粘液の粘性の正常化のための製品及び方法

 

開示されるのは、過剰に又は異常に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰の粘性又は粘着性を低下させるための及び/又はその液状化を高めるための組成物及び方法である。組成物は還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドが含有し、任意でさらに還元系を含有する。

 

 

関連出願への相互参照
本出願は、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/792,198号に対する35U.S.C119(e)のもとでの優先権の利益を主張する。2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/792,198号の開示全体は参照によって本明細書に組み入れられる。
配列表への参照
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技術分野
本発明は一般に、粘液又は喀痰の粘性を低下させ、且つ粘液又は喀痰の液状化を誘導する、向上させる及び/又は高めるための、還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの使用に関する。
嚢胞性線維症(CF)、COPD/肺気腫、気管支拡張症、重度喘息及び他の重篤な閉塞性肺疾患の患者の治療にとって安全で、上手く認容される、有効な薬剤に対する大きな満たされない医療のニーズが存在する。これらの疾患は損傷された肺機能を生じる粘性の高い粘液の過剰産生を特徴とする(Evans, C.M. and Koo, J.S., Pharmacology & Therapeutics 121: 332-348, 2009にて概説された)。異常な粘り気のある粘液の不十分なクリアランスは特にCFにおいて慢性の感染及び早死に関連する。抗生剤療法及び他の治療法の前進にもかかわらず、粘液の輸送可能性の根底にあるメカニズムの我々の理解が未だに限定されている一方で、粘液クリアランスの改善は臨床治療の中心的な目的のままである(Verdugo, P., Cold Spring Harb Perspect Med 2012;2:a009597)。
粘液は、上皮表面に保護バリアを形成し、吸入された夾雑物及び細菌を肺の外に輸送することに繊毛の作用と咳を介して関与する、連続して分泌される超分子のポリマーゲルである(Knowles, M.R. and Boucher, R.C., J Clin Invest 109:571-577, 2002; Cone, R.A., Adv Drug Deliv Rev 61:75-85, 2009)。従って、効率的な粘膜繊毛の輸送を可能にする、粘液層の適正な粘弾性及び水和作用は粘液の機能並びに感染及び炎症の予防に決定的である。正常な粘液はほとんど水から成り(97%)、残りの固形物はムチンタンパク質、非ムチンタンパク質、塩、脂質及び細胞残渣を含む(Fahy, J.V. and Dickey, B.F., N Engl J Med 363:2233-47, 2010)。高分子のムチン糖タンパク質、MUC5AC及びMUC5Bは呼吸器の粘液ゲルの粘弾的特性に主として関与する(Matsui et al., Cell 95:1005-1015, 1998; Kreda, et al., Cold Spring Harb Perspect Med 2012;2:a009589にて概説された)。ムチンに結合するO結合のグリカンのヒドロキシル基は水結合に寄与する一方で、ムチン自体は、消化管のムチンMUC2の詳細な研究から示唆されたように共有結合及び非共有結合の鎖間架橋(Ambort et al., Biochem J 436:61-70, 2011)も含み得る、絡み合ったネットワークを形成する(Verdugo et al., Biorheology 20:223-230, 1983)。ムチンは一風変わってCysアミノ酸が豊富であり、ヒトのMUC5ACは合計5030のアミノ酸のうち並外れて295のCys残基を含有する(www.uniprot.org/uniprot/P98088)。N末端及びC末端の近傍に位置するムチンのCys残基はムチンのサブユニット間での鎖間ジスルフィド結合の形成に関与すると考えられるが、内部のCys残基の役割はあまり明らかではない(Thornton et al., Annu Rev Physiol 70:459-486, 2008)。一部は「CysKnot」領域に位置し、粘液ゲルのメッシュ構造の中心となる非共有結合の絡み合いを円滑にすることにて役割を担い得る分子内ジスルフィド結合を容易に形成し得る(Fahy, J.V. and Dickey, B.F., N Engl J Med 363:2233-47, 2010)。
最近の研究(Button et al., Science 337:937-941, 2012)は、上皮細胞に膜結合するといったん考えられていた特定のムチンが実際、繊毛自体の膜に繋がれるという知見に基づいて粘膜表面の構造の新しいモデルを導いている。このモデルの意味は、可動性の粘液層が均一でさらに密な繊毛周囲層を覆うことであり、「ブラシ上のゲル」と記載される。モデルは、粘液がリザーバとして作用しながら液体がどのように2層間を移動するのかを優雅に説明し、粘膜繊毛輸送と粘液層水和の機能性を決定することにおける粘液浸透圧係数の役割を理解するための新しいパラダイムを確立する。モデルはまた、粘液タンパク質の足場における過剰なジスルフィド結合がどのようにして粘液層の浸透圧係数の上昇を引き起こし、同様に下層の繊毛層を脱水し、正常な粘液輸送を厳密に制約するのかを理解する枠組みも提供する。そのようなシナリオはCFの疾患のメカニズムの実質的な部分を支え得る。
CFは常染色体劣性形態である。CFの症状は、主として塩化物(Riordan, et al., Science 245: 1066-1073)であるが、重炭酸塩及びグルタチオンでもある一価の負に荷電するイオンのカギとなる上皮膜トランスポータである嚢胞性線維症膜コンダクタンス抑制因子、CFTRの欠陥から生じる。そのうち1700余りが知られている(www.genet.sickkids.on.ca/cftr/)CFをもたらす突然変異には、CFTRの完全な喪失を引き起こすもの(最も一般的なCFの遺伝子型の症例)と同様にアニオン輸送活性の部分的な又は完全な喪失を生じる点突然変異が挙げられる。加えて、CFTRの欠陥の結果、体内の上皮が塩化物イオンの輸送に対して不浸透性である(Boucher eta l., Lung 161:1-17, 1983; Welsh, Physiol Rev 67:11443-1184, 1987)。膵臓、腸管及び雄性生殖管を含む幾つかの臓器が冒されるけれども、肺の中での合併症は罹患率及び死亡率の95%を占める(Means, M. Cystic Fibrosis: the first 50 years. In: Cystic Fibrosis-Current Topics Volume 1, edited by Dodge JA, Brock DJH, and Widdicombe JH. Chichester: Wiley and Sons, 1992, p. 217-250)。疾患によって損傷された肺では、気道内腔への塩化物の輸送はNaと流体の過剰な吸収を招き、気道表面の液体の容量を減らす(Jiang et al., Science 262:424-427, 1993)。しかしながら、プリン作動性受容体のP2Y亜型のアゴニストを介した、機能しないCFTRが原因で生じる効果を代償するために塩化物チャンネルの活性を回復させる試みは失敗している(Ratjen, F. et al., J Cyst Fibros 11:539-49, 2012)。このことはCFTRの非塩化物効果は元々考えられていたよりも重大であり得ることを示唆している。
肺のような酸化している環境では、ムチンタンパク質にて大量に存在するもののような隣接する酸化されたCys残基間でジスルフィド結合は容易に形成される。これらの結合は高度に安定であり、Cys残基を遊離のチオール形態に戻すためにそれらを崩壊させる(すなわち、還元する)ことは強力な化学的又は生物学的な還元剤の作用を必要とする。健常な肺では、粘液層に大量に分泌され(Cantin et al., J Appl Physiol 63:152-157, 1987)、ムチンにおける遊離のチオールに対する正常なジスルフィド結合の平衡を維持することにてカギとなる役割を担い得るCys含有のトリペプチドであり、生物学的還元剤であるグルタチオン(GSH)の還元形態が過剰なジスルフィド結合の形成に主として対抗する。GSHの気道表面への分泌は高度にCFTRに依存し、それは直接及び間接的にGSHの移出を促進する(Ballatori et al., Biol Chem 390: 191-214, 2009にて概説された)。その結果、CF患者における肺GSHのレベルは正常個体で見いだされるレベルの30%以下であり得る(Roum et al., J Appl Physiol 75:2419-24, 2003; Wetmore D.R. et al., J Biol Chem 285:30516-22, 2010)。CFTRはまた重炭酸アニオンの分泌にも関与し、CFの肺における重炭酸塩の結果的な欠乏は疾患に寄与すると思われる。重炭酸塩の主要な化学的な効果はpHを上げることである。チオール含有の還元剤によるジスルフィド結合の還元は攻撃する脱プロトン化したチオール酸塩の形成を必要とし、それはプロトン化されたチオール形態が好まれる場合低pHで阻害されるので(Singh and Whitesides, In: Sulphur-containing Functional Groups, 5: pp. 633-58, John Wiley & Sons, 1993)、重炭酸塩とGSH(同様に気道表面に存在することが知られる他の生物学的還元剤)の活性との間での相乗作用はありそうなことである。CFの気管気管支分泌物にて測定されるpHは発病していない場合に対比して0.6単位まで低く(Song et al., Am J Physiol Cell Physiol 290:C741-C749)、還元剤が限定的な供給で存在すると共にジスルフィドを攻撃するチオール酸塩を形成する能力の損傷のために活性が低い場合の双方でCF肺の環境に一致する。ムチンに存在する多数のクラスター化したCysと総合して、酸化している呼吸環境における粘液は、分泌される還元剤のレベルが限定的になるのであれば、又はムチンタンパク質が過剰に産生され、分泌されて超大量のジスルフィド結合可能なCysを生じるのであれば、さらに高度にジスルフィド結合状態になる構えである。双方の状況はCF及び他の閉塞性肺疾患で起きることが知られており:粘液タンパク質は肺のストレスに応答して過剰産生され(Rogers, Resp Care 52:1134-1149)、GSH分泌の70%以上はCFTRにおける欠損の結果として阻止することができる(Roum et al., J Appl Physiol 75:2419-24, 2003; Wetmore D.R. et al., J Biol Chem 285:30516-22, 2010)。
過剰な粘液のジスルフィド結合についてのこの潜在力と同様にCFにおける機構的な役割を担う一般的なレドックスの不均衡は、粘液溶解薬としての種々のチオール含有剤の臨床評価をもたらしている。これらには、N−アセチルシステイン(NAC)及びナシステリン(NAL;N−アセチルシステイン+L−リジン)(Hurst et al., Am Rev Respir Dis, 96:962-970, 1967; Dasgupta and King, Pediatr Pulmonol, 22:161-166, 1996; Nash, E.F., et al., Cochrane Database of Systematic Reviews, 2010(12): 1-49, 2009)並びに還元グルタチオン自体(Bishop, C., et al., CHEST Journal, 127(1):308-317, 2005; Griese, M., et al., Am J Resp Crit Care Med 169(7):822-828, 2004; Griese, M., et al., Am J Resp Crit Care Med 188(1):83-89, 2013; Roum, J.H., et al., J Appl Physiol, 87:438-443, 1999)が挙げられる。大部分安全ではあるが、今日まで、これらの小分子の剤は経口形態又は吸入形態で明瞭な臨床的な利益を示していない(Nash, E.F., et al., Cochrane Database of Systematic Reviews, 2010(12):1-49, 2009によって概説された)。有効性のこの欠如の多くは、自己酸化効果と同様に肺の酵素による不活化の可能性のせいによる送達の間での低い効能又は活性の喪失の結果であり得る。GSHは不活性のGSSG形態への迅速な自己酸化にさらされる(Curello, S. et al., Clin Chem, 33:1448-49, 1987)ので、噴霧化され、吸入される場合還元形態では薬理学的に不安定であり(Carl White M.D., pers comm.)、気道の標的部位に達する時間までに活性の大きな画分を喪失する。加えて、肺空間にて高濃度で存在するγ−グルタミルトランスフェラーゼは、GSHを不活性の形態に迅速に分解し(Corti et al., Am J Resp Crit Care Med 189:233-234, 2014)、大量のそれはGSH吸入の際に顕著に増加する(Griese et al., Am J Resp Crit Care Med 188:83-89 Supplemental information, 2013)。従って、ジスルフィド標的化を優れた薬理学及び生物薬剤の特異性と組み合わせることによってチオール剤を改善することはカギとなる満たされない治療目的である。
