酸は、微小気泡、リン酸カルシウム−DNA共沈殿、DEAEデキストランを介したトランスフェクション、ポリブレンを介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注入法、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染および微粒子銃のような、当該技術分野における標準法を用いて前記細胞内に送達される。
特定の実施形態によれば、本発明の方法のインスリン産生を刺激する工程は、前記膵臓の非β細胞が含まれる膵島組織において、組織レベルまたはin vivoのいずれかで、例えば、Naglichら(cell 1992,69(6):1051−1061)またはSaitoら(Nat Biotechnol,2001,19(8):746−750)に開示されるような、ジフテリア毒素受容体をトランスジェニック発現させた後のジフテリア毒素の投与による、またはLenzen(Diabetologia,2008;51:216−226)に開示されるようなストレプトゾトシンの使用による、β細胞の除去(部分的または全体的)によって実行される。
別の実施形態によれば、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を誘導する工程は、上記のようなβ細胞の除去(部分的または全体的)によっても実行される。
別の実施形態によれば、インスリンのシグナル伝達経路を遮断する工程は、ex vivoで前記非β細胞とインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストとを接触させることによって実行される。
別の実施形態によれば、インスリンのシグナル伝達経路を遮断する工程は、in vivoで、糖尿病に罹患した被験体にインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを投与することによって実行される。
本発明のさらなる実施形態によれば、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストは、S961、S661、もしくはそれらの誘導体、および2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体のようなインスリン受容体アンタゴニスト、またはPI3K阻害剤、例えばワートマニンまたはPX−866およびSF1126のようなワートマニンの誘導体、GDC−0941、XL−147、XL−765、D−87503、D−106669、GSK−615、CAL−101、NVP−BEZ235、LY294002、ブパリシブ(BKM−120とも称される)、GDC−0032、BAY80−6946、IPI−145、BYL−719、BGT−226、PF−04691502、GDC−0980、GSK−2126458、およびPF−05212384、またはインスリン受容体に結合したインスリンによって開始される、インスリンの細胞内シグナル伝達経路のアンタゴニストである。
さらなる実施形態によれば、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストは、配列番号18の配列で示される、インスリン受容体アンタゴニストS961である。
本発明の治療方法および使用
本発明の別の態様は、治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを、被験体の必要に応じて投与することを含む、糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、前記アンタゴニストは、S961、S661、それらの誘導体、および2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体のようなインスリン受容体アンタゴニスト、ならびにPI3K阻害剤、例えばワートマニンまたはPX−866およびSF1126のようなワートマニンの誘導体、GDC−0941、XL−147、XL−765、D−87503、D−106669、GSK−615、CAL−101、NVP−BEZ235、LY294002、ブパリシブ(BKM−120とも称される)、GDC−0032、BAY80−6946、IPI−145、BYL−719、BGT−226、PF−04691502、GDC−0980、GSK−2126458、およびPF−05212384、ならびにインスリン受容体に結合したインスリンによって開始される、インスリンの細胞内シグナル伝達経路のアンタゴニストからなる群より選択される。
特定の実施形態によれば、糖尿病を予防および/または治療するための本発明の方法は、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3、またはNeuroD1のような、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞、特に膵α細胞を自家移植または同種移植することをさらに含む。
自家移植は、治療される被験体から分離した非β細胞に由来する改変細胞の移植であり、一方で同種移植は、治療される被験体ではないが、同じ種に属する被験体から分離した非β細胞に由来する改変細胞の移植である。
本発明によれば、非β細胞は、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストの投与よりも前に、これと同時に、またはこれと連続的に、被験体へ投与することができる。
非β細胞の自家移植または同種移植を含む、糖尿病を予防および/または治療するための本発明の方法において有用な非β細胞は、α細胞、δ細胞、PP細胞、ε細胞、消化管に付随する神経内分泌細胞、例えば肝臓由来の細胞および腸由来の細胞、ならびに皮膚由来の細胞のような末梢細胞を包含する、様々な膵臓の非β細胞であってよい。
別の態様によれば、本発明は、糖尿病を予防および/または治療するための薬剤の製造における、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストの使用を提供する。
本発明の使用の特定の実施形態によれば、前記アンタゴニストは、S961、S661、またはそれらの誘導体、および2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体のようなインスリン受容体アンタゴニスト、ならびにPI3K阻害剤、例えばワートマニンまたはPX−866およびSF1126のようなワートマニンの誘導体、GDC−0941、XL−147、XL−765、D−87503、D−106669、GSK−615、CAL−101、NVP−BEZ235、LY294002、ブパリシブ(BKM−120とも称される)、GDC−0032、BAY80−6946、IPI−145、BYL−719、BGT−226、PF−04691502、GDC−0980、GSK−2126458、およびPF−05212384、ならびにインスリン受容体に結合したインスリンによって開始される、インスリンの細胞内シグナル伝達経路のアンタゴニストからなる群より選択される。
別の実施形態によれば、糖尿病を予防および/または治療するために、本発明のアンタゴニストの使用は、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3、またはNeuroD1のような、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞、特に膵α細胞の使用と組み合わされる。
さらなる実施形態によれば、糖尿病を予防および/または治療するための本発明の方法ならびに使用は、糖尿病に罹患した被験体の、本発明の治療に対する感受性を予測するための下記方法に従って同定された被験体に応用される。
別の態様によれば、本発明は、治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを投与することを含む治療に対する、糖尿病に罹患した被験体の感受性を予測する方法を提供し、該方法は、前記被験体由来の非β細胞に、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3、またはNeuroD1のような、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を検出する工程を含む。
当該技術分野において公知のいずれかの方法が、体液中の転写因子のタンパク質濃度の決定および前記転写因子の遺伝子の転写量の決定を含む、前記転写因子の発現の決定のために用いられてよい。考えられる方法としては、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、マススペクトロメトリー、マイクロアレイ分析およびRT−PCRが挙げられる。
本発明の一実施形態によれば、ELISAはサンドイッチアレイから構成され、ここでは分析されるタンパク質に対する一つの型の抗体(「一次」抗体)によって従来のマイクロタイタープレートをコートする。次にこのプレートをブロックした後、試料または標準試料を添加する。インキュベーション後に一次抗体を添加し、続いて、適切な標識、例えば発色による検出のための酵素を結合させた、一次抗体に対する別の型の抗体(「二次」抗体)を添加する。最後に、標識を検出および定量するために、標識に対する基質を加えてプレートを発色させ、分析するタンパク質の存在およびその量を測定する。標識が発色による検出のための酵素である場合、結合させた酵素の基質は発色反応を起こす基質である。次にマイクロプレートリーダーを用いて発色反応を検出し、標準試料と比較する。
適切な抗体の一組(「一次」および「二次」抗体)は、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ニワトリ、ロバまたはウマの組み合わせのいずれかである。モノクローナル抗体が好ましいが、ポリクローナル抗体または抗体断片の使用も可能である。適切な標識は、発色性の標識、すなわち基質を検出可能な色または蛍光化合物に変換させる酵素、分光標識、例えば蛍光標識または可視色を呈する標識、その標識に特異的なさらなる化合物によって発現し、検出および定量が容易になる親和性標識、標準ELISA法で用いられるその他のいずれかの標識である。
タンパク質を検出するためのその他の好ましい方法は、自動化された市販の分析ロボットによる、単一抗体と化学発光検出とを用いた、放射性免疫測定法または競合的免疫アッセイである。微粒子によって増強された蛍光、蛍光偏光法、またはマススペクトロメトリーもまた用いられてよい。検出装置、例えばマイクロアレイは、分析したタンパク質の読み取りシステムとして有用な要素である。
非β細胞における、膵β細胞に特徴的な転写因子の発現量を決定する方法には、前記転写因子の遺伝子のRT−PCR分析も包含される。
特定の実施形態によれば、膵β細胞に特徴的な転写因子、特にPdx−1の発現を、前記被験体由来の非β細胞に検出する工程は、
a)前記被験体由来の生体試料を供給すること、
b)前記試料と前記転写因子に対する抗体とを接触させることであって、この接触は、前記試料中の転写因子の前記抗体への、抗原−抗体相互作用を介した結合に十分な条件下で行われること、
c)抗原−抗体複合体を検出することであって、前記複合体の存在が、前記被験体由来の非β細胞における前記転写因子の発現を示していること
を含む。
上記実施形態の特定の態様によれば、前記転写因子に対する抗体は蛍光標識されており、抗原−抗体複合体の存在は、蛍光の検出を介して検出される。
別の実施形態によれば、膵β細胞に特徴的な転写因子、特にPdx−1の発現を、前記被験体由来の非β細胞に検出する工程は、
a)前記被験体由来の生体試料、特に膵生検試料を供給すること、
b)a)の前記試料から全RNAを抽出すること、
c)工程b)で得られたRNAをcDNAへ逆転写した後、前記転写因子の遺伝子を増幅するために適したプライマーを用いて定量PCRを行うこと、
d)工程c)で得られた、前記転写因子の遺伝子に特異的なPCR産物を検出することであって、前記PCR産物の存在が、前記被験体由来の非β細胞、特に膵α細胞における前記転写因子の遺伝子発現を示していること
を含む。
さらなる実施形態によれば、膵β細胞に特徴的な転写因子、特にPdx−1の発現を検出する工程は、膵臓の非β細胞、例えばα細胞、δ細胞、PP細胞、ε細胞、消化管に付随する神経内分泌細胞、例えば肝臓由来の細胞および腸由来の細胞、または皮膚由来の細胞のような末梢細胞に応用される。
上記の本発明の実施形態によれば、生体試料には、組織生検試料、皮膚掻爬、または口腔スワブが包含される。
さらに別の実施形態によれば、治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを投与することを含む治療に対する、糖尿病に罹患した被験体の感受性を予測する方法は、前記生体試料中の、前記転写因子を発現する非β細胞の割合を決定することをさらに含み、ここで前記転写因子を発現する非β細胞、例えば膵α細胞の割合が1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%または20%であるか、またはそれよりも高い場合、治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを投与することを含む治療に対する、前記被験体の感受性が示される。
本発明に従ったスクリーニング方法
本発明のさらに別の態様によれば、インスリンのシグナル伝達経路の阻害能を有する化合物のスクリーニング方法が提供され、この方法は、
a)β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞、特にα細胞を、試験化合物に曝露する工程、
b)試験化合物の存在下および非存在下において、インスリン産生細胞である前記細胞の数を決定する工程、
c)工程b)で決定したインスリン産生細胞の数である2つの値を比較する工程であって、
試験化合物の存在下でのインスリン産生細胞の数が、試験化合物の非存在下で決定した数に比較して多い場合、この試験化合物はインスリンのシグナル伝達経路を阻害可能であることが示される工程
を含む。
免疫蛍光染色法のような公知のいずれかの方法が、インスリン産生細胞の数を決定するために用いられてよい。
本発明の薬剤および組成物
一態様によれば、本発明は、糖尿病の予防および/または治療に用いられる、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを提供する。
別の態様によれば、本発明は、糖尿病の予防および/または治療に用いられる、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストおよびPdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3、およびNeuroD1のような、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞、特に膵α細胞を含む組成物を提供する。
上記2つの態様の特定の実施形態によれば、前記アンタゴニストは、S961、S661、またはそれらの誘導体、および2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体のようなインスリン受容体アンタゴニスト、ならびにホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)阻害剤、例えばワートマニンまたはPX−866およびSF1126のようなワートマニンの誘導体、GDC−0941、XL−147、XL−765、D−87503、D−106669、GSK−615、CAL−101、NVP−BEZ235、LY294002、ブパリシブ(BKM−120とも称される)、GDC−0032、BAY80−6946、IPI−145、BYL−719、BGT−226、PF−04691502、GDC−0980、GSK−2126458、およびPF−05212384、ならびにインスリン受容体に結合したインスリンによって開始される、インスリンの細胞内シグナル伝達経路のアンタゴニストからなる群より選択される。
S961は配列番号18で示されるアミノ酸配列のペプチドである(2つのシステインがジスルフィド結合によって連結され、前記ペプチドはC末端にカルボン酸基を有する)。
S661は配列番号17で示されるアミノ酸配列のペプチドである(2つのシステインがジスルフィド結合によって連結され、前記ペプチドはC末端にアミド基を有する)。
ペプチドアンタゴニストであるS661およびS961は、Schafferらによって記載される(2008,Biochem Biophys Res Commun 376:380−383)Fmoc法を用いたマイクロ波による固相ペプチド合成によって、および大腸菌内での生合成によって、それぞれ合成される。
以下の式で表されるワートマニンは、真菌ペニシリウムフニクロスムのステロイド代謝産物であり、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)に特異的な共有結合性の阻害剤である。