CF肺疾患の病因が粘液の変化するレオロジー特性に起因し得る一方で、易感染性の肺機能は稀に出生時明らかである。代わりに、気管支拡張症及び気道閉塞が患者の年齢とともに進行する。この慢性の肺損傷は持続する周期の細菌感染と炎症性反応から生じる。肺に動員された好中球が、たとえば、エラスターゼのようなマトリクス分解酵素及び有害な反応性酸素種を放出すると気道の損傷が生じる(Konstan and Berger, Pediatr Pulmonol 24:137-142, 1997にて概説された)。持続する感染に続いて、死んでいく炎症細胞から放出されるDNA(Potter et al., Am J Dis Child 100:493-495, 1960; Lethem et al., Am Rev Respir Dis 100:493-495, 1990; Lethem et al., Eur Respir J 3:19-23, 1990)及びf−アクチンポリマー(Sheils et al., Am J Path 148:919-927, 1996; Tomkiewicz et al., DNA and actin filament ultrastructure in cystic fibrosis sputum. In: Cilia, mucus, and mucociliary interactions, edited by Baum GL, Priel Z, Roth Y, Liron N, and Ostfeld EJ. New York, NY: Marcel Dekker, 1998)とのムチンの相互作用も生じてもよく、重度の疾患におけるCF喀痰の濃い且つ粘性の性質の一部に関与することができる。咳又は粘膜繊毛クリアランスによってそのような粘液を一掃できないことは、日和見病原体、気道リモデリングによる肺のさらなるコロニー化を促し、最終的に死を促す。
従って、CFTR欠損の結末を直接緩和するように設計された介入は、それらが疾患の進行を防ぎ得る又は減衰させ得るので、特に望ましい。遺伝子治療によるCFの直接的な矯正は未だ達成できないが、ある程度のCFTR機能を欠損タンパク質に回復させる増強剤療法及び補正剤療法の使用が最近明らかにされている(Sloane, PA and Rowe, SM, Current Opinion in Pulmonary Medicine 16: 591-7, 2010)。そのような治療法は、バカッター/カリデコ(商標)によって標的とされたG551D突然変異のような特定のCFTR欠損を持つ一部の比率のCF患者に限定される(Jones, AM and Helm, JM, Drugs 69: 1903-10, 2009)。しかしながら、これらのわずかな人々では劇的な成績が認められている(Accurso, FJ; Rowe, SM; Clancy, JP; Boyle, MP; Dunitz, JM; Durie, PR; Sagel, SD; Hornick, DB et al., The New England Journal of Medicine 363: 1991-2003, 2010)ということは、CFにおける機構的な介入が慢性の感染及び炎症の結果生じるもののような後期の結果を緩和することが可能であることを実証している。しかしながら、現在、化膿した気道の分泌物のクリアランスを促進する薬剤と合わせた抗生剤投薬計画を含む疾患を改変するアプローチではなく症候性のアプローチが進行性気道疾患の中心的な治療のままである。CFの気道に存在する細胞外DNAを消化する精製rhDNase(PulmozymeTM; Genentech, USA)の吸入は呼吸器充血除去剤として広く使用されている。そのような治療は、喀痰の粘性を低下させ、努力呼気肺活量(FEV)を安定化するのに臨床的に有効である(Fuchs et al., N Engl J Med 331:637-642, 1994)。N−アセチルシステイン(NAC)、ナシステリン(N−アセチル−L−システイン誘導体)及びゲルソリンを含むムチン又はアクチンポリマーを壊すことを目的とする他の研究的治療も実験的には喀痰の粘性を低下させることができるが、米国ではCFの治療について臨床的な有効性を示していないし、認可を獲得していない(Nash, EF et al., Cochrane Database of Systematic Reviews, 2010(1):CD007168, 2009)。
粘液のクリアランスを改善するのに利用される他のアプローチには、たとえば、吸入される高張食塩水及び吸入される高用量のマンニトールのような粘液作用剤が挙げられる(Fahy, J.V. and Dickey, B.F., N Engl J Med 363:2233-47, 2010)。これらの剤は、水を浸透圧で粘液層に引き込み、水和作用を高める又は咳反射の誘導を介してクリアランスを改善することによって作用すると考えられる。双方のメカニズムについて幾つかの証拠が存在する(Levin, M.H. et al., J Biol Chem 281:25803-12, 2006; Boucher, R.C., Trends Mol Med 13:231-240, 2007)。しかしながら、粘液活性剤は症候性治療であって(疾患改変ではない)、有効性は一般に、多くの患者が最大の臨床効果を有することができる高用量を認容できないので適度に過ぎない(Aziz, I. and Kastelik, J.A., N Engl J Med 354:1848-1851, 2006)。
White及び共同研究者による知見(Rancourt et al., Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 286:L931-L938, 2004; Rancourt et al., Free Radical Biol & Med 42:1441-43, 2007)は、還元状態にてチオレドキシン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの使用はCFを有する患者を含む過剰に粘性の又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の液状化を高めるのに有用であり、その際、粘液又は喀痰は該タンパク質又はペプチドに接触させる(双方ともその全体が参照によって本明細書に組み入れられる特許文献1及び2)。この系(図3を参照)では、チオレドキシン活性部位のN末端システインと標的タンパク質(粘液又は喀痰に見いだされる)のシステインとの間での一時的な混合されたジスルフィド結合が形成され、その直後に分子内混合ジスルフィド結合で求核攻撃が続き、酸化されたチオレドキシン及び完全に還元された標的の放出が続く(Wynn et al,. Biochemistry 34(37):11807-11813, 1995)ので、粘液又は喀痰にてシステインのジスルフィド結合の再形成を可能にするが、同時にまた、還元された又は酸化されたチオレドキシンが細胞に入り、内在性のチオレドキシン還元酵素−NADPH系による再還元に続いて望ましくない的外れの活性を誘導する自由なアクセスを可能にする。加えて、White及び共同研究者らは、試験管内及び生体外での動物埋め込み試験にてヒトCF粘液の異常な粘弾性を緩和する(Rancourt et al., Free Radical Biol & Med 42:1441-43, 2007)と共に、活性部位のジスルフィド結合の崩壊による炎症誘発性の好中球エラスターゼの活性を阻害する(Lee et al., Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 289:L875-L882, 2005)還元されたチオレドキシンを示した。GSH及びたとえば、NACのようなチオール剤と比べて、チオレドキシンはさらに強力なジスルフィド結合還元分子であり、自己酸化による不活化にはるかに感受性ではない。総合すると、これは、薬理学上安定な分子で粘液に正常なジスルフィド還元状態を戻す機会を創る。そのような治療法は、CF患者における早期の死をもたらす慢性の感染、炎症及び肺機能の低下のカスケードを防ぎ得る又は遅延させ得る。しかしながら、チオレドキシンの潜在的な炎症誘発性の及び他の細胞内調節効果を回避する(Arner, E.S. and A. Holmgren, Eur J Biochem 267: 6102-6109, 2000; Rancourt et al., Free Radical Biol & Med 42:1441-43, 2007)と共にムチンのCys再酸化を防ぐことによって粘液の粘性/調節の能力を高める強い動機付けもある。これらの改善が本発明の主題である。
米国特許第7,195,766号明細書 米国特許第7,534,438号明細書
本発明の一実施形態は、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を減らす方法に関する。該方法には、接触させる工程の前に比べて粘液又は喀痰の粘性を減らすのに有効な、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物に患者の粘液又は喀痰を接触させる工程が含まれる。この実施形態の態様の1つでは、患者は粘液又は喀痰の異常な又は過剰な粘性又は粘着性が疾患の症状又は原因である肺疾患を有する。態様の1つでは、患者は、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症及び喘息から選択される肺疾患を有する。好まれる態様では、患者はCFを有する。この実施形態の別の態様では、患者は、粘液又は喀痰の異常な又は過剰な粘性又は粘着性が生物学的な還元活性の欠損に関連する肺疾患を有する。この実施形態のさらに別の態様では、患者は、コクシジウム症を含むが、これに限定されない、粘稠な又は異常な粘液に関連する消化管疾患を有する。
態様の1つでは、患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させる工程は、鼻内、気管内、気管支、肺への直接の導入、吸入及び経口から選択される経路により患者に組成物を導入することによって行われる。態様の1つでは、接触させられる粘液又は喀痰は患者の気道、消化管(すなわち、胃腸管)又は生殖管に位置する。
別の態様では、組成物は薬学上許容可能なキャリアにて患者に投与される。
前述の態様のいずれかでは、患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させる工程は、組成物との接触の前に比べて患者に由来する粘液又は喀痰の試料にて遊離のチオールの比率を高める。
前述の態様のいずれかでは、患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させる工程の後、患者は接触させる工程の前に比べて努力呼気肺活量(FEV)にて少なくとも約2.5%の上昇を有する。
前述の態様のいずれかでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位は、C−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。好まれる態様では、チオレドキシンの単一システイン活性部位は上述のようなアミノ酸配列C−X−X−S(配列番号24)を含む。
上記の態様のいずれかでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位を有するタンパク質は、原核細胞のチオレドキシン、真菌のチオレドキシン、植物のチオレドキシン、及び哺乳類のチオレドキシンから成る群から選択されるチオレドキシンを含む。好まれる態様では、タンパク質はヒトのチオレドキシンを含む。
本発明の上記の態様のいずれかでは、組成物はさらに、タンパク質のチオレドキシンの単一システイン活性部位を還元するための還元剤を含む。さらなる態様では、組成物はチオレドキシン還元酵素及びNADH又はNADPHを含む。
本発明の別の実施形態は、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位と、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰の治療のための少なくとも1つの追加の剤とを含有するタンパク質又はペプチドを含む、粘液又は喀痰の粘性を減らすのに使用するための組成物に関する。この実施形態の態様の1つでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はC−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。好まれる態様では、チオレドキシンの単一システイン活性部位は上述のようなアミノ酸配列C−X−X−S(配列番号24)を含む。この実施形態のための前述の態様のいずれかでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位を有するタンパク質は、原核細胞のチオレドキシン、真菌のチオレドキシン、植物のチオレドキシン、及び哺乳類のチオレドキシンから成る群から選択されるチオレドキシンを含む。態様での1つは、タンパク質はヒトのチオレドキシンを含む。
その上さらに、この実施形態の前述の態様のいずれか1つでは、組成物は還元剤を含む。その上さらなる態様では、組成物はさらにチオレドキシン還元酵素及びNADH又はNADPHを含む。
本発明のさらに別の実施形態は、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む医薬組成物に関する。態様の1つでは、肺への噴霧投与用に製剤化される。さらに別の態様では、組成物は経口投与用に製剤化される。この実施形態のための前述の態様のいずれかでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はC−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。さらに別の態様では、医薬組成物はネブライザ装置による肺への噴霧投与用に製剤化される。態様の1つでは、ネブライザ装置は振動/メッシュ式ネブライザである。別の態様では、医薬組成物はさらに還元剤を含む。本発明の前述の態様のいずれかでは、医薬組成物はさらにチオレドキシン還元酵素及びNADH又はNADPHを含む。
本発明のさらに別の実施形態は、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物に関するものであり、単一システイン活性部位におけるシステインは粘液タンパク質におけるシステイン残基に共有結合する。態様の1つでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はC−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。上記態様のいずれか1つでは、粘液タンパク質は呼吸器粘液タンパク質又は消化器粘液タンパク質である。別の態様では、粘液タンパク質はムチンである。
本発明の別の実施形態は、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を減らす方法に関する。方法には、ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤を含む組成物に患者の粘液又は喀痰を接触させる工程が含まれる。態様の1つでは、ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤は同一分子である。さらなる態様では、同一分子はチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドである。さらに別の態様では、ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤は異なる分子である。さらに別の態様では、ジスルフィド結合還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルタチオン、ジチオグリコール酸、2−メルカプトエタノール、N−アセチルシステイン又はトリス−(2−カルボキシエチル)ホスフェンであることができる。その上さらなる態様では、システイン遮断剤はヨードアセトアミド、ヨード酢酸又は他のアルキル化剤であることができる。
本発明のさらに別の実施形態は、過剰に粘性又は粘着性の粘液を有する患者を治療する方法に関する。方法には、細胞の取り込みが不可能であるチオレドキシン活性部位を有する化合物を含む組成物を患者に投与する工程が含まれる。態様の1つでは、化合物は、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含むタンパク質又はペプチド、チオレドキシン部分と細胞表面の受容体リガンドの部分を含む融合タンパク質、又はチオレドキシン活性部位を含むタンパク質又はペプチドと配列番号12の35位でのシステインに相当するシステインを遮断する化合物との組み合わせであることができる。
本発明の別の実施形態は、患者にて薬剤物質への全身暴露を防ぐ方法に関する。方法には、肺、経口又は局所の送達経路を含むが、これらに限定されない送達経路によって患者にや薬剤を投与する工程が含まれる。さらに別の態様では、薬剤は投与されるとすぐにその標的部位への共有結合を形成する。さらに別の態様では、薬剤物質はチオール含有薬剤であり、たとえば、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドであることができる。さらに別の態様では、薬剤物質は抗生剤又は感染防止剤であり、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位にリンカーによって融合される又は連結される。さらに別の態様では、薬剤物質は抗炎症剤であり、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位にリンカーによって融合される又は連結される。さらに別の態様では、薬剤物質は核酸加水分解剤であり、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位にリンカーによって融合される又は連結される。さらに別の態様では、薬剤物質は化学療法剤であり、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位にリンカーによって融合される又は連結される。
本発明のさらに別の実施形態は、還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含み、さらに、還元されたレドックス活性のあるチオール基を安定化することが可能である少なくとも1つのサッカリド又はサッカリド誘導体を含む医薬組成物に関する。態様の1つでは、サッカリド又はサッカリド誘導体は、スクロース、スクラロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、ラフィノース、マンノース又はマンニトールであることができる。態様の1つでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はC−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。
本発明の別の実施形態は、還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む動物飼料組成物に関する。態様の1つでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はC−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。
本発明の実施形態のいずれかの態様の1つでは、患者は、哺乳類及び鳥類を含むが、これらに限定されない脊椎動物である。さらに別の態様では、患者はヒトである。さらに別の態様では、患者はニワトリ又はシチメンチョウである。
本発明のさらに別の実施形態は、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を減らすための、還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物の使用に関するものであり、その際、患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させることは、接触させる工程の前に比べて粘液又は喀痰の粘性を低下させる。態様の1つでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はC−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号:21)、W−C−G−P−X−K(配列番号:23)、X−C−X−X−S−X(配列番号:25)、X−C−G−P−S−X(配列番号:26)、又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を含み、その際、C残基は還元状態であり、X残基はシステイン以外の任意のアミノ酸残基である。
野生型のチオレドキシン活性部位(WTrhTrxと呼ぶ)を含有するタンパク質又はペプチドと比べたチオレドキシンの単一システイン活性部位(r(Cys)hTrxと呼ぶ)を含有するタンパク質又はペプチドの酵素活性を示す図である。図1aは、非特異的な5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB又はEllman試薬)の還元が野生型に対比してチオレドキシンの単一システイン活性部位における還元可能なシステイン1つの損失を反映することを示す。 野生型のチオレドキシン活性部位(WTrhTrxと呼ぶ)を含有するタンパク質又はペプチドと比べたチオレドキシンの単一システイン活性部位(r(Cys)hTrxと呼ぶ)を含有するタンパク質又はペプチドの酵素活性を示す図である。図1bは、12.5μM、25μM及び50μMの濃度量でのヒト喀痰圧縮アッセイにてチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチド(r(Cys)hTrx)が野生型のチオレドキシン活性部位を含有するタンパク質又はペプチド(WTrhTrx)に対比して類似の又はさらに大きな有効性を有したことを示す。 喀痰圧縮アッセイにおける患者の喀痰試料(処理当たりn=6)の基準化に対する、野生型rhTrx、r(Cys)hTrx及び2種の濃度(0.58mMと1.5mM)でのジチオスレイトール(DTT)、等モル濃度でのN−アセチルシステイン(NAC)及び組換えヒトDNase(rhDNase)を含む種々の対照の効果を示す。 配列番号12の35位でチオレドキシンの単一システイン活性部位を有するタンパク質又はペプチドによるジスルフィド結合形成のメカニズムを説明する図である。ネイティブTrxのジスルフィド還元のメカニズムには2工程反応が関与する。図3に示すように、工程I及びIIはTrx活性部位のN末端Cys(ヒトTRX−1アミノ酸配列にて32位に位置する)と標的タンパク質のジスルフィドの一方のCysとの間での一時的な混合ジスルフィドの形成を示し、それに工程IIIが続く。工程IIIはヒトTRX−1アミノ酸配列にて35位に位置する、Trx活性部位のC末端Cysによる分子間の混合ジスルフィド結合に対する求核攻撃を示す。この第2の還元は混合ジスルフィド結合を分解し、酸化されたTrxと完全に還元された標的を放出する。Trxの35位におけるC末端活性部位Cys残基を、たとえば、セリン残基のような非システインアミノ酸に変異(単一システイン変異)させることによって、又はさもなければ35位におけるC末端活性部位Cys残基による求核攻撃を妨害するようにタンパク質配列を修飾することによって、チオレドキシンは還元剤としてまだ機能することができるが、野生型の酵素とは異なって、そのような単一システイン活性部位変異体は分解されない分子間の混合ジスルフィド結合を介して還元された標的タンパク質に共有結合したままである。
本発明は一般に、粘液又は喀痰の液状化を誘導する、向上させる及び/又は高めるための、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの使用に関する。さらに具体的には、本発明者らは、単一システインのチオレドキシンの活性部位を持つタンパク質又はペプチドが喀痰又は粘液の粘性及び/又は粘着性を低下させ、それによって喀痰又は粘液の液状化を向上させる又は高めるのに有効な剤であることを発見した。従って、還元状態での単一システインのチオレドキシンの活性部位を含有するタンパク質又はペプチド、又はそのようなタンパク質をコードする核酸分子を単独で又は併用で用いて望ましくない粘液又は粘稠で粘性の喀痰に関連する種々の状態又は疾患を治療することができる。たとえば、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症及び喘息のような呼吸器疾患は本発明の製品及び方法を用いた治療に特に適している。また、たとえば、コクシジウム症のような粘稠な又は粘着性の粘液に関連する消化管疾患も本発明の製品及び方法を用いた治療に特に適している。従って、本発明は、粘液又は喀痰、特に異常に又は過剰に粘性及び/又は粘着性である粘液又は喀痰の粘性を低下させるための、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質の使用に関する。粘液又は喀痰の粘性を低下させるのに、且つ好ましくは治療利益を患者に提供するのに有効な方法及び量で、そのような異常な又は過剰な粘液又は喀痰で苦しんでいる又はそれに冒されている患者にタンパク質が投与される。
チオレドキシン及び野生型(又はネイティブの)チオレドキシン活性部位(「rhTxr」とも呼ばれる)を含有する又はチオレドキシンの単一システイン活性部位(「r(Cys)hTrx」とも呼ばれる)を含有するタンパク質は、嚢胞性線維症のような状態の治療で使用することについて他の還元剤を超えて利点を有する。たとえば、N−アセチルシステイン(NAC)、ナシステリン(NAL)、ジチオスレイトール(DTT)又は還元されたグルタチオン(GSH)のような他の還元剤とは異なって、チオレドキシンは、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル及び他の毒性の酸素代謝体を生じる反応を含む酵素メカニズム又は自己酸化メカニズムによる不活化にあまり感受性ではない。さらに、ネイティブの又は野生型のチオレドキシンは、正常に細胞外に気道表面にて分泌される、天然に存在する化合物であるので、気道へのチオレドキシンの導入は非刺激性であり、免疫応答を誘導する可能性は低いはずである。チオレドキシンはグリコシル化もされず、そのようなものとしてそれはさらに製造し易く、天然の形態又は組換えの形態でのタンパク質の投与は自然免疫応答を誘導しないはずである。たぶん、一層さらに重要なことには、還元されたチオレドキシンは他の還元剤とは対照的に、治療した粘液又は喀痰を迅速に且つ強力に正常な粘性のレベルに戻し、この正常化は長い持続時間続く。NAC、NAL、DTT及びGSHは長い時間をかけて、たとえば、「消費される」又は酸化されるようになり、この段階で正常化された粘液又は喀痰は異常な粘性状態に戻り得る。対照的に、チオレドキシンによって生じた粘性の低下は長く持続すると見られ、その還元系による周期的な再還元のためである可能性が最も高い。さらに、ムチンのCys残基に共有結合したままにすることによって、r(Cys)hTrxはネイティブなrhTrxに対比して粘性で一層さらに強力で長く持続する還元を創り出す。最終的にチオレドキシンは他の還元剤よりもジスルフィド結合の還元について強力で且つ特異的であるので、有益な効果を達成するのに他の剤よりも有意に少ない用量で使用することができる。
上述の利点に加えて、チオレドキシンは病状で有用性を高める他の利益を有する。たとえば、チオレドキシンは、病的な喀痰(たとえば、嚢胞性線維症の喀痰)における特定の細菌性毒素(グラム陰性細菌の細菌細胞壁に由来する内毒素、Pseudomonas aeruginosaに由来するピオシアニン等を含むが、これらに限定されない)の毒性を低下させると予測されるMnSOD(たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,985,261号を参照)を誘導することが知られる。加えて、チオレドキシンは、呼吸器の状態の治療全体を向上させることができる細胞外の抗炎症特性を有する(Lee, R.L., et al., Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 289(5):L875-82, 2005)。