ワートマニンの誘導体としては、国際公開第2011/153495号に記載される類似体、特に式IAまたはIBで表される類似体が挙げられる。
(式中、
−−は任意の結合を表し、
nは1〜6を表し、
Yはヘテロ原子を表し、
およびRはそれぞれ独立して、不飽和アルキル、非直鎖アルキル、環状アルキル、および置換アルキルから選択されるか、またはRおよびRは共に原子へ結合してヘテロシクロアルキル基を形成し、
は存在しないか、H、またはC1−C6置換もしくは非置換アルキルを表し、
は(C=O)R、(C=O)OR、(S=O)R、(SO2)R、(PO3)R、(C=O)NRを表し、
は置換または非置換C1−C6アルキルを表し、かつ
は置換または非置換C1−C6アルキルを表す。)
ワートマニンの誘導体としては、式IIAまたはIIBで表される化合物がまた挙げられる。
(式中、Yはヘテロ原子を表し、RおよびRはそれぞれ独立して、不飽和アルキル、非直鎖アルキル、環状アルキル、および置換アルキルから選択されるか、またはRおよびRはYと共に複素環を形成する。)
ワートマニンの誘導体としては、以下の式で表されるPX−866もまた挙げられる。

本発明によれば、前記非β細胞は、前記インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストの使用よりも前に、これと同時に、またはこれと連続的に使用することができる。
本発明に従って使用するための非β細胞は、α細胞、δ細胞、PP細胞、ε細胞、消化管に付随する神経内分泌細胞、例えば肝臓由来の細胞および腸由来の細胞、ならびに皮膚由来の細胞のような末梢細胞を包含する、様々な膵臓の非β細胞であってよい。
さらなる実施形態によれば、本発明は、糖尿病に罹患した被験体、好ましくは哺乳類の被験体、最も好ましくはヒト被験体を治療するための医薬組成物および方法を提供し、前記医薬組成物は、本明細書に記載する本発明の薬剤、および任意に、本明細書に記載する非β細胞を含む。
特に前記医薬組成物は、本明細書に記載する本発明の薬剤および本明細書に記載する非β細胞を含む。
本発明の薬剤は、小分子(例えば抗生物質)、ペプチド、ペプチド模倣薬、キメラタンパク質、天然または非天然タンパク質、核酸由来のポリマー(例えばDNAおよびRNAアプタマー、siNA、siRNA、shRNA、PNA、またはLNA)、融合タンパク質(例えば、インスリン受容体に対するアンタゴニスト活性を有する融合タンパク質)、抗体アンタゴニスト(例えば抗インスリン受容体中和抗体)を包含する。
本発明はまた、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストと、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞とを含む医薬組成物も提供する。
本発明の医薬組成物または製剤は、いずれかの形である本発明の薬剤と、本明細書に記載する非β細胞とを含み得る医薬製剤として投与されてもよい。
本発明の組成物と、従来から用いられているアジュバント、担体、希釈剤または賦形剤とは、医薬組成物の剤形およびその単位剤形に共に含まれてよく、このような剤形は、経口で使用するための、錠剤もしくは充てんしたカプセルのような固体、または溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤、もしくはこれらを充てんしたカプセルとして、または注射もしくは持続点滴によって非経口(皮下および皮内を含む)使用するための無菌注射用溶液として用いられてよい。注射用組成物は、典型的には、注射用の無菌生理食塩水もしくはリン酸緩衝食塩水、または当該技術分野において公知であるその他の注射用担体を基にしたものである。このような医薬組成物およびその単位剤形は、成分を、さらなる有効化合物もしくは成分と共に、またはそれらなしで、従来の割合によって含んでよく、このような単位剤形は、使用が意図された一日の投与量の範囲に釣り合った、いずれかの適切な有効量の有効成分を含んでよい。
適切なアジュバントの例としては、MPL(登録商標)(Corixa)、アルミニウム化合物のような、アルミニウムを基にした鉱物(一般にミョウバンと称される)、ASO1−4、MF59、リン酸カルシウム、リポソーム、Iscom、その安定化型であるポリICLC(Hiltonol)を含むポリイノシン・ポリシチジン酸(polyIC)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、リポ多糖(LPS)、モンタニド、PLG、フラジェリン、QS21、RC529、IC31、イミキモド、レシキモド、ISSおよび線維芽細胞刺激リポペプチド(FSL1)が挙げられる。
本発明の組成物は液体製剤であってよく、限定はされないが、水性または油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。該組成物は、使用前に水またはその他の適切なビヒクルを用いて再構成される、乾燥製剤として処方されてもよい。このような液体製剤は添加物を含んでもよく、添加物としては、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクルおよび保存料が挙げられるが、これらに限定されない。懸濁剤としては、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルおよび水素化食用油脂が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤としては、レシチン、ソルビタンモノオレエートおよびアカシアが挙げられるが、これらに限定されない。保存料としては、メチルまたはプロピルp−ヒドロキシ安息香酸およびソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。分散剤または湿潤剤としては、ポリ(エチレングリコール)、グリセロール、ウシ血清アルブミン、Tween(登録商標)、Span(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、埋め込みまたは筋肉内注射によって投与され得るデポ製剤として処方されてもよい。
本発明の固体組成物は、従来の方法によって、錠剤または舐剤の形に処方されてよい。例えば、経口投与のための錠剤およびカプセルは従来の賦形剤を含んでよく、賦形剤としては、結合剤、注入剤、潤滑剤、崩壊剤および湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されない。結合剤としては、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプンの粘液成分およびポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。注入剤としては、ラクトース、糖、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウムおよびソルビトールが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールおよびシリカが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。湿潤剤としてはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるが、これに限定されない。錠剤は、当該技術分野において公知の方法に従ってコートされてもよい。
本発明の化合物は、持続放出製剤として、または持続放出薬物送達系から投与することもできる。
特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、皮下、筋肉内または腹腔内注射用であるか、または経口摂取用である。
別の特定の態様によれば、本発明の組成物は、反復投与による送達に適応させることができる。
さらなる材料および処方工程の技術などについては、参照によって本明細書に取り込まれる、Remington’s“The Science and Practice of Pharmacy”,22nd Edition,2012,University of the Sciences in Philadelphia,Lippincott Williams & Wilkinsの第5部に記載されている。
単回または複数回用量として個体に投与される投与量は、薬物動態特性、被験体の状態および特性(性、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用している治療、治療の頻度ならびに所望の効果のような、様々な因子に依存して変動する。
投与方法
本発明の組成物は、静脈内注射、動脈内、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内、包膜内、経口経路、皮膚への塗布、外科手術中の直接の組織灌流、またはそれらの組み合わせを含む、いずれかの方法によって投与されてよい。
本発明の組成物は、組成物の徐放を可能にする植込錠の形、および速度を遅く調節した静脈内点滴によって投与されてもよい。
本発明の組成物の送達方法としては、抗糖尿病薬を送達するための、経口、筋肉内および皮下のような公知の送達方法が挙げられる。
併用
本発明によれば、本発明の薬剤および組成物、ならびにそれらの医薬製剤は、単独で投与してよいか、またはインスリン、ビグアナイド、スルホニル尿素、アルファグルコシダーゼ阻害剤、食事によるグルコース制御因子、チアゾリジンジオン(グリタゾン)、インクレチン模倣薬、DPP−4阻害剤(グリプチン)のような糖尿病の治療に有用な共薬剤と併用して、または本明細書に記載される膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞と併用して投与してもよい。
本発明は、本発明の薬剤または組成物およびその医薬製剤の投与を包含し、前記薬剤または組成物は、治療上有効な量の、その他の療法、糖尿病の治療に有用な共薬剤、または膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞よりも前に、これらと同時に、またはこれらと連続的に、個体へ投与される。
前記共薬剤または前記非β細胞と同時に投与される、本発明の薬剤もしくは組成物またはその医薬製剤は、同じかまたは単数もしくは複数の異なった組成物中で、同じかまたは単数もしくは複数の異なった投与経路によって投与することができる。
一実施形態によれば、本発明の薬剤または組成物を、少なくとも1の糖尿病の治療に有用な共薬剤および少なくとも1の薬剤的に許容される担体と組み合わせて含む医薬製剤が提供される。
被験体
一実施形態によれば、本発明の被験体は糖尿病に罹患した被験体である。
特定の実施形態によれば、本発明の被験体は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、新生児糖尿病、または若年発症成人型糖尿病(MODY)に罹患した被験体である。
特定の実施形態によれば、本発明の被験体は、その膵細胞が、β細胞に特徴的な転写因子、特にPdx−1を発現するα細胞由来の細胞を、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%または少なくとも20%含む被験体である。
別の特定の実施形態によれば、本発明の被験体は、その膵β細胞が、糖尿病に罹患していない被験体に比較して60%を超えて減少している被験体である。
本明細書に引用する参照文献は、その全体が参照によって取り込まれる。本発明の範囲は、本明細書に記載する特定の実施形態によって限定されるものではなく、これらの実施形態は、本発明の個々の態様についての単一の例証を意図したものであり、機能的に等価な方法および構成要素も本発明の範囲内である。実際に、本発明の様々な改変が、本明細書に記載したものに加えて、前述の記載および添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。このような改変は、添付の請求項の範囲内にあることが意図されたものである。
本発明について記載してきたが、以下の実施例の目的は例示のみであって、本発明を限定するものではない。
次の略語はそれぞれ以下のように定義される:DT(ジフテリア毒素)、DOX(ドキシサイクリン)、h(時間)、μl(マイクロリットル)、μM(マイクロモル濃度)、mM(ミリモル濃度)、mg(ミリグラム)、PPP(ピクロポドフィリン)。
材料および方法
マウス
すべてのトランスジェニックマウスについては以前に記載されている(Thorel et al,2010,Nature 464(7292):1149−54;Yang et al,2011,Genes Dev.15;25(16):1680−5;Kawamori et al,2009,Cell Metab.9(4):350−61)。
ジフテリア毒素(DT)、ドキシサイクリン(DOX)、S961、ピクロポドフィリン(PPP)、ワートマニンおよびインスリンによる治療
以前に記載されたように(Thorel et al.,2010、上記)、DT(Sigma)は腹腔内(i.p.)注射によって投与した。DOX(1mg/ml;Sigma)は飲用水に添加した。S961(Novo−Nordisk)(Vikram and Jena,2010,Biochem Biophys Res Commun.398(2):260−5)は、200nmol/kg体重を、1日2回、4日間連続して静脈内(i.v.)注射した。PPP(Santa−Cruz)およびワートマニン(Sigma)は、それぞれ10mg/kg体重および1mg/kg体重を、1日1回、5日間連続してi.p.注射した。マウスは、血糖値が25mMを超えた場合に、皮下インスリンペレット(Linbit)を1週間ごとに投与された。
生理学的試験
膵臓のグルカゴンおよびインスリンの量の測定(免疫測定法)、リアルタイムPCRによる遺伝子発現分析、ならびに組織学的および形態学的分析は、これまでの記載に従って行った(Herrera et al,1991,Development.113(4):1257−65;Strom et al,2007,Development.134(15):2719−25)。
免疫蛍光法
クリオスタット切片の厚さは10μmとした。使用した抗体は、ウサギおよびモルモット抗Pdx1(C.Wrightより供与。それぞれ1/5000および1/750)、モルモット抗ブタインスリン(DAKO、1/400)、マウス抗ブタグルカゴン(1/1000)、マウス抗ソマトスタチン(BCBC Ab1985、1/200)、ウサギ抗GFP(Molecular Probes、1/400)、ウサギ抗Cペプチド1(BCBC Ab1044、1/500)、ウサギ抗Cペプチド2(BCBC Ab1042、1/500)であった。二次抗体には、Alexa 405、488、647(Molecular Probes)、Cy3、Cy5(Jackson Immunoresearch)、またはTRITC(Southern Biotech)のいずれかが結合していた。切片は、Leica TCS SPE共焦点顕微鏡を用いて観察した。
ヒト細胞画分の分離
ヒト膵島は、ジュネーブ大学細胞分離および移植センター(Cell Isolation And Transplantation Center,University of Geneva)から入手した。わずかに改変した、以前に記載された方法(Dorrell et al.2008,Stem cell research,1,183−194)に従い、島をアキュターゼ(Invitrogen)中で37℃にて12分間インキュベートすることで単一細胞の懸濁液を調製した後、α細胞表面抗体(HPa1またはHPa2)と、それに続く二次抗体によって染色した。膵α細胞の豊富な画分を得るため、FACSAria2(BD Biosciences)またはMoflo Astrios(Beckman Coulter)システムを用いてHPa1/2陽性細胞を選別した。前方散乱、側方散乱およびパルス幅パラメータ、ならびにDAPIまたはPIを用いたネガティブ染色によって単一の島細胞にゲートをかけた。HPa1/2+のゲートは、HPa1またはHPa2抗体なしで染色した試料のプロファイルに基づいて確立した。選別した細胞は、サイトスピン(Thermo Scientific)またはBoscoら(Diabetes 2010,59,1202−1210)によって記載されるカニンガムチャンバーを用いて、染色および分析を行った。
実施例1:β細胞の除去およびPdx1活性によって誘導される、大量のα細胞のインスリン産生細胞への変換
すべてのα細胞へPdx1の発現を促進することで、それらの再プログラミングが促進されるか否かを決定するため、ドキシサイクリン(DOX)の投与によって、α細胞の誘導性と非可逆性の確認およびα細胞におけるPdx1の外来性発現が同時に可能となる、αPdx1OEと名付けられた5倍トランスジェニックマウスを作製した(図1A)。αPdx1OEマウスは、グルカゴン‐rtTA(α細胞特異的なリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子発現システム)、TetO‐cre(DOX活性化rtTA依存性cre発現因子)、CAGSTOPfloxed‐Pdx1(creを介したPdx1発現因子)、rosa26‐STOPfloxed‐YFP(creを介したYFPレポーター)、RIP‐DTR(DTを介したβ細胞キラー)導入遺伝子を有していた。対照マウスはCAG‐STOPfloxed‐Pdx1導入遺伝子を有していないため、α細胞の確認のみが可能であり、α細胞において外来性のPdx1は過剰発現されない(図1A)。Pdx1が、α細胞のインスリン産生細胞への再プログラミングを促進するか否かについて判定するため、2か月齢のマウスをDOXによって2週間処置し(パルス)、DOXの終了後3か月目に安楽死させた(チェイス)(図2A)。健常な成体マウスでは、α細胞にPdx1を持続的に発現させると、i)グルカゴン産生の阻害(図2B〜C)およびii)成熟α細胞の非常に小さな画分(<3%)におけるわずかなインスリン産生(図2C)がもたらされた。これらの結果は、ほとんどの成熟α細胞が、通常のβ細胞集団の条件において外来性のPdx1を発現させても、インスリンの産生に抵抗性であることを示している。