チオレドキシン(Trx)は、多数のチオール依存性の細胞性還元過程を触媒するタンパク質ジスルフィド還元酵素である。ネイティブのチオレドキシンは、種間で高度に保存されている2つのレドックス活性のあるシステインを含有する。その酸化された形態では、タンパク質の三次元構造から突き出るジスルフィド結合を形成する(Holmgren, Annu Rev Biochem 54:237-271, 1985)。NADPH依存性のチオレドキシン還元酵素(TR)酵素によるこの活性中心の還元はTrxがジチオール/ジスルフィド交換能を持つ電子担体として機能するのを可能にする(Oblong et al., Biochemistry 32:7271-7277, 1993)。タンパク質ジスルフィドはTrxが介在する還元作用には好まれる基質である。TrxのC末端の活性部位システインの修飾は単一システイン活性部位を生じ、それは以下で議論するように、ネイティブの又は野生型の活性部位を有するTrxを超えて実質的な利点を有する。嚢胞性線維症疾患における気道分泌物の持続する且つ粘性の性質は気道の閉塞、日和見感染及び肺機能の劣化をもたらす。呼吸器のムチンが重合にて本質的な役割を担うと考えられる複数のシステインドメインを含有すること(Bell et al., Biochem J 357:203-209, 2001; Asker et al., Biochem J 333:381-387, 1998)と同様に多数の分子内ジスルフィド結合を介してムチンの絡み合いを増すことを認識して、本発明者らは、単一システイン活性部位を含有するTrxがムチンのジスルフィドの還元によって有効な粘液の粘性調節剤として役立つかどうかを決定するように試みた。
ネイティブの又は野生型の活性部位を含有するチオレドキシンに対比して単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンの幾つかの利点及び利益がある。単一システインの修飾は、Rancourtら(Free Radical Biol & Med 42:1441-43, 2007)によって記載されたもののような細胞内シグナル伝達又は全身性の暴露に関連するチオレドキシンの潜在的な副作用を出来るだけ抑えるように設計される。この修飾は、チオレドキシンと、N-末端のチオレドキシンの活性部位のシステイン(たとえば、ヒトのチオレドキシン、配列番号14の32位に位置する)によって触媒される標的タンパク質のジスルフィドとの間で形成される混合ジスルフィドに対する求核攻撃を防ぐ。驚くべきことに、本発明者らは、野生型チオレドキシンよりも単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンが病んだヒト粘液の粘性を低下させ(液状化に向かう傾向)、正常化する大きな潜在能を有することを見つけ出した。たとえ、単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンが、活性部位のシステインの喪失によって生じる全体的な動揺により少ない還元潜在力を有するので、N−末端チオレドキシンの活性部位システインでの当初の触媒反応に続いて、粘液タンパク質(たとえば、大量にジスルフィド結合したムチンMUC5AC及びMUC5B)に共有結合し、還元されることができず、反復触媒を行うことができないと理論的に予想されるとしても、本発明者らは、単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンが野生型のチオレドキシンに比べて損傷された活性を示さないだけでなく、それはレオロジーアッセイにてヒトCFの粘液の粘性を低下させる大きな量的能力を示すことを見いだしている。この予想外の結果に基づいて、本発明者らは、単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンの向上した潜在能は、ムチンにてシステインのジスルフィドの再形成を阻止するように機能する共有結合したチオレドキシンと粘液の結末であるにちがいないと結論付けたので、ムチンオリゴマーのゲル構造及び孔サイズで非常に長持ちする且つ寿命の長い変化を提供する。同時に、単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンのムチン標的への共有結合は隔絶するので吸入されたチオレドキシンの細胞性の取り込み及び内部移行を防ぎ、それは、細胞内での望ましくないチオレドキシンの活性による的外れな効果を防ぐ二重の利益を有する一方で、同時に粘液に関連した消費された薬剤の生体からのクリアランスを促進する。Cysが修飾された単一システインのチオレドキシンについて当該技術で以前想定された治療用の使用のみが全身性循環への注射に続いて内皮細胞にて脂質ラフトを介した非還元形態の取り込みを促進すべきである(Hara et al., Antiox Redox Sig 9:1427-37, 2007; Kondo et al., Antiox Redox Sig 9:1439-48, 2007; US Patent Applications 20080119398, 20090075871, and 20100184215)ので、全身性の暴露及び細胞内への取り込みを防ぐことに焦点を置く本発明から離れて教示するので、還元形態での単一システイン活性部位チオレドキシンの向上した潜在能と安全性についての細胞外のメカニズムは予期せぬことであり、高度に新規である。
気道の粘液閉塞はCFの患者にて重大な病的状態及び死亡率の原因となり得る。本発明者らは、単一システイン活性部位を含有するTrxによって気道内でのこれら分泌物の持続性を促進する粘弾特性が顕著に低下することを明らかにした。この結論は2つの実験的な証拠によって支持される。第1に、圧縮アッセイの結果は、単一システインTrxとのインキュベートの間にCF喀痰のゲルマトリクスから大量の液体が放出されることを示している。この放出と同時に生じることが固形物の容積の低下であるということは、喀痰のゲルを形成する構成成分が可溶化されていたことを示している。CF喀痰の粘性のこの正常化はインキュベート時間の間に肉眼的に見られることが多いので、遠心分離の混乱の作為ではない。単一システインTrxによる液体の自由化は、気道表面での水容積の回復がCF上皮の粘膜繊毛輸送能を回復することができ(Jiang et al., Science 262:424-427, 1993)、過剰な粘性の緩和がButtonら(Science, 2012)のブラシ上のゲルモデルに基づいて、下層の繊毛周囲層の水和作用を可能にし、その喪失がCFの病理の主要な原因である粘膜繊毛輸送を回復するので、重要な治療上の意味を有すると予想される。第2に、磁気微量流量計測定は単一システインTrxによる喀痰成分の還元の結果として喀痰の粘弾性が低下するという直接的な証拠を提供する。
CFの喀痰は、液体と固体の双方の特徴を示す非Newtonian流体である。低濃度で溶液に存在する場合ポリマーは自由に回転することができる。ポリマーが濃くなる又はその回転が妨害される程度に架橋されると、溶液は浸透限界と呼ばれる過渡期に達している(Forgacs, J Cell Sci 108:2131-2143, 1995)。浸透限界では、溶液は固体の特徴を獲得し始め、交差ポリマーの相互作用が加えられるにつれて試料における各フィラメントがマトリクスに組み込まれるまで弾性係数は増え続ける。生化学的な分析は、気道に並ぶ細胞によって分泌されるムチンMUC5AC及びMUC5Bが気道粘液の主要なゲル形成ポリマー成分であることを明らかにした(Hovenberg et al., Glycoconj J 13:839-847, 1996; Thornton et al., Biochem J 316:967-975, 1996; Thornton et al., J Biol Chem 272:9561-9566, 1997)。これらのムチンに存在するシステインドメインは、ゲルメッシュの絡み合いへの寄与因子である可能性がある分子内ジスルフィド結合の形成によって(Bell et al., Biochem J 357:203-209, 2001; Asker et al., Biochem J 333:381-387, 1998)ポリマーの形成に寄与し、多分、近隣のムチン鎖との相互作用にも寄与する。タンパク質におけるジスルフィド結合はTrx酵素活性の好まれる基質であるので、ムチンポリマーはTrxによる喀痰の液状化の間、還元の標的である。このことは、Trx処理した喀痰にて高分子量の糖型の溶解性における変化を示すPAS染色によって支持される。Trxに暴露された喀痰の液相におけるさらに高い濃度の糖タンパク質の検出は、さらに強い黄色によってさらに示され、希釈液で処理した試料に由来する液相よりもさらに大きな不透明性を有した。Trxに暴露された喀痰におけるPASで検出可能な糖タンパク質の電気泳動移動度の増強も、これらの高分子が酵素的還元の間にサイズを減らし得ることを示唆している。この電気泳動分析からの知見は、Trx処理に続く喀痰における遊離のチオールの標識の増加の観察と同様に、Trxへの暴露の間、液相への糖タンパク質の放出がゲルマトリクスの質量の低下に一致することを明らかにすることによって圧縮アッセイの測定に一致する(Rancourt, R. et al., Free Radic Biol Med, 42(9):1441-1453, 2007)。
CF患者にて炎症及び感染の慢性の影響がいったん確立すると、病変したCF肺の気道内の好中球の溶解は気道分泌物への細胞外DNAの沈着を生じる(Lethem et al., Eur Respir J 3:19-23, 1990)。非共有結合の相互作用によって、このDNAはムチン糖タンパク質の中で絡まり合うようになり、粘液のゲル粘弾性を高める(Sachdev et al., Chest 81:41S-43S, 1982)。喀痰に存在するDNAはTrx処理に続いてますます可溶性になる。論理的な説明は、Trx活性が、DNAと冒された高分子との間の絡み合い相互作用を解放するのに十分であるゲルマトリクス内の構造変化を起こすということである。この高いDNAの溶解性の相対的な寄与が、CF喀痰のTrxへの暴露の間に観察される粘弾性の変化に向かって何を有するのかは不明確である。それにもかかわらず、臨床の見地からは、喀痰の不溶性のゲル相からDNAをほぐすこと又は取り出すことはCFにおけるそのような治療の間、DNA分解酵素活性に対してそれをさらに感受性にし得る。加えて、粘液の粘性を低下させ、ムチンのシステインにおけるジスルフィド結合の迅速な再形成を防ぐ単一システインr(Cys)hTrxの作用は、脱膨化して蓄積された粘液栓と同様にさらに浸透性で利用しやすい粘液層を創るように機能するであろう。これらの作用は深部肺及び肺上皮表面への他の治療のアクセスを円滑にすると予想される。従って、本発明の機構的方法は、たとえば、吸入される抗生剤、粘液活性物質又は粘液溶解性DNA加水分解剤の送達のようなCF及び他の閉塞性肺疾患の既存の症候性療法との相乗効果について強い潜在力を有する。
単一システイン活性部位を含有するTrxは還元されたグルタチオンよりも高い活性及び大きな酸化安定性の双方を有し、気道粘液にて細胞外で作用し、肺細胞に入らない。単一システイン活性部位を含むTrxは、たとえば、CFの喀痰にて喀痰の粘性を低下させ、液体分画を増やし、粘弾性を減少させる。液体の放出を刺激し、気道分泌物の粘性を低下させる粘液減少系の開発は、他の呼吸器の状態(たとえば、慢性又は急性の気管支炎、気管支拡張症、COPD/肺気腫、喘息、急性気管炎、急性又は慢性の副鼻腔炎;気道の急性又は慢性の粘液閉塞の結果生じる無気肺;細気管支炎)に関連し得る、又はたとえば、コクシジウム症のような種々の消化器障害(すなわち、胃腸)又は過剰な若しくは異常な粘液の粘性及び/又は粘着性に関連する若しくはそれによって悪化する生殖障害(たとえば、粘液の濃縮による急性、亜急性又は慢性の大腸閉塞;生体の生殖構造の閉塞による不妊)に関係し得る過剰な又は異常な粘液の粘性及び/又は粘着性の治療のためにと同様に、CFのような疾患のために治療上の潜在力を有すると予想される。還元状態で単一システイン活性部位を含有するTrxは、それがいったんムチンのジスルフィド結合と反応すると、ムチンに共有結合するようになるので、作用のそのようなメカニズムも粘液と共に消費される(酸化される)薬剤のクリアランスを促進するであろうし、細胞性の取り込み及びチオレドキシンが介在するレドックスのシグナル伝達を防ぎ得る又は減衰させ得るし、免疫細胞への提示を防ぎ得る又は減衰させ得る。
従って、本発明の一実施形態は、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者における粘液又は喀痰の粘性を正常化し、低下させる方法に関する。方法には、還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物に患者の粘液又は喀痰を接触させる工程が含まれる。タンパク質は、接触させる工程の前に比べて粘液又は喀痰の粘性を低下させるのに有効である。
本発明によれば、用語「粘液」は一般に、気道、消化管及び生殖管を含む生体の種々の組織における粘膜によって分泌される普通、透明な粘性のある流体を指す。粘液はそれが分泌される組織を湿らせ、潤滑にし、保護する。それはムチン高分子(粘液タンパク質、核酸及び炭水化物を含む)を含み、それは粘液のゲル形成性構成成分である。粘液タンパク質には、呼吸器粘液タンパク質及び消化器粘液タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。正常な粘液の粘弾性特性は濃度、分子量及びムチンポリマー間の絡み合いの程度に左右される。用語「喀痰」は一般に、唾液と、粘液を含む気道からの分泌物との混合物を指す。喀痰は通常、唾液と粘液(及び呼吸器組織からの他の分泌物)の咳をして出す混合物である。従って、粘液は喀痰の主要な成分であり、そのようなものとして過剰に粘性の粘液の存在はそれ自体過剰に粘性の喀痰を生じる。本発明は粘液又は喀痰の粘性を低下させることに関する。用語「液状化」はさらに液体になる行為を指す。従って、粘液又は喀痰の液状化の上昇は、さらに固体の相又は粘性の相に比べて粘液又は喀痰の液体の相又は液体状態が増すことを指す。疾患に関連した以上に粘性の又は過剰な粘液の場合、目的は粘液の粘性の正常なレベルを回復することである。従って、液状化は粘液の粘性の低下とも見なされ得る。
正常な粘液の機能は生物学的還元剤の酸化可能なシステインに対する適当な比を有することによって達成されることが十分に理解される。従って、生物学的還元剤の活性の欠損は、過剰な酸化可能なシステイン又は生物学的還元剤の欠如のいずれかが原因で生じる。
生体における粘液及び喀痰の一般的な機能は粘液(従って喀痰の粘液成分)が粘弾性特性を有することを必要とする。正常な粘液及び喀痰を持つ個体(すなわち、健常な個体、又はさらに詳しくは、粘液又は喀痰の粘性又は粘着性が原因で起きる又はそれによって悪化する症状又は状態を患わない個体)では、粘弾性は、濃度、分子量及びムチンポリマー間の絡み合いに左右される(Verdugo et al., Biorheology 20:223-230, 1983)。特にCFでは、粘液におけるムチンが死んでいく炎症細胞から放出されるDNA(Potter et al., Am J Dis Child 100:493-495, 1960; Lethem et al., Am Rev Respir Dis 100:493-495, 1990; Lethem et al., Eur Respir J 3:19-23, 1990)及びf−アクチンポリマー(Sheils et al., Am J Path 148:919-927, 1996; Tomkiewicz et al., DNA and actin filament ultrastructure in cystic fibrosis sputum. In: Cilia, mucus, and mucociliary interactions, edited by Baum GL, Priel Z, Roth Y, Liron N, and Ostfeld EJ. New York, NY: Marcel Dekker, 1998)と相互作用すると、粘液(だから喀痰)はさらに一層濃くなり、粘性になる。異常な、粘稠な粘液を咳又は粘膜繊毛クリアランスによって一掃できないことは、日和見病原体による肺のコロニー化を助長する。従って、異常に又は過剰に粘性の及び/又は粘着性の粘液は、正常な又は健常な患者(好ましくは年齢及び性別が一致する患者)に由来する粘液よりも測定可能に又は検出可能にさらに粘性である又は粘着性である粘液として、及び/又は粘性及び/又は粘着性のそのレベルのために、患者に不快感又は疼痛を生じる少なくとも1つの症状を引き起こす若しくはそれに寄与する、又は状態若しくは疾患を引き起こす若しくは悪化させる粘液として特徴付けられる。言い換えれば、異常に又は過剰に粘性の及び/又は粘着性の喀痰は、患者を治療して状態からの何らかの緩和又は他の治療上の利益を提供することが望ましい、正常な粘液又は喀痰の逸脱である。
本発明の方法及び組成物を用いて粘液又は喀痰の粘性を低下させることが望ましい患者を治療することができる。特に、特定の肺、副鼻腔、鼻腔、消化器又は胃腸又は生殖器の疾患又は病気を有する患者は本発明の方法を用いた治療から利益を得ることができる。本発明は、当然、嚢胞性線維症のような肺に関連する疾患と同様にコクシジウム症のような消化器疾患を含む、粘液又は喀痰の異常な又は過剰な粘性及び/又は粘着性が原因で生じる又はそれによって悪化する病気又は疾患の少なくとも1つの症状を改善する又は軽減するのに最も有用である。他の疾患は、少なくとも時には、粘液又は喀痰の異常な又は過剰な粘性及び/又は粘着性に関連してもよく、そのような症状が生じる場合、本発明の方法を用いて粘液又は喀痰の粘性を低下させ、少なくとも何らかの緩和又は治療上の利益を患者に提供することができる。そのような疾患の例には、嚢胞性線維症;慢性又は急性の気管支炎;気管支拡張症(非CF及びCF気管支拡張症);COPD/肺気腫、急性気管炎(細菌性、ウイルス性、マイコプラズマ性、又は他の生物が原因となる);急性又は慢性の副鼻腔炎;気道の急性又は慢性の粘液栓(喘息のような種々の疾患で見られることがある)の結果生じる無気肺(肺又は肺葉の崩壊);細気管支炎(ウイルス性又はその他);CF又は類似の疾病における胎便性イレウス又は胎便性イレウス同等物を含むが、これらに限定されない粘液の濃縮による急性、亜急性又は慢性の大腸閉塞;他の消化器疾患及び子宮頚部、精管又は他の生体生殖構造の閉塞(しかし、これに限定されない)による不妊が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、改善された粘膜繊毛クリアランスは肺からの細菌及び他の病原体のクリアランスと関連するので、本発明の組成物及び方法は、ウイルス感染及び細菌感染の双方を含む種々の呼吸器感染を伴った患者における粘液又は喀痰の過剰な粘性及び/又は粘着性と関連する症状を軽減するのに有用であり得る。
そのようなものとして、治療上の利益は特定の疾患又は状態の必ずしも治癒ではないが、むしろ好ましくは、ほとんど通常、疾患又は状態の緩和、疾患又は状態の排除、疾患又は状態に関連する症状の軽減又は排除、原発の疾患又は状態(たとえば、気道における過剰に粘性の粘液を利用する日和見病原生物が原因で生じる感染性疾患)の発症の結果生じる二次性の疾患又は状態の予防又は緩和、及び/又は根底にある疾患又は状態又はその疾患又は状態に関連する症状の予防を含む結果を包含する。本明細書で使用されるとき、「疾患から保護される」は、疾患の症状を軽減すること;緩和療法(治癒を達成することなく疾患の症状を緩和する又は和らげること);疾患の発症を軽減すること;及び/又は疾患の重症度を軽減すること又は疾患又は状態の少なくとも1つの症状、兆候又は原因を緩和することを指す。予防することは、患者に投与した際、疾患が発生するのを防ぐ本発明の組成物の能力を指す。治癒すること(又は疾患を改変すること)は患者に投与して疾患を治癒させる場合の本発明の組成物の能力を指す。疾患から患者を守ることは疾患を有する患者を治療する(治療処置)ことを含む。疾患/状態を防ぐことには疾患の発生を防ぐこと(予防的治療)が含まれる。特に患者を疾患から守ること(又は疾患を防ぐこと)は、有益な効果が得られるように、還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含むタンパク質又はペプチドに粘液又は喀痰を接触させることにより、患者における異常に粘性の粘液又は喀痰の液状化を高める(正常化する)ことによって達成される。有益な効果は当業者及び/又は患者を治療している訓練された臨床家によって容易に評価することができる。用語「疾患」は患者の正常な健康からの逸脱を指し、疾患の症状が存在する状態と同様に逸脱(たとえば、感染、遺伝子突然変異、遺伝子欠損等)が起きているが症状が未だ現れていない状態が含まれる。
還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含むタンパク質又はペプチド(又はそのようなタンパク質を含む組成物)との患者の粘液及び/又は喀痰の接触は、組成物との接触の前に比べて粘液又は喀痰の粘性の低下/液状化の上昇を生じるように意図される。本発明によれば、粘液又は喀痰の液状化における上昇は液状化の以前のレベルに比べて粘液又は喀痰の液状化のレベルで測定可能な又は検出可能な上昇であることができ、好ましくは、統計的に有意な上昇である(すなわち、患者の試料とベースライン対照との間での液状化の測定されたレベルにおける差異が少なくともp<0.05の信頼の程度で統計的に有意である)。通常、正常で健常な人の喀痰はベースライン対照として除外されないが、正常で健常な人は一般に対照として役立つのに十分な量の喀痰を産生しないので、「ベースライン対照」は治療の投与前の患者の試料である。さらに、粘性の低下は肺機能の改善を生じる。この改善は、患者が報告する結果、入院までの増悪の平均時間及び/又は努力呼気肺活量(FEV)を含む種々の手段によって判定することができる。本発明の態様の1つでは、FEVの上昇は、本発明の組成物又はタンパク質との接触前の患者からの試料に比べて、少なくとも約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6.0%、約6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%、約8.5%、約9.0%、及び9.5%及び約10%の上昇として記載される。好ましくは、患者の粘液又は喀痰との本発明のタンパク質又は組成物の接触は、本発明のタンパク質又は組成物との接触前の患者の試料と比べて約2.5%の上昇を生じる。粘液又は喀痰の液状化及び/又は粘性の低下は、実施例の区分に記載されるような圧縮アッセイを含むが、これに限定されない当該技術で好適な技法を用いて測定することができる。そのようなアッセイでは、固相(ゲル)での水性相(液体)に対比する粘液又は喀痰の量が測定される。本発明の他の態様では、粘弾性(たとえば、磁気微量流量計によって測定される)、糖タンパク質含量又はDNA含量含むが、これらに限定されないパラメータ又は指標を用いて粘液又は喀痰の相対的な粘性又は粘着性を測定することができる。本発明の別の態様では、粘液タンパク質のジスルフィド結合における変化は、ジスルフィド結合の崩壊によって創られる未結合(遊離)のCys残基のチオール基と優先的に反応するNEM(N−エチルマレイミド)のような試薬の使用によって推定することができる(Rancourt, R. et al., Free Radic Biol Med, 42(9):1441-1453, 2007)。本発明の態様の1つでは、液状化のレベルは、粘液又は喀痰の試料の総容量の比率としての水性(液体)相にある所与の粘液又は喀痰の試料の量として記載される。嚢胞性線維症の患者では、たとえば、粘液又は喀痰の液状化のレベルは総容量の10%未満又はさらに5%未満のように低い。好ましくは、粘液又は喀痰の本発明のタンパク質又は組成物との接触は、少なくとも総容量の少なくとも約15%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約20%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約25%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約30%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約35%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約40%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約45%が液体相にある、さらに好ましくは総容量の少なくとも約50%が液体相にあるように、又は粘液が原因で生じる機能の遮断又は阻害が一掃するまで(たとえば、患者の気道が痰で流体を吐き出し始めるのに十分にきれいにされるまで)粘液又は喀痰の液状化における変化を生じる。一般に、喀痰又は粘液の液状化は、気道又は他の遮断された通路(たとえば、消化管又は生殖管)がきれいにされるまで、しかし、喀痰を過剰に液状化しないで、小さな段階的な増分で増えることが好まれる。粘液又は喀痰の過剰な液状化は、それが患者にとって有害であり得る(たとえば、液状化された喀痰は逆流し、小さな気道を水浸しにし、それはまた喀痰が患者によって一掃され得るまえに感染させられ得る)ので望ましくない。好ましくは、粘液又は喀痰との本発明のタンパク質、ペプチド又は組成物の接触は、患者の気道又は他の詰まった通路がきれいにされるまで1%の増分での、治療の前と比べた容量で粘液又は喀痰の液状化における約1%の上昇、さらに好ましくは約2%の上昇等を生じる。たとえば、いわゆる「粘液栓」の除去によってそのような一掃がいったん達成され、薬剤の小さな気道及び肺胞へのアクセスを改善すると、新しく分泌されるムチンタンパク質をジスルフィド結合の正常な状態で保持するために低用量の維持療法が始められる。
態様の1つでは、治療法は、患者の冒された組織(気道、消化管、生殖管)からの薄い物質を一掃する方法と併せて実施される。たとえば、呼吸器系の場合、体位ドレナージ、強制呼気及び他の呼吸運動、又は液状化された粘液又は喀痰を吐き出す他の好適な方法と併せて本発明の方法を使用することができる。
本発明によれば、治療される患者における粘液又は喀痰は還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質(又は該タンパク質を含む組成物)と接触させられる。タンパク質は、接触させる工程の前に比べて、喀痰又は粘液の粘性及び粘着性を低下させ、喀痰又は粘液の液状化を上昇させるのに有効である。以前記載したように、チオレドキシンは、多数のチオール依存性の細胞性還元過程に関与する、ほとんどの生物で見いだされるタンパク質ジスルフィド還元酵素である。ヒトでは、チオレドキシンは、成人T細胞白血病由来因子(ADF)とも呼ばれる。細胞内では、この普遍的な低分子量(11,700)タンパク質のほとんどは還元されたままである。還元された又は酸化されたチオレドキシンはインタクトな細胞に入ることができ、又は細胞膜に吸着することができ、そこで少量が時間をかけて徐々に内部移行する。ネイティブのチオレドキシンは、酸化されたタンパク質ではタンパク質の三次元構造からの突出に位置するジスルフィド結合を形成する活性部位にて2つの近接するシステイン残基を有する。フラボタンパク質であるチオレドキシン還元酵素はこのジスルフィドのNADPH依存性の還元を触媒する。加えて、変化した補因子の特異性について修飾されたチオレドキシン還元酵素の操作された型は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第7,071,307号に記載されたようにNADPHの代わりに又はそれに加えてNADHを利用し得る。チオレドキシンの小さな上昇は、タンパク質にてスルフヒドリル/ジスルフィドのレドックス状態で顕著な変化を引き起こすことができる。
他のチオールとは異なって、チオレドキシンは一般に自己酸化(たとえば、自己酸化を介してスーパーオキシドラジカルを生成すること)による細胞における酸化的ストレスには寄与しないが、細胞性タンパク質の還元を達成するその能力に加えて、チオレドキシンは抗酸化剤として直接作用することができる(たとえば、反応性酸素種を取り除くことにより酸化可能な基質の酸化を妨げることによって)ことが認識される。上記のWhiteらへの米国特許第5,985,261号はチオレドキシンがMnSODの産生を直接誘導し、そのような誘導が還元状態でのチオレドキシンによって達成されることを示した。