次に、β細胞集団を減少させることによって、外来性にPdx1を発現させたα細胞がインスリンを産生することが可能な条件が表されるか否かについて試験した。以前に報告されたように(Thorel et al.,2010、上記)、マウスにジフテリア毒素を注射してβ細胞をほとんど完全に除去し(DT、その後)、DOXを2週間投与して、両方のマウス群にYFPによる非可逆的なα細胞の標識を誘導した後、αPdx1OEのみにPdx1を外来性に発現させた(図1B)。すべてのマウスは、DT投与の直後に明らかな高血糖となり、血糖値が25mMを超えた場合には、糖尿病マウスを生存させるためにインスリンペレットを1週間に1回投与した。興味深いことに、αPdx1OEマウスは、DT後に対照マウスと比較して血糖値が低い傾向を示し(図3A〜B)、分析期間中に必要とされたインスリンペレットは著しく少なかった(DT後3.5か月、図3C)。加えて、β細胞集団の存在に変化がない場合、膵臓のインスリン量に変化はみられなかったが、DTを介したβ細胞除去後のαPdx1OEマウスではインスリン量が迅速に回復した(図3D)。明らかに、インスリン量とインスリンペレットの必要性の間には直接の負の相関が観察されたことから、膵臓のインスリン量が多いマウスでは、血糖値を25mM未満に維持するために必要とされる外来性のインスリンは少ないことが示唆される。
結局のところこれらの結果は、αPdx1OEマウスの膵臓が、大量のβ細胞除去後に、対照と比較してさらに多くのインスリンを産生および分泌することを示唆している。組織的なレベルでは、DT後の大多数の島はインスリン産生細胞を失っており、対照ではほとんどの島がグルカゴンを発現するYFP標識α細胞から構成されている。一方で、DT後のαPdx1OEマウスでは、α細胞を含む島はすべてインスリン+細胞を含んでいたことから(図1C)、対照に比較してインスリン+細胞の数が有意に増加していた(図1D)。β細胞の除去後、外来性のPdx1の発現によって、ほとんどのYFP+α細胞ではインスリンの産生(図3D)とグルカゴンの阻害(図4)とが迅速に誘導された。Pdx1を発現する成熟α細胞は、DT後に両方のインスリン遺伝子を発現したが、ソマトスタチンは発現しなかった(未提示)。DT後に、対照の島で観察された25%の非常に少ないインスリン+細胞は、YFP陽性、すなわち再プログラミングされたα細胞であった。一方で、αPdx1OEマウスの成熟α細胞に由来する細胞は、ほとんとすべてがインスリン産生細胞(96%)であった(図1E)。DTによる処置を行っていない対照マウスでは、インスリンを産生する成熟α細胞は存在しなかったが、成熟α細胞の小さな画分(2〜3%)のみが、i)対照マウスにおける大量のβ細胞除去後、またはii)通常のβ細胞集団に外来性のPdx1を発現させた場合のいずれかにおいて、インスリンを産生するように再プログラミングされた(図1F)。一方で、αPdx1OEにおいてcreを介した組換え(YFP+)が行われた成熟α細胞の約70%が、外来性のPdx1発現と極度のβ細胞の除去との相乗作用によってインスリンを産生した(図1F)。
DTを介したβ細胞の除去前に外来性のPdx1を発現させた場合でも、インスリンの産生は効果的に誘発された(未提示)。重要なことは、外来性のインスリンによって少なくとも数週間治療された糖尿病マウスに外来性のPdx1を発現させると、α細胞におけるインスリンの産生が誘導可能だということである。後者の結果、および島中のインスリンおよびグルコースの循環濃度とは関係なく、成熟α細胞がインスリンを産生するように自立的に再プログラミングされる能力に一致して、外来性のPdx1発現は、DT非感受性(RIP‐DTR陰性)SCIDマウスの腎被膜下に移植された、β細胞を除去した島由来のα細胞に、効率的なインスリン産生を誘導した(未提示)。まとめると、これらの知見によって、ほとんどすべてのβ細胞の除去(>99%)および外来性のPdx1発現後に、大多数のα細胞は、インスリンの産生を再プログラミング可能であることが示唆されるが、これは細胞の可塑性に関連した不均一なα細胞集団について意義を唱えるものである。
並行して行った実験により、成熟α細胞におけるNkx6.1の誘導は、Pdx1とは異なってグルカゴンの発現を遮断しないことが示された。しかしながらβ細胞の除去後に、Nkx6.1OEα細胞において、Nkx6.1の活性は、インスリン産生とPdx1の誘導と同時にグルカゴンの遮断ももたらした(未提示)。
同時に、これらの観察によって、β細胞を除去した島におけるPdx1またはNkx6.1の活性化によって示されるように、適切な条件下では、すべてのα細胞がインスリンを産生するように再プログラミングされる可塑性を有することが示唆される。
実施例2:β細胞の部分的な除去は、成熟α細胞においてPdx1を介したインスリン産生を開始させるために十分である
部分的/準最適なβ細胞の除去後、Pdx1が成熟α細胞のインスリン産生も開始させられるか否かを決定するため、対照およびαPdx1OEマウスに高用量(200mg/kg体重)のストレプトゾトシン(STZ)を単回注射して、80〜90%のβ細胞を除去した。Pdx1OEマウスへのSTZ注射後、高血糖状態になったマウスを、DOXによって2週間処置して、α細胞の標識とPdx1の発現とを誘導した(図5A)。STZ注射後1か月目に、両マウス群の島にはインスリン産生β細胞の著しい画分がなお観察されたことから、β細胞の除去は必ずしもSTZを介したβ細胞除去によるものではないことが確認された。STZによって処置した対照マウスでは、ほとんどすべてのYFP標識α細胞がインスリン陰性であった。一方で、αPdx1OEの島において外来性にPdx1を発現するほとんどのα細胞(>80%)が、STZ処置後にインスリンを産生した(図5C)。このことは、STZを介したβ細胞の除去もまた、完全でないにもかかわらず、α細胞のインスリン産生を刺激する/その傾向を与えることを示唆している。
次に、β細胞集団が約50%減少した際、外来性のPdx1の発現が、α細胞にインスリンの産生を開始させるか否かについて試験した。ヘテロ接合性RIP‐DTRの雌では、X連鎖性のランダムな不活化が、β細胞集団の半分にDTR発現を限定させることから、DT投与後に50%のβ細胞の除去が可能となる(図5B)。したがって、ヘテロ接合性RIP‐DTR対照とαPdx1OEの雌とをDTによって処置した後、DOXによって2週間処置した。注目すべきことに、ヘテロ接合性RIP‐DTRの雌の血糖値はDT後でも正常であったため、50%のβ細胞集団は、血中グルコースの恒常性を確実にするために十分であったことが示唆される。DT後1か月目に、β細胞集団を50%保持する対照の島において、グルカゴンを発現するYFP+α細胞はインスリン陰性であった。驚くべきことに、50%のβ細胞を除去した後の、血糖値が正常なαPdx1OEの雌の島において、YFP+α細胞の約8%がインスリン産生細胞であった(図5D)。しかしながら、外来性のPdx1の発現によるα細胞のインスリン産生細胞への変換は、インスリンの需要が増大した状態である妊娠中には観察されなかった(データ未提示)。
結論として、これらの観察はすべて、成熟α細胞のインスリン産生細胞への変換が少なくとも2つの現象を必要とすることを示している。すなわちDTもしくはSTZを介した局所的なβ細胞の完全または部分的な除去が、成熟α細胞をインスリン産生細胞とするためには必須であると考えられる。この「プライミング工程」によって、すべてのα細胞がインスリンを発現するように準備される。すべての「プライムされた」α細胞は、外来性のPdx1の転写活性によって、インスリンを産生するようになる(「開始工程」)。
重要なことに、STZを介したβ細胞の除去後、α細胞にインスリンの発現を開始させるpdx1の能力は、i)DT後のα細胞のプライミングはバイアスではなく、またRIP‐DTRマウスモデルに限定されたものでもないこと、およびii)インスリンの産生は、DT後のアポトーシスまたはSTZ後の壊死のいずれかによるβ細胞死の機構にかかわらず、効果的に誘導可能であること、を強く示唆するものである。
実施例3:島内のインスリンの欠乏によって、インスリン産生に対するα細胞のプライミングが開始される
これらの結果をまとめると、β細胞を除去することで、α細胞はインスリンを産生するように必ずプライムされると考えられる。しかしながら、α細胞のプライミングが物理的なβ細胞の除去によるものであるか、またはβ細胞により分泌される局所的な単数または複数の因子の欠乏によるものであるか、またはその両方であるかについては明らかでない。
次に、β細胞の大量除去を含む局所的な島内のインスリン欠乏が(全身性のインスリン濃度ではなく)、Pdx1を発現するα細胞にインスリンの産生を開始させるプライミングシグナルとなり得るか否かについて試験した。α細胞の変換は健常な正常血糖値のマウスでも起こることから、全身性のインスリンは観察されるα細胞の可塑性を引き起こすものではない。ほとんどすべてのβ細胞を除去した後の遺伝子発現の分析によって、β細胞を除去した島における、インスリン‐シグナル伝達カスケードの鍵となる遺伝子が迅速に減少することが明らかとなった。実際に、DT後7日目の島抽出物ならびにFACSによって選別したα細胞における、インスリンのmRNAレベル、およびインスリン経路のさらに下流にある要素、例えばIRS1、PI3K、AktおよびPKAは、有意に減少していた(図6)。一方で、Aktによって負の制御を受けるFoxO1は、DT後に分離した島およびα細胞の両方において増加していた。これらの結果により、β細胞の除去後に、α細胞におけるインスリンのシグナル伝達は鈍くなることが示される(図6、表)。