本発明の「チオレドキシン単一システイン活性部位」はアミノ酸配列C−X−X−X(配列番号17)を含む(ネイティブの又は野生型の配列は配列番号16を有するアミノ酸配列C−X−X−Cを含む)。本明細書で使用されるとき、「C」と示されるアミノ酸残基はシステイン残基であり、「X」と示されるアミノ酸残基はシステイン以外のアミノ酸残基、特に残りの標準の20アミノ酸残基のいずれかであることができる。本発明のそのようなチオレドキシンの単一システイン活性部位は好ましくはアミノ酸配列C−G−P−X(配列番号18)を含み、その際、ネイティブの又は野生型の配列はアミノ酸配列C−G−P−C(配列番号1)を含む。チオレドキシンの単一システイン活性部位はさらにアミノ酸配列X−C−X−X−X−X(配列番号19)を含むことができ、その際、ネイティブの又は野生型の配列はアミノ酸配列X−C−X−X−C−X(配列番号20)を含む。好ましくは、本発明のチオレドキシンの単一システイン活性部位はアミノ酸配列X−C−G−P−X−X(配列番号21)を含み、その際、「G」と示されるそのようなアミノ酸残基はグリシン残基であり、「P」と示されるそのようなアミノ酸残基はプロリン残基であり、ネイティブの又は野生型の配列はアミノ酸配列X−C−G−P−C−X(配列番号22)を含む。さらに好ましくは本発明のチオレドキシンの単一システイン活性部位はアミノ酸配列W−C−G−P−X−K(配列番号23)を含み、その際、「W」と示されるそのようなアミノ酸残基はトリプトファン残基であり、「K」と示されるそのようなアミノ酸残基はリジン残基であり、ネイティブの配列はアミノ酸残基W−C−G−P−C−K(配列番号3)を含む。好ましくは、チオレドキシンの単一システイン活性部位はアミノ酸配列C−X−X−S(配列番号24)を含むことができる。本発明のそのようなチオレドキシンの単一システイン活性部位は好ましくはアミノ酸配列C−G−P−S(配列番号1)を含む。チオレドキシンの単一システイン活性部位はさらにX−C−X−X−S−X(配列番号25)、X−C−G−P−S−X(配列番号26)又はW−C−G−P−S−K(配列番号27)を含むことができ、その際、「X」と示されるアミノ酸残基はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基であることができる。「チオレドキシン活性部位」への参照には、チオレドキシンの単一システイン活性部位及びネイティブの又は野生型のチオレドキシン活性部位が含まれる。
本発明の態様の1つでは、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質は、構造上及び機能上上述されたようなチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有する完全長のタンパク質又はその断片である。単一システイン活性部位を有する好まれるチオレドキシンタンパク質には、原核細胞のチオレドキシン、酵母のチオレドキシン、植物のチオレドキシン及び哺乳類のチオレドキシンが挙げられ、ヒトのチオレドキシンが特に好まれる。種々の生物に由来するチオレドキシンの核酸配列及びアミノ酸配列は当該技術で周知であり、本発明によって包含されるように意図される。たとえば、配列番号4〜15は、Pseudomonas syringae(配列番号4)、Porphyromonas gingivalis(配列番号5)、Listeria monocytogenes(配列番号6)、Saccharomyces cerevisiae(配列番号7)、Gallus gallus(配列番号8)、Mus musculus(配列番号9)、Rattus norvegicus(配列番号10)、Bos taurus(配列番号11)、Homo sapiens(配列番号12)、Arabidopsis thaliana(配列番号13)、Zea mays(配列番号14)、及びOryza sativa(配列番号:15)に由来するチオレドキシンのアミノ酸配列を表す。これらの配列のそれぞれを参照して、X−C−G−P−C−X(配列番号:22)モチーフ(配列番号1のCGPCモチーフを含む)は以下のように見いだすことができる:配列番号4(33〜38位)、配列番号5(28〜33位)、配列番号6(27〜32位)、配列番号7(29〜34位)、配列番号8(31〜36位)、配列番号9(31〜36位)、配列番号10(31〜36位)、配列番号11(31〜36位)、配列番号12(31〜36位)、配列番号13(59〜64位)、配列番号14(88〜93位)及び配列番号15(94〜99位)。さらに、ヒト及び細菌のチオレドキシンを含めて幾つかのチオレドキシンタンパク質の三次元構造が分解されている。従って、複数の生物に由来するチオレドキシンの構造及び活性部位が当該技術で周知であり、当業者は、本発明で使用することができる単一システイン活性部位を有するチオレドキシンを含む完全長のチオレドキシンの断片又はホモログを容易に同定し、作製することができる。
語句「還元状態で」は具体的には本発明のタンパク質又はペプチドの活性部位におけるシステイン残基の状態を記載する。還元状態では、隣接するシステイン残基はジチオール(すなわち、2つの遊離のスルフヒドリル基、−SH)を形成する。それにひきかえ、酸化された形態では、そのようなシステイン残基は分子内ジスルフィド結合を形成し;そのような分子をシスチンと呼ぶことができる。還元された状態では、単一システインのチオレドキシン活性部位はその活性部位チオールのジスルフィドへの可逆的な酸化を介してレドックス反応に関与することが可能であり、標的ジスルフィドのCysの一方への共有結合を生じるチオール/ジスルフィド交換反応を触媒する。チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有する本発明のタンパク質又はペプチドについては、活性部位のN末端システインは還元された状態にあるので、標的タンパク質上のシステインと安定な混合ジスルフィドを形成することができる。
本明細書で使用されるとき、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有する本発明のタンパク質は、それ自体チオレドキシンの単一システイン活性部位であることができ、又はグリコシド結合によって他のアミノ酸に連結されたチオレドキシンの単一システイン活性部位であることができる。従って、本発明のタンパク質又はペプチドの最少サイズは長さ約4〜約6のアミノ酸であり、好まれるサイズは、そのようなタンパク質の完全長、融合、多価又は単に機能的な部分が所望であるかどうかに依存する。好ましくは、本発明のタンパク質又はペプチドの長さは約4から約100以上のアミノ酸残基に伸び、全整数(すなわち、4、5、6、7・・・99、100、101・・・)における中間の長さのペプチドが具体的に想定される。それは、Bachnoffら,Free Radical Biol.Med.50:1355−67,2011によって記載されたようにN末端及びC末端で遮断された短いチオレドキシン模倣ペプチドでもあり得る。さらに好まれる実施形態では、本発明のタンパク質は完全長のタンパク質又はそのようなタンパク質のホモログであることができる。本明細書で使用されるとき、用語「ホモログ」は、天然に存在するタンパク質又はペプチド(すなわち、「原型」又は「野生型」のタンパク質)に対する修飾によって天然に存在するタンパク質又はペプチドとは異なるが、天然に存在する形態の基本的なタンパク質及び側鎖の構造を維持し、及び/又はネイティブのタンパク質の少なくとも生物学的に活性のある部分(たとえば、チオレドキシン活性部位)の基本的な三次元構造を維持するタンパク質又はペプチドを指すのに使用される。そのような変化には、1又は2、3のアミノ酸側鎖における変化;欠失(たとえば、タンパク質又はペプチド(断片の)の切り詰め型)、挿入及び/又は置換を含む1又は2、3のアミノ酸における変化;1又は2、3の原子の化学量論における変化;及び/又はメチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化及び/又はグリコシルホスファチジルイノシトールの付加を含むが、これらに限定されない軽微な誘導体化が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によれば、天然のチオレドキシンタンパク質のホモログを含む本発明で有用なタンパク質又はペプチドは、還元状態で、タンパク質又はペプチドがその活性部位チオールのジスルフィドへの酸化を介してレドックス反応に関与することが可能であり、及び/又は粘液又は喀痰の粘性又は粘着性を低下させ、又は液又は喀痰の液状化を高めることが可能であるようにチオレドキシンの単一システイン活性部位を有する。本明細書で使用されるとき、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドはチオレドキシンに類似する特徴を有し、好ましくは、原核細胞のチオレドキシン、真菌(酵母を含む)のチオレドキシン、植物のチオレドキシン又は哺乳類のチオレドキシンの群から選択されるチオレドキシンである。特に好まれる実施形態では、タンパク質はヒトのチオレドキシンである。
ホモログは天然の対立遺伝子の変異又は天然の突然変異の結果であることができる。タンパク質をコードする核酸の天然に存在する対立遺伝子変異は、そのようなタンパク質をコードする遺伝子とゲノムにて本質的に同じ遺伝子座(遺伝子座(複数))に存在するが、たとえば、突然変異又は組換えによって生じた天然の変異のために、類似するが、同一ではない配列を有する遺伝子である。対立遺伝子変異は通常、それらが比較される遺伝子によってコードされるものに類似する活性を有するタンパク質をコードする。対立遺伝子変異のクラスの1つは、遺伝子コードの縮重のために同じタンパク質をコードするが、異なる核酸配列を有することができる。対立遺伝子変異はまた、遺伝子の5’又は3’の非翻訳領域(たとえば、調節制御領域)にて変化を含むこともできる。対立遺伝子変異は当業者に周知である。
ホモログは、単離された天然に存在するタンパク質への直接的な修飾、直接的なタンパク合成、又は、たとえば、無作為の若しくは標的化された変異誘発を達成する従来の若しくは組換えのDNA法を用いた、タンパク質をコードする核酸配列への修飾を含むが、これらに限定されないタンパク質の製造についての当該技術で既知の技法を用いて製造することができる。
ホモログにおける修飾は、野生型タンパク質と比べたとき、天然に存在するタンパク質に比べてホモログの基本的な生物活性を刺激する、拮抗する、又は実質的に変化させない。一般に、タンパク質の生物活性又は生物学的作用は、生体内にて(すなわち、タンパク質の天然の生理的環境にて)又は試験管内(すなわち、実験室の条件下にて)で測定される又は観察されるとき、タンパク質の天然に存在する形態に帰するタンパク質によって示される又は実施される任意の機能を指す。ホモログ又は模倣体(以下で議論される)のようなタンパク質の修飾体は、天然に存在するタンパク質と同じ生物活性を有するタンパク質を生じてもよく、又は天然に存在するタンパク質と比べて低い若しくは高い生物活性を有するタンパク質を生じてもよい。タンパク質の発現の低下又はタンパク質の活性の低下を生じる修飾は、タンパク質の不活化(完全な又は部分的な)、下方調節、又は低下した作用と呼ばれ得る。同様に、タンパク質発現の上昇又はタンパク質の活性の上昇を生じる修飾は、タンパク質の増幅、過剰生産、活性化、増強、上方調節又は上昇した作用と呼ばれ得る。
一実施形態では、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドは、薬剤設計又は薬剤選択の産物であることができ、当該技術で既知の種々の方法を用いて製造することができる。そのようなタンパク質又はペプチドは模倣体と呼ぶことができる。模倣体は、天然に存在するペプチドの基本構造を模倣する及び/又は天然に存在するペプチドの顕著な生物特性を有することが多いので、模倣体は天然に存在するペプチドの生物作用を模倣することができる任意のペプチド化合物又は非ペプチド化合物を指す。模倣体には、天然に存在するペプチドとの側鎖類似性を有さないことのような原型からの実質的な修飾を有するペプチド(そのような修飾は、たとえば、分解へのその感受性を低下させ得る);抗イディオタイプ抗体及び/又は触媒抗体又はその断片;単離されたタンパク質の非タンパク質様部分(たとえば、炭水化物構造);又は、たとえば、コンビナトリアル化学を介して同定される核酸及び薬剤を含む合成若しくは天然の有機分子を挙げることができるが、これらに限定されない。当該技術で既知の種々の方法を用いてそのような模倣体を設計し、選択し及び/又はさもなければ同定することができる。本発明で有用な模倣体又は他の治療用化合物を設計する又は選択するのに有用な薬剤設計の種々の方法は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるMaulikら,1997,Molecular Biotechnology:Therapeutic Applications and Strategies,Wiley−Liss,Inc.にて開示されている。強力で選択的なレドックス活性が可能であるチオレドキシン模倣体ペプチドはBachnoffら,Free Radical Biol.Med.50:1355−67(2011)によって記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
模倣体は、たとえば、分子多様性戦略(大きな化学的に多様な分子ライブラリの迅速な構築を可能にする関連する戦略の組み合わせ)から、特に化学的ライブラリ若しくはコンビナトリアルライブラリ(すなわち、配列又はサイズで異なるが、類似の構成要素を有する化合物のライブラリ)に由来する天然の若しくは合成の化合物のライブラリから、又は合理的で直接的な若しくは無作為の薬剤設計によって得ることができる。たとえば、Maulikら、上記を参照のこと。
分子多様性戦略では、たとえば、ペプチド、オリゴヌクレオチド、炭水化物及び/又は合成の有機分子から、生物学的な、酵素的な及び/又は化学的なアプローチを用いて大きな化合物のライブラリが合成される。分子多様性戦略を展開することにおける重要なパラメータにはサブユニットの多様性、分子サイズ及びライブラリの多様性が挙げられる。そのようなライブラリをスクリーニングすることの一般的な目標は、コンビナトリアル選択の順次適用を利用して所望の標的に対する高親和性リガンドを入手し、次いで無作為の又は指示された設計戦略によってリード分子を最適化することである。分子多様性の方法はMaulikら、同書にて詳細に記載されている。
Maulikらは、たとえば、ユーザーが適宜選択された断片の断片ライブラリから新規の分子を創る工程を指示する指示された設計の方法、ユーザーが遺伝子アルゴリズム又は他のアルゴリズムを用いて断片又はその組み合わせを無作為に変異させる一方で同時に選択基準を提供して候補リガンドの適合性を評価する無作為設計の方法、及びユーザーが三次元受容体構造と小さな断片プローブとの間での相互作用エネルギーを計算し、その後好都合なプローブ部位と一緒に連結する格子に基づくアプローチの方法も開示している。
前述のような多様性創造法は、活性部位模倣体のような、特にサイズを低下させた分子についての機能又は薬理学を改善するように設計された他の技法と組み合わせることができる。たとえば、早期の段階での試験で有望さを示したアプローチの1つは、化学留め具である全炭化水素ステープルの部位特異的導入を介したその生物活性のあるα螺旋の折り畳みにロックされた新規のクラスの合成ミニタンパク質である、炭化水素ステープルα螺旋ペプチドである。ステープルはペプチドの薬理学的な性能を大きく改善し、標的親和性及びタンパク分解耐性を高める一方で、化学合成に好適である大きなタンパク質/酵素の小さなペプチド型を創る(Verdine, G. L. and Hilinsky, G. J., Methods Enzymol, 503:3-33, 2012)。
本発明の一実施形態では、本発明での使用に好適なタンパク質は、本明細書で記載されるようなチオレドキシンの単一システイン活性部位を有するチオレドキシンタンパク質の完全長配列又はその断片を含む、それから本質的に成る、又はそれから成るアミノ酸配列を有する。たとえば、本明細書で記載されるようなチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有する配列番号4〜15のネイティブの配列又はその断片又はその他のホモログのいずれか1つが本発明によって包含される。そのようなホモログは、完全長チオレドキシンタンパク質のアミノ酸配列に対して、全整数(10%、11%、12%…98%、99%、100%)にて10%〜100%の間の任意の比率を含めて、少なくとも10%同一である、又は完全長チオレドキシンタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも20%同一である、又は少なくとも30%同一である、又は少なくとも40%同一である、又は少なくとも50%同一である、又は少なくとも60%同一である、又は少なくとも70%同一である、又は少なくとも80%同一である、又は少なくとも90%同一である、又は95%を超えて同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質を含むことができる。
本明細書で使用されるとき、特に特定されない限り、パーセント(%)同一性に対する参照は、(1)初期設定によって複雑性の低い領域についてクエリ配列がフィルターをかけられる標準の初期設定パラメータと共にアミノ酸検索用のblastpと核酸検索用のblastnを用いたBLAST2.0基本BLAST相同性検索(その全体が参照によって本明細書に組み入れられるAltschul, S.F., Madden, T.L., Schaaffer, A.A., Zhang, J., Zhang, Z., Miller, W. & Lipman, D.J.(1997)“Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs.”Nucleic Acids Res. 25:3389-3402にて記載された)、(2)BLAST2配列比較(以下に記載されるパラメータを用いた)及び/又は(3)初期設定パラメータを伴うPSI−BLAST(位置特異的繰り返しBLAST)を用いて実施される相同性の評価を指す。BLAST2.0基本BLASTとBLAST2の間での標準のパラメータにおける若干の差異のために、BLAST2プログラムを用いて2つの特定の配列が有意な相同性を有すると認識され得るのに対して、一方の配列をクエリ配列として用いたBLAST2.0基本BLASTで行った検索は最高の一致で第2の配列を同定し得ないことが言及される。加えて、PSI−BLASTは、配列相同性を探す感度の高い方法である「プロファイル」検索の自動化された簡便型を提供する。プログラムは先ずギャップのあるBLASTデータベースの検索を実施する。PSI−BLASTプログラムは、位置特異的なスコアマトリクスを構築するために戻される十分な配列比較に由来する情報を使用し、それはデータベース検索の次回のためにクエリ配列を置き換える。従って、パーセント同一性はこれらのプログラムのいずれか1つを用いて決定することができることが理解されるべきである。
2つの特定の配列は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるTatusova及びMadden,(1999),“Blast 2 sequences−a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”,FEMS Microbiol Lett.174:247−250にて記載されたようにBLAST2配列を用いて互いに並べることができる。BLAST2配列比較は、BLAST2.0アルゴリズムを用いてblastp及びblastnにて実施されて2つの配列間でギャップのあるBLAST検索(BLAST2.0)を行い、得られる配列比較にてギャップ(欠失及び挿入)の導入を可能にする。本明細書での明瞭性の目的で、以下のような標準の初期設定パラメータを用いてBLAST2配列比較を行う。
0 BLOSUM62マトリクスを用いるblastnについては
マッチのための報酬=1
ミスマッチのためのペナルティ=2
開放ギャップ(5)及び伸長ギャップ(2)のペナルティ
ワードサイズ(11)のフィルター(オン)を除いて(10)ギャップ×_ドロップオフ(50)
0 BLOSUM62マトリクスを用いるblastpについては
開放ギャップ(11)及び伸長ギャップ(1)のペナルティ
ワードサイズ(3)のフィルター(オン)を除いて(10)ギャップ×_ドロップオフ(50)
本発明で有用なタンパク質は、単一システイン活性部位を含有する完全長チオレドキシンタンパク質の少なくとも10の隣接するアミノ酸残基(配列番号4〜15によって表されるネイティブの配列、すなわち、参照配列の10の隣接するアミノ酸と100%同一性を有する10の隣接するアミノ酸残基)を含むアミノ酸配列を有するタンパク質を含むこともできる。他の実施形態では、チオレドキシンタンパク質のホモログは、単一システイン活性部位を含む全整数(10、11、12…)における任意の介在長さを含む、タンパク質の完全長までの、天然に存在するチオレドキシンタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも15、又は少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30、又は少なくとも35、又は少なくとも40、又は少なくとも45、又は少なくとも50、又は少なくとも55、又は少なくとも60、又は少なくとも65、又は少なくとも70、又は少なくとも75、又は少なくとも80の隣接するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含む。
本発明によれば、本明細書で記載される配列に関して用語「隣接する」又は「連続する」は切れ目のない配列にて接続されることを意味する。第2の配列の30の隣接する(又は連続する)アミノ酸を含む第1の配列については、第1の配列が、第2の配列における30アミノ酸残基の切れ目のない配列に対して100%同一である30アミノ酸残基の切れ目のない配列を含むことを意味する。同様に、第2の配列と100%同一性を有する第1の配列については、第1の配列がヌクレオチド又は核酸の間でギャップなしで第2の配列に正確に一致することを意味する。
別の実施形態では、本発明で有用なタンパク質は、ホモログをコードする核酸配列が、適度に、高度に又は非常に高度にストリンジェントな条件下(以下に記載される)で天然のチオレドキシンタンパク質をコードする核酸と(すなわち、に)ハイブリッド形成することが可能である(すなわち、天然のチオレドキシンのアミノ酸配列をコードする核酸鎖の相補体)、天然のチオレドキシンのアミノ酸配列に十分に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。そのようなハイブリッド形成の条件は以下で詳細に記載される。
本発明のチオレドキシンタンパク質をコードする核酸配列の核酸配列相補体は、チオレドキシンをコードする鎖に対して相補性である核酸鎖の核酸配列を指す。所与のアミノ酸配列をコードする二本鎖DNAは一本鎖DNAとその一本鎖DNAに対して相補体である配列を有する相補性の鎖とを含む。そのようなものとして本発明の核酸分子は、二本鎖又は一本鎖のいずれかであることができ、ストリンジェントな条件下でチオレドキシンタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸配列と安定なハイブリッドを形成する、及び/又はそのようなアミノ酸配列をコードする核酸配列の相補体と安定なハイブリッドを形成する核酸分子を含むことができる。相補性の配列を推定する方法は当業者に既知である。
本明細書で使用されるとき、ハイブリッド形成の条件に対する参照は、核酸分子を使用して類似の核酸分子を同定する標準のハイブリッド形成の条件を指す。そのような標準の条件は、たとえば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Labs Press,1989.Sambrookら,同書,にて開示されており、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる(特に9.31−9.62ページを参照のこと)。加えて、種々の程度のミスマッチのヌクレオチドを許容するハイブリッド形成を達成するための適当なハイブリッド形成及び洗浄の条件を算出する式は、たとえば、Meinkothら,1984,Anal.Biochem.138,267−284;Meinkothら,同書にて開示されており、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
さらに詳しくは、適度にストリンジェントなハイブリッド形成と洗浄の条件は、本明細書で参照される場合、ハイブリッド形成反応で探査するのに使用される核酸分子と少なくとも約70%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能にする条件(すなわち、ヌクレオチドの約30%以下のミスマッチを可能にする条件)を指す。高度にストリンジェントなハイブリッド形成と洗浄の条件は、本明細書で参照される場合、ハイブリッド形成反応で探査するのに使用される核酸分子と少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能にする条件(すなわち、ヌクレオチドの約20%以下のミスマッチを可能にする条件)を指す。非常に高度にストリンジェントなハイブリッド形成と洗浄の条件は、本明細書で参照される場合、ハイブリッド形成反応で探査するのに使用される核酸分子と少なくとも約90%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能にする条件(すなわち、ヌクレオチドの約10%以下のミスマッチを可能にする条件)を指す。上記で議論されるように、当業者はMeinkothら、同書における式を使用して適当なハイブリッド形成及び洗浄の条件を算出し、特定のレベルのヌクレオチドのミスマッチを達成することができる。そのような条件はDNA:RNAのハイブリッド又はDNA:DNAのハイブリッドが形成されるかどうかに応じて変化する。DNA:DNAのハイブリッドについて計算された融解温度はDNA:RNAのハイブリッドについてよりも10℃低い。特定の実施形態では、DNA:DNAのハイブリッドのためのストリンジェントなハイブリッド形成条件には、適当な洗浄条件を伴った、約20℃〜約35℃の間(低いストリンジェント)、さらに好ましくは約28℃〜約40℃の間(さらにストリンジェント)、一層さらに好ましくは約35℃〜約45℃の間(一層さらにストリンジェント)の温度にて6×SSC(0.9MのNa)のイオン強度でのハイブリッド形成が挙げられる。特定の実施形態では、DNA:RNAのハイブリッドのためのストリンジェントなハイブリッド形成条件には、類似のストリンジェントな洗浄条件を伴った、約30〜約45℃の間、さらに好ましくは約38℃〜約50℃の間、一層さらに好ましくは約45℃〜約55℃の間の温度にて6×SSC(0.9MのNa)のイオン強度でのハイブリッド形成が挙げられる。これらの値は、約100ヌクレオチドより大きい、0%ホルムアミド及び約40%のG+C含量の分子についての融解温度の算出に基づく。或いは、TはSambrookら,上記9.31〜9.62ページにて述べられたように経験的に算出することができる。一般に、洗浄条件は出来るだけストリンジェントであるべきであり、選択されるハイブリッド形成条件に適するべきである。たとえば、ハイブリッド形成条件には、塩条件と特定のハイブリッドの算出されたTをおよそ20〜25℃下回る温度条件との組み合わせを含めることができ、洗浄条件には通常、塩条件と特定のハイブリッドの算出されたTをおよそ12〜20℃下回る温度条件との組み合わせが含まれる。DNA:DNAハイブリッドで使用するのに好適なハイブリッド形成条件の一例には、約42℃での6×SSC(50%ホルムアミド)における2〜24時間のハイブリッド形成、その後の約2×SSCにおける室温での1回以上の洗浄を含む洗浄工程、その後の高温及び低イオン強度での追加の洗浄(たとえば、約0.1×〜0.5×SSCにて約37℃での少なくとも1回の洗浄、その後の約0.1×〜0.5×SSCにて約68℃での少なくとも1回の洗浄)が挙げられる。