β細胞を除去しない状態でインスリンを欠乏させた場合に、α細胞のインスリン産生がプライムされるか否かを調べるため、α細胞がPdx1を発現している(αPdx1OE)成体マウスを、インスリン受容体アンタゴニストであるS961(Novo Nordisk)によって処置し、末梢組織および膵島におけるインスリンのシグナル伝達を鈍らせた(図7A)。
S961をin vivo投与した際の末梢作用によって高血糖が誘導された(未提示)。正常なβ細胞集団を有する健常成体マウスを5日間処置することによって、Pdx1を発現するα細胞の18%にインスリンの産生が誘導された(図7B)。IGF‐1Rアンタゴニストであるピクロポドフィリン(PPP)ではなく、PI3キナーゼ阻害剤であるワートマニンのin vivo投与によっても、Pdx1を発現するα細胞のインスリン産生が同様の効率で引き起こされた(図7B)。次に、成熟α細胞のインスリン受容体を条件的に不活化することで、インスリンシグナル伝達を絶対的にα細胞のレベルで局所的に阻害することによって、これらの細胞がインスリンを産生するようにプライムされるか否かについて評価した。1か月齢のマウスへのDOXの投与によって、インスリン受容体の不活化、YFPα細胞の確認および外来性のPdx1発現が誘導された。
結論としてまとめると、上記の観察によれば、所定の島に存在するβ細胞からのインスリンの局所的な恒常的放出によって、α細胞がインスリンを産生するようにプライミングされること、すなわちα細胞の変換が阻止されることから、インスリンはα細胞の可塑性に対する傍分泌の抑制因子として作用するというモデルが支持される。
実施例4:α細胞におけるインスリン/IGF1シグナル伝達の欠如によって、これらの細胞はインスリンを発現するようになる
β細胞集団がなお存在する状態で、α細胞特異的なインスリン/IGF1の欠乏が、インスリンを産生するようにα細胞をプライムするか否かについて決定するため、「α−dKO」および「α−dKO‐Pdx1OE」と命名されたトランスジェニックマウスを作製し、Pdx1を発現するかまたは発現しない成熟α細胞においてインスリンおよびIGF1受容体(IRおよびIGF1R)を同時に不活化させた(図8A)。1か月齢のマウスに3週間DOXを投与して、α細胞特異的なIR/IGF1Rの不活化、Pdx1の発現およびYFPによる標識を誘導した(図8B)。
2週間後、αdKOマウスのα細胞はグルカゴン+/インスリン−であったが、未変化のβ細胞集団も有するαdKO‐Pdx1OE動物の、Pdx1を発現するα細胞の3分の1は、グルカゴン−/インスリン+であった。
これらの結果から、α細胞におけるインスリン/IGF1シグナル伝達の欠如が、α細胞にインスリンを発現させることが示される。
実施例5:ヒトα細胞は、インスリンを産生するように再プログラミング可能である
ヒトα細胞が、インスリンの産生を可能にする可塑性を示すか否かについても、さらに決定を行った。ヒト1型糖尿病および2型糖尿病患者由来の島について検討を行うと、βおよびα細胞に特徴的な分泌顆粒を同時に含む細胞が観察された。糖尿病患者に二ホルモン性(bi−hormonal)細胞が多くみられることは、β細胞の欠如およびインスリン抵抗性が、α細胞にインスリン遺伝子を発現させる条件であるという考えを支持するものである。
このように、ヒトαおよび非α細胞画分は、糖尿病ではないドナーからフローサイトメトリーによって選別した。Zhou et al,2008(Nature 455:627−632)に記載されるように、2つの細胞群は、YFPまたはYFPおよびPdx1をコードするアデノウイルスベクターのいずれかによって別々に形質導入した。島および島細胞は、in vitroで維持する際に不安定となるため、形質導入した細胞は、Shultz et al,2007(Nature reviews.Immunology 7,118−130)に記載されるようにNSGマウスの虹彩に移植した。宿主マウスは、免疫蛍光分析のため3週間後に安楽死させた(図9A)。インスリンおよびグルカゴンを共に発現している細胞は、非α細胞分画(図9B)、またはPdx1の非存在下で系列を確認したα細胞(図9C)には観察されなかった。一方で、α細胞にPdx1の発現が誘導された場合、二ホルモン性(bihormonal)の再プログラミングされたα細胞の数が有意に増加した(図9C)。
これらの結果により、マウスα細胞と同様に、糖尿病ではないドナー由来のヒトα細胞は、高血糖状態とは関係なく、膵臓外の位置で、血糖値が正常であるマウスのin vivoで再プログラミングされてインスリンを産生することが明らかになった。
実施例6:糖尿病マウスにおけるヒトα細胞の移植
ヒト島または精製された島細胞は、糖尿病(DTまたはSTZによる)もしくはインスリン抵抗性(インスリン受容体アンタゴニストであるS961による処置)とされたNSG−RIP−DTRマウスへ、または肥満のNSG−db/dbマウスへ移入される。β細胞を含まないヒト島を模倣するため、β細胞を除去した(島細胞の分離後、FACSによる選別およびβ細胞画分を含まない再集合/被包を行った)ヒト島も移植される。
ヒト島試料は、NSG宿主の腎被膜下または眼の前房に移植する(利用可能な島または島の再集合細胞の量に依存して)。
特にβ細胞を含まないヒト島を模倣するために、再集合させた島をβ細胞を含まないようにして再構築した後、アルギン酸塩内に被包し、NSG宿主の腹腔内に移入した。移植前に、変換を促進するため、GFP(分析時の細胞系列の確認のため)およびPdx1、Nkx6.1またはその他の再プログラミング因子を発現するアデノウイルスまたはレンチウイルスベクターによってヒトα細胞に形質導入を行った。
移植したマウスには、TNFα(炎症性のストレスをかけるため)、エピジェネティック修飾因子(クロマチンの変化を通して細胞の可塑性を促進するため)、またはαもしくはδ細胞への変換を促進するシグナル伝達経路の有効な修飾因子のような、様々な化合物をさらに投与した。
マウスは、代謝パラメータを用いてモニターした。すなわち適当な時期に高血糖の経過観察、耐糖能試験(GTT)およびヒト循環Cペプチドを測定して、高血糖からの回復およびグルコースの刺激によるヒトインスリン分泌を評価した。
マウスは、移植後1または3か月目に分析のため安楽死させ、抗グルカゴン、抗ソマトスタチンおよび抗GFP(ヒト細胞の確認)抗体による染色と組み合わせた、特異的な抗インスリン抗体を用いた免疫蛍光法によって、可能性のある島細胞の可塑性現象の中でも、αおよびδ細胞の再プログラミングについて決定した。機能的なβ細胞の成熟度マーカー(MafA、Nkx6.1、Ucn3、Glut2など)に対する特異的抗体を用いて、インスリン産生細胞をさらに特徴付けた。
アルギン酸塩を用いて被包した島/島細胞の回収によって、それらのRNA分析(qPCR)および/または単一細胞遺伝子のプロファイリング(fluidigm technology)が可能になる。エピジェネティック試験(DNAのメチル化)は、抽出したゲノムDNAの量が十分であったときに行った。
要約すると、これらの実験データによって、α細胞がインスリンを適切に感知できない場合に、α細胞はインスリンを産生するようになることを示している。末梢組織(脂肪、肝臓、筋肉)について主に記載されているが、インスリン抵抗性は、βまたはα細胞の機能障害に伴った病的状態において、島内にも発生する。インスリンの欠乏および抵抗性は、1型および2型糖尿病の両方に特徴的であることから、糖尿病患者のα細胞は、インスリンを産生するようにプライムされ得る。ヒトα細胞を特徴付ける二価の活性化/抑制クロマチンは、糖尿病の状態でさらに現れる、高い可塑性の可能性を示すこれらのα細胞に適合するものである。このような予測できない細胞変換の促進は、α細胞の再プログラミングによって新規なインスリン分泌細胞を作り出すことを目的とした治療戦略において開発され得る。特に、2型糖尿病患者におけるインスリンアンタゴニスト活性の、直観に反した一過性の誘導は、α細胞の変換を促進することによって、β細胞集団を補充することに役立つであろう。グルカゴン発現の消滅を包含する、α細胞からβ細胞への変換もまた、α細胞の欠乏による欠陥なしに、グルカゴン分泌による肝グルコースの動員を制限することで糖尿病に有益となる。
配列表
配列番号1 マウスPdx−1タンパク質配列
MNSEEQYYAA TQLYKDPCAF QRGPVPEFSA NPPACLYMGR QPPPPPPPQF TSSLGSLEQG
SPPDISPYEV PPLASDDPAG AHLHHHLPAQ LGLAHPPPGP FPNGTEPGGL EEPNRVQLPF
PWMKSTKAHA WKGQWAGGAY TAEPEENKRT RTAYTRAQLL ELEKEFLFNK YISRPRRVEL
AVMLNLTERH IKIWFQNRRM KWKKEEDKKR SSGTPSGGGG GEEPEQDCAV TSGEELLAVP
PLPPPGGAVP PGVPAAVREG LLPSGLSVSP QPSSIAPLRP QEPR

配列番号2 ヒトPdx−1タンパク質配列
MNGEEQYYAA TQLYKDPCAF QRGPAPEFSA SPPACLYMGR QPPPPPPHPF PGALGALEQG
SPPDISPYEV PPLADDPAVA HLHHHLPAQL ALPHPPAGPF PEGAEPGVLE EPNRVQLPFP
WMKSTKAHAW KGQWAGGAYA AEPEENKRTR TAYTRAQLLE LEKEFLFNKY ISRPRRVELA
VMLNLTERHI KIWFQNRRMK WKKEEDKKRG GGTAVGGGGV AEPEQDCAVT SGEELLALPP
PPPPGGAVPP AAPVAAREGR LPPGLSASPQ PSSVAPRRPQ EPR

配列番号3 マウスNkx6.1タンパク質配列
MLAVGAMEGP RQSAFLLSSP PLAALHSMAE MKTPLYPAAY PPLPTGPPSS SSSSSSSSSP
SPPLGSHNPG GLKPPAAGGL SSLGSPPQQL SAATPHGIND ILSRPSMPVA SGAALPSASP
SGSSSSSSSS ASATSASAAA AAAAAAAAAA ASSPAGLLAG LPRFSSLSPP PPPPGLYFSP
SAAAVAAVGR YPKPLAELPG RTPIFWPGVM QSPPWRDARL ACTPHQGSIL LDKDGKRKHT
RPTFSGQQIF ALEKTFEQTK YLAGPERARL AYSLGMTESQ VKVWFQNRRT KWRKKHAAEM
ATAKKKQDSE TERLKGTSEN EEDDDDYNKP LDPNSDDEKI TQLLKKHKSS GGSLLLHASE
AEGSS

配列番号4 ヒトNkx6.1タンパク質配列
MLAVGAMEGT RQSAFLLSSP PLAALHSMAE MKTPLYPAAY PPLPAGPPSS SSSSSSSSSP
SPPLGTHNPG GLKPPATGGL SSLGSPPQQL SAATPHGIND ILSRPSMPVA SGAALPSASP
SGSSSSSSSS ASASSASAAA AAAAAAAAAA SSPAGLLAGL PRFSSLSPPP PPPGLYFSPS
AAAVAAVGRY PKPLAELPGR TPIFWPGVMQ SPPWRDARLA CTPHQGSILL DKDGKRKHTR
PTFSGQQIFA LEKTFEQTKY LAGPERARLA YSLGMTESQV KVWFQNRRTK WRKKHAAEMA
TAKKKQDSET ERLKGASENE EEDDDYNKPL DPNSDDEKIT QLLKKHKSSS GGGGGLLLHA
SEPESSS

配列番号5 マウスNkx2.2タンパク質配列
MSLTNTKTGF SVKDILDLPD TNDEDGSVAE GPEEESEGPE PAKRAGPLGQ GALDAVQSLP
LKSPFYDSSD NPYTRWLAST EGLQYSLHGL AASAPPQDSS SKSPEPSADE SPDNDKETQG
GGGDAGKKRK RRVLFSKAQT YELERRFRQQ RYLSAPEREH LASLIRLTPT QVKIWFQNHR
YKMKRARAEK GMEVTPLPSP RRVAVPVLVR DGKPCHALKA QDLAAATFQA GIPFSAYSAQ
SLQHMQYNAQ YSSASTPQYP TAHPLVQAQQ WTW

配列番号6 ヒトNkx2.2タンパク質配列
MSLTNTKTGF SVKDILDLPD TNDEEGSVAE GPEEENEGPE PAKRAGPLGQ GALDAVQSLP
LKNPFYDSSD NPYTRWLAST EGLQYSLHGL AAGAPPQDSS SKSPEPSADE SPDNDKETPG
GGGDAGKKRK RRVLFSKAQT YELERRFRQQ RYLSAPEREH LASLIRLTPT QVKIWFQNHR
YKMKRARAEK GMEVTPLPSP RRVAVPVLVR DGKPCHALKA QDLAAATFQA GIPFSAYSAQ
SLQHMQYNAQ YSSASTPQYP TAHPLVQAQQ WTW

配列番号7 マウスPax4タンパク質配列
MQQDGLSSVN QLGGLFVNGR PLPLDTRQQI VQLAIRGMRP CDISRSLKVS NGCVSKILGR
YYRTGVLEPK CIGGSKPRLA TPAVVARIAQ LKDEYPALFA WEIQHQLCTE GLCTQDKAPS
VSSINRVLRA LQEDQSLHWT QLRSPAVLAP VLPSPHSNCG APRGPHPGTS HRNRTIFSPG
QAEALEKEFQ RGQYPDSVAR GKLAAATSLP EDTVRVWFSN RRAKWRRQEK LKWEAQLPGA
SQDLTVPKNS PGIISAQQSP GSVPSAALPV LEPLSPSFCQ LCCGTAPGRC SSDTSSQAYL
QPYWDCQSLL PVASSSYVEF AWPCLTTHPV HHLIGGPGQV PSTHCSNWP

配列番号8 ヒトPax4タンパク質配列
MHQDGISSMN QLGGLFVNGR PLPLDTRQQI VRLAVSGMRP CDISRILKVS NGCVSKILGR
YYRTGVLEPK GIGGSKPRLA TPPVVARIAQ LKGECPALFA WEIQRQLCAE GLCTQDKTPS
VSSINRVLRA LQEDQGLPCT RLRSPAVLAP AVLTPHSGSE TPRGTHPGTG HRNRTIFSPS
QAEALEKEFQ RGQYPDSVAR GKLATATSLP EDTVRVWFSN RRAKWRRQEK LKWEMQLPGA
SQGLTVPRVA PGIISAQQSP GSVPTAALPA LEPLGPSCYQ LCWATAPERC LSDTPPKACL
KPCWDCGSFL LPVIAPSCVD VAWPCLDASL AHHLIGGAGK ATPTHFSHWP

配列番号9 マウスPax6タンパク質配列
MQNSHSGVNQ LGGVFVNGRP LPDSTRQKIV ELAHSGARPC DISRILQVSN GCVSKILGRY
YETGSIRPRA IGGSKPRVAT PEVVSKIAQY KRECPSIFAW EIRDRLLSEG VCTNDNIPSV
SSINRVLRNL ASEKQQMGAD GMYDKLRMLN GQTGSWGTRP GWYPGTSVPG QPTQDGCQQQ
EGGGENTNSI SSNGEDSDEA QMRLQLKRKL QRNRTSFTQE QIEALEKEFE RTHYPDVFAR
ERLAAKIDLP EARIQVWFSN RRAKWRREEK LRNQRRQASN TPSHIPISSS FSTSVYQPIP
QPTTPVSSFT SGSMLGRTDT ALTNTYSALP PMPSFTMANN LPMQPPVPSQ TSSYSCMLPT
SPSVNGRSYD TYTPPHMQTH MNSQPMGTSG TTSTGLISPG VSVPVQVPGS EPDMSQYWPR
LQ

配列番号10 ヒトPax6タンパク質配列
MQNSHSGVNQ LGGVFVNGRP LPDSTRQKIV ELAHSGARPC DISRILQVSN GCVSKILGRY
YETGSIRPRA IGGSKPRVAT PEVVSKIAQY KRECPSIFAW EIRDRLLSEG VCTNDNIPSV
SSINRVLRNL ASEKQQMGAD GMYDKLRMLN GQTGSWGTRP GWYPGTSVPG QPTQDGCQQQ
EGGGENTNSI SSNGEDSDEA QMRLQLKRKL QRNRTSFTQE QIEALEKEFE RTHYPDVFAR
ERLAAKIDLP EARIQVWFSN RRAKWRREEK LRNQRRQASN TPSHIPISSS FSTSVYQPIP
QPTTPVSSFT SGSMLGRTDT ALTNTYSALP PMPSFTMANN LPMQPPVPSQ TSSYSCMLPT
SPSVNGRSYD TYTPPHMQTH MNSQPMGTSG TTSTGLISPG VSVPVQVPGS EPDMSQYWPR
LQ

配列番号11 マウスMafAタンパク質配列
MAAELAMGAE LPSSPLAIEY VNDFDLMKFE VKKEPPEAER FCHRLPPGSL SSTPLSTPCS
SVPSSPSFCA PSPGTGGGAG GGGSAAQAGG APGPPSGGPG TVGGASGKAV LEDLYWMSGY
QHHLNPEALN LTPEDAVEAL IGSGHHGAHH GAHHPAAAAA YEAFRGQSFA GGGGADDMGA
GHHHGAHHTA HHHHSAHHHH HHHHHHGGSG HHGGGAGHGG GGAGHHVRLE ERFSDDQLVS
MSVRELNRQL RGFSKEEVIR LKQKRRTLKN RGYAQSCRFK RVQQRHILES EKCQLQSQVE
QLKLEVGRLA KERDLYKEKY EKLAGRGGPG GAGGAGFPRE PSPAQAGPGA AKGAPDFFL

配列番号12 ヒトMafAタンパク質配列
MAAELAMGAE LPSSPLAIEY VNDFDLMKFE VKKEPPEAER FCHRLPPGSL SSTPLSTPCS
SVPSSPSFCA PSPGTGGGGG AGGGGGSSQA GGAPGPPSGG PGAVGGTSGK PALEDLYWMS
GYQHHLNPEA LNLTPEDAVE ALIGSGHHGA HHGAHHPAAA AAYEAFRGPG FAGGGGADDM
GAGHHHGAHH AAHHHHAAHH HHHHHHHHGG AGHGGGAGHH VRLEERFSDD QLVSMSVREL
NRQLRGFSKE EVIRLKQKRR TLKNRGYAQS CRFKRVQQRH ILESEKCQLQ SQVEQLKLEV
GRLAKERDLY KEKYEKLAGR GGPGSAGGAG FPREPSPPQA GPGGAKGTAD FFL

配列番号13 マウスNgn3タンパク質配列
MAPHPLDALT IQVSPETQQP FPGASDHEVL SSNSTPPSPT LIPRDCSEAE VGDCRGTSRK
LRARRGGRNR PKSELALSKQ RRSRRKKAND RERNRMHNLN SALDALRGVL PTFPDDAKLT
KIETLRFAHN YIWALTQTLR IADHSFYGPE PPVPCGELGS PGGGSNGDWG SIYSPVSQAG
NLSPTASLEE FPGLQVPSSP SYLLPGALVF SDFL

配列番号14 ヒトNgn3タンパク質配列
MTPQPSGAPT VQVTRETERS FPRASEDEVT CPTSAPPSPT RTRGNCAEAE EGGCRGAPRK
LRARRGGRSR PKSELALSKQ RRSRRKKAND RERNRMHNLN SALDALRGVL PTFPDDAKLT
KIETLRFAHN YIWALTQTLR IADHSLYALE PPAPHCGELG SPGGSPGDWG SLYSPVSQAG
SLSPAASLEE RPGLLGATFS ACLSPGSLAF SDFL

配列番号15 マウスNeuroD1タンパク質配列
MTKSYSESGL MGEPQPQGPP SWTDECLSSQ DEEHEADKKE DELEAMNAEE DSLRNGGEEE
EEDEDLEEEE EEEEEEEDQK PKRRGPKKKK MTKARLERFK LRRMKANARE RNRMHGLNAA
LDNLRKVVPC YSKTQKLSKI ETLRLAKNYI WALSEILRSG KSPDLVSFVQ TLCKGLSQPT
TNLVAGCLQL NPRTFLPEQN PDMPPHLPTA SASFPVHPYS YQSPGLPSPP YGTMDSSHVF
HVKPPPHAYS AALEPFFESP LTDCTSPSFD GPLSPPLSIN GNFSFKHEPS AEFEKNYAFT
MHYPAATLAG PQSHGSIFSS GAAAPRCEIP IDNIMSFDSH SHHERVMSAQ LNAIFHD

配列番号16 ヒトNeuroD1タンパク質配列
MTKSYSESGL MGEPQPQGPP SWTDECLSSQ DEEHEADKKE DDLETMNAEE DSLRNGGEEE
DEDEDLEEEE EEEEEDDDQK PKRRGPKKKK MTKARLERFK LRRMKANARE RNRMHGLNAA
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配列番号17 インスリン受容体アンタゴニストS661アミノ酸配列
GSLDESFYDW FERQLGGGSG GSSLEEEWAQ IQCEVWGRGC PSX
Xはアミド基により置換されたC末端カルボン酸基を有するTyrであり、位置33および40の2つのCysはジスルフィド結合によって連結される。

配列番号18 インスリン受容体アンタゴニストS961アミノ酸配列
GSLDESFYDW FERQLGGGSG GSSLEEEWAQ IQCEVWGRGC PSY
位置33および40の2つのCysはジスルフィド結合によって連結される。



  1. 糖尿病の予防および/または治療に用いられる、インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニスト。

  2. 前記アンタゴニストが、S961、S661、2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体、ワートマニン、PX−866、SF1126、GDC−0941、XL−147、XL−765、D−87503、D−106669、GSK−615、CAL−101、NVP−BEZ235、LY294002、ブパリシブ(BKM−120とも称される)、GDC−0032、BAY80−6946、IPI−145、BYL−719、BGT−226、PF−04691502、GDC−0980、GSK−2126458およびPF−05212384からなる群より選択される、請求項1に記載のアンタゴニスト。

  3. 前記アンタゴニストが配列番号18のS961である、請求項1に記載のアンタゴニスト。

  4. 糖尿病の予防および/または治療に用いられる、(i)請求項1〜3のいずれか一項に記載されるアンタゴニストと、(ii)膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞とを含んでなる、組成物。

  5. 前記非β細胞が、膵α細胞、δ細胞、PP細胞、ε細胞、消化管に付随する神経内分泌細胞および末梢細胞からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。

  6. 前記転写因子がPdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3およびNeuroD1からなる群より選択される、請求項4または5に記載の組成物。

  7. 前記アンタゴニストまたは前記組成物が、請求項18〜19のいずれか一項に記載の方法によって同定された糖尿病に罹患した被験体に使用するためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンタゴニストまたは請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。

  8. インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストと、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子をコードする核酸のトランスフェクションによって改変された非β細胞とを含んでなる、医薬組成物。

  9. インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞からのインスリン産生を刺激する工程を含んでなる、非β細胞にインスリン産生を誘導する方法。

  10. インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞からのインスリン産生を刺激する工程を含んでなる、非β細胞をインスリン産生細胞に変換させる方法。

  11. 前記非β細胞が、膵α細胞、δ細胞、PP細胞、ε細胞、消化管に付随する神経内分泌細胞および末梢細胞からなる群より選択される、請求項9または10に記載の方法。

  12. インスリンのシグナル伝達経路の遮断が、ex vivoで前記非β細胞とインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストとを接触させることによって行われる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。

  13. インスリンのシグナル伝達経路の遮断が、in vivoで、糖尿病に罹患した被験体にインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを投与することによって行われる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。

  14. インスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストが、S961、S661、2つのB29リジンの間で架橋された(B29−B’29)共有結合性のインスリン二量体、ワートマニン、PX−866、SF1126、GDC−0941、XL−147、XL−765、D−87503、D−106669、GSK−615、CAL−101、NVP−BEZ235、LY294002、ブパリシブ(BKM−120とも称される)、GDC−0032、BAY80−6946、IPI−145、BYL−719、BGT−226、PF−04691502、GDC−0980、GSK−2126458およびPF−05212384からなる群より選択される、請求項12または13に記載の方法。

  15. a)膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を誘導することによって、非β細胞を改変する工程、および
    b)インスリンのシグナル伝達経路を遮断することによって、工程a)で得られた改変非β細胞のインスリン産生を刺激する工程
    を含んでなる、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。

  16. 前記転写因子が、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3およびNeuroD1からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。

  17. インスリンのシグナル伝達経路の阻害能を有する化合物をスクリーニングする方法であって、
    a)β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子を発現する非β細胞を試験化合物に曝露する工程、
    b)インスリン産生細胞である前記細胞の数を、試験化合物の存在下および非存在下で決定する工程、および
    c)工程b)で決定したインスリン産生細胞の数の2つの値を比較する工程を含み、
    試験化合物の存在下でのインスリン産生細胞の数が、非存在下での数よりも多かった場合に、その試験化合物はインスリンのシグナル伝達経路を阻害可能であるとする、方法。

  18. 治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを、被験体の必要に応じて投与することを含む糖尿病の治療に対する、糖尿病に罹患した被験体の感受性を予測する方法であって、前記被験体の非β細胞に、膵β細胞に特徴的な少なくとも1の転写因子の発現を検出する工程を含んでなる、方法。

  19. 前記転写因子が、Pdx−1、Nkx6.1、Nkx2.2、Pax4、Pax6、MafA、Ngn3およびNeuroD1からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。

  20. 治療上有効な量のインスリンのシグナル伝達経路に対するアンタゴニストを、被験体の必要に応じて投与することを含んでなる、糖尿病を予防および/または治療する方法。

 

 

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