本発明のタンパク質は、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するセグメントと、種々の機能を有することができる融合セグメントを含む融合タンパク質であることができる。たとえば、そのような融合セグメントは、本発明のタンパク質の精製を簡略化する、たとえば、アフィニティクロマトグラフィを用いた得られる融合タンパク質の精製を可能にするツールとして機能することができる。好適な融合セグメントは所望の機能を有する(たとえば、タンパク質に高い安定性を付与する、タンパク質に高い免疫原性を付与する及び/又はタンパク質の精製を簡略化する)任意のサイズのドメインであることができる。1以上の融合セグメントを使用することは本発明の範囲内である。チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するセグメントのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に融合セグメントを連結することができる。融合タンパク質の融合セグメントと融合タンパク質のチオレドキシンの単一システイン活性含有ドメインとの間の連結は、そのようなタンパク質のチオレドキシンの単一システイン活性含有ドメインの直接的な回収を可能にするために切断に感受性であることができる。融合タンパク質は好ましくは、チオレドキシンの単一システイン活性含有ドメインのカルボキシル末端及び/又はアミノ末端のいずれかに連結された融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸分子で形質転換された組換え細胞を培養することによって産生される。
一実施形態では、本発明の方法と共に使用するのに好適なチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドは、タンパク質が投与されるべきであるものと実質的に類似の動物の種に由来するチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む。別の実施形態では、微生物、植物及び真菌のような多様な供給源に由来するものを含むチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを所与の患者で使用することができる。
本発明の一実施形態では、天然に存在するチオレドキシンタンパク質又は単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンのアミノ酸配列のような本明細書で記載されるアミノ酸配列のいずれかは、特定されるアミノ酸配列のC末端及び/又はN末端のそれぞれに隣接する少なくとも1から約20までの追加の非相同のアミノ酸と共に作出することができる。得られるタンパク質又はポリペプチドは特定されるアミノ酸配列「から本質的に成る」と言うことができる。本発明によれば、非相同のアミノ酸は、それが遺伝子で存在するとき、天然に存在する配列におけるそのようなヌクレオチドが、所与のアミノ酸配列が由来する生物の標準のコドン使用頻度を用いて翻訳されたのであれば、特定されるアミノ酸配列に隣接して天然では見いだされない(すなわち、事実上生体内では見いだされない)、特定されるアミノ酸配列の機能に関係しない、又は特定されるアミノ酸配列をコードする天然に存在する核酸配列に隣接するヌクレオチドによってコードされないアミノ酸の配列である。同様に、語句「から本質的に成る」は、本明細書の核酸配列を参照して使用される場合、特定されるアミノ酸配列をコードする核酸配列の5’及び/又は3’の末端のそれぞれで少なくとも1から約60まで多くの追加の非相同ヌクレオチドによって隣接され得る特定されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。非相同のヌクレオチドは、それが天然の遺伝子に存在すれば、又はタンパク質に追加の機能を付与する又は特定されるアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を変化させるタンパク質をコードしないのであれば、特定されるアミノ酸配列をコードする核酸配列に隣接して天然では見いだされない(すなわち、事実上生体内では見いだされない)。
別の実施形態では、本発明の方法と共に使用するのに好適なチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又ペプチドは単離されたタンパク質又は生物学的に純粋なタンパク質を含む。そのようなものとして「単離された」及び「生物学的に純粋な」はタンパク質が精製されている程度を必ずしも反映しない。本発明の単離されたタンパク質は、たとえば、天然の供給源から得ることができ、組換えDNA法(たとえば、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅、クローニング)を用いて作出することができ、又は化学的に合成することができる。
さらに別の実施形態では、本発明のチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有する化学合成のタンパク質又はペプチドは、ステープルペプチド法によって、環化によって又はN末端若しくはC末端での制約によって制約される活性部位を含有するもののような安定化した型も指し得る。好ましくは、本発明の方法にて使用されるチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質は、粘液若しくは喀痰の液状化における測定可能な若しくは検出可能な上昇(又は粘性又は粘着性の低下)を引き起こすのに十分である、又は患者の粘液若しくは喀痰に関連する患者への測定可能な、検出可能な若しくは認識される治療上の利益を生じるのに十分である生体内での半減期を有する。そのような半減期はそのようなタンパク質の送達の方法によって達成することができる。本発明のタンパク質は好ましくは動物にて約5分を超える、さらに好ましくは動物にて約4時間を超える、一層さらに好ましくは動物にて約16時間を超える半減期を有する。好まれる実施形態では、本発明のタンパク質は動物にて約5分〜約24時間の間、好ましくは動物にて約2時間〜約16時間の間、さらに好ましくは動物にて約4時間〜約12時間の間での半減期を有する。
本発明のさらなる実施形態はチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドをコードする核酸分子を含む。そのような核酸分子を用いて試験管内での又は生体内での本発明の方法に有用であるタンパク質を作出することができる。本発明の核酸分子は、本明細書で前に記載されたタンパク質のいずれかをコードする核酸分子を含む、それから本質的に成る又はそれから成る核酸分子を含む。本発明によれば、単離された核酸分子は、天然環境から取り出されている(すなわち、ヒトの操作に供されている)核酸分子(ポリヌクレオチド)であり、DNA、RNA又はcDNAを含むDNA又はRNAの誘導体を含むことができる。そのようなものとして「単離された」は核酸分子が精製されている程度を反映しない。語句「核酸分子」は主として物理的な核酸分子を指し、語句「核酸配列」は核酸分子におけるヌクレオチドの配列を指すけれども、2つの語句は、特にタンパク質をコードすることが可能である核酸分子又は核酸配列に関して相互交換可能に使用することができる。本発明の単離された核酸分子は天然の供給源から単離することができ、又は組換えDNA法(たとえば、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅、クローニング)又は化学合成を用いて作出することができる。単離された核酸分子には、たとえば、遺伝子、遺伝子の天然の対立遺伝子変異体、コーディング領域又はその一部、及び修飾が、本発明の所望のタンパク質をコードする又はストリンジェントな条件下で天然の遺伝子単離体との安定なハイブリッドを形成する核酸分子の能力を実質的に妨害しないような方法でヌクレオチドの挿入、欠失、置換及び/又は逆位によって修飾されたコーディング領域及び/又は調節領域を挙げることができる。単離された核酸分子は縮重を含むことができる。本明細書で使用されるとき、ヌクレオチドの縮重は1つのアミノ酸が様々なヌクレオチドコドンによってコードされ得る現象を指す。従って、本発明で有用な所与のタンパク質をコードする核酸分子の核酸配列は縮重のために変化することができる。
本発明によれば、遺伝子に対する参照には、天然の(すなわち、野生型の)遺伝子に関連する核酸配列すべてと同様にその遺伝子によってコードされるタンパク質の産生を制御する調節領域(たとえば、転写、翻訳又は翻訳後の制御領域のような、しかし、これらに限定されない)と同様にコーディング配列自体のような、チオレドキシンの単一システイン活性部位に関連するものが含まれる。別の実施形態では、遺伝子は、所与のタンパク質をコードする核酸配列に類似するが、同一ではない配列を含む天然に存在する対立遺伝子変異体であることができる。対立遺伝子変異体は上記で前に記載されている。語句「核酸分子」及び「遺伝子」は核酸分子が上述のように遺伝子を含む場合、相互交換可能に使用することができる。
好ましくは、本発明の単離された核酸分子は組換えDNA法(たとえば、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅、クローニング)又は化学合成を用いて作出される。単離された核酸分子には、天然の核酸分子、及び天然の対立遺伝子変異体及びそのような修飾がタンパク質の生物活性に対して所望の効果を提供するような方法でヌクレオチドが挿入、欠失、置換及び/又は逆位している修飾された核酸分子を含むが、これらに限定されないそのホモログが挙げられる。対立遺伝子変異体及びタンパク質ホモログ(たとえば、核酸ホモログによってコードされたタンパク質)は上記で詳細に議論されている。
核酸分子のホモログは当業者に既知の多数の方法(たとえば、Sambrookら、同書にて記載されたような)を用いて作出することができる。たとえば、核酸分子は、従来の変異誘発法及び組換えDNA法(限定しないで部位特異的変異誘発、化学的処理、制限酵素切断、核酸断片のライゲーション及び/又はPCR増幅を含む)、又はオリゴヌクレオチド混合物の合成及び化学的ライゲーション、又は遺伝子シャッフリング(すなわち、分子育種;たとえば、すべてその全体が参照によって本明細書に組み入れられるU.S. Patent No. 5,605,793 to Stemmer; Minshull and Stemmer, Curr. Opin. Chem. Biol. 3:284-290, 1999; Stemmer, P.N.A.S. USA 91:10747-10751, 1994を参照のこと)の過程によって非常に多数のその組み合わせ含む核酸分子の再分類したライブラリを「形成する」分子群の混合物の試験管内若しくは生体内の組換えによることを含むが、これらに限定されない種々の技法を用いて修飾することができる。当業者に既知のこれらの及び他の類似の技法を用いてタンパク質にて複数の同時変化を効率的に導入することができる。その後、核酸分子のホモログを、所与の遺伝子とのハイブリッド形成によって選択することができ、又はそのような核酸分子によってコードされるタンパク質の機能及び生物活性について発現によって直接スクリーニングすることができる。
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの転写制御配列に操作可能に連結される上述の単離された核酸分子を含む組換え核酸分子に関する。さらに詳しくは、本発明によれば、組換え核酸分子は通常、組換えベクターと本明細書で記載されるような単離された核酸分子を含む。本発明によれば、組換えベクターは、選択の核酸配列を操作するための及び/又はそのような核酸配列を宿主細胞に導入するためのツールとして使用される操作された(すなわち、人工的に作製された)核酸分子である。従って、組換えベクターは、たとえば、選択の核酸配列を発現させること及び/又はそれを宿主細胞に送達して組換え細胞を形成することによって、選択の核酸配列をクローニングすること、配列決定すること及び/又はさもなければ操作することにて使用するのに好適である。ベクターはまた、本発明の核酸配列に隣接して天然に見いだされる又は本発明の核酸分子の発現に有用である(以下で詳細に議論される)調節性の核酸配列(たとえば、プロモータ、非翻訳領域)も含有することができるけれども、そのようなベクターは通常、非相同の核酸配列、すなわち、クローニングされる又は送達される核酸配列に隣接して天然に見いだされない核酸配列を含有する。ベクターは、原核細胞又は真核細胞のRNA又はDNAのいずれかであることができ、通常プラスミドである。本発明のほとんどの適用のためにベクターがゲノムから分離されたままであるならば、それが好まれるが、ベクターは、染色体外要素(たとえば、複製プラスミド)として維持することができ、又は組換え宿主細胞の染色体に統合することができる。ベクター全体は宿主細胞内で又は特定の条件下でそのままの場所にあることができ、プラスミドDNAを欠失させることができ、本発明の核酸分子を残す。統合された核酸分子は、染色体プロモータの制御下、ネイティブの又はプラスミドのプロモータの制御下、又は幾つかのプロモータの組み合わせの制御下にあることができる。単一コピー又は複数コピーの核酸分子を染色体に統合することができる。本発明の組換えベクターは少なくとも1つの選択可能なマーカーを含有することができる。
一実施形態では、本発明の組換え核酸分子で使用される組換えベクターは発現ベクターである。本明細書で使用されるとき、語句「発現ベクター」はコードされた産物(たとえば、当該タンパク質)の産生に好適であるベクターを指すのに使用される。この実施形態では、産生される産物(たとえば、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質)をコードする核酸配列が組換えベクターに挿入されて組換え核酸分子を作出する。産生されるタンパク質をコードする核酸配列が、組換え宿主細胞内で核酸配列の転写及び翻訳を可能にするベクターにて核酸配列を調節配列に操作可能に連結する方法でベクターに挿入される。
本発明の別の実施形態では、組換え核酸分子はウイルスベクターを含む。ウイルスベクターはウイルスのゲノム又はその一部に統合された本発明の単離された核酸分子を含み、核酸分子は、DNAの細胞内への侵入を可能にするウイルス外被にパッケージされる。アルファウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス及びレトロウイルスに基づくものを含むが、これらに限定されない多数のウイルスベクターを使用することができる。
通常、組換え核酸分子は、1以上の発現制御配列に操作可能に連結される本発明の少なくとも1つの核酸分子を含む。本明細書で使用されるとき、「組換え分子」又は「組換え核酸分子」は、発現制御配列に操作可能に連結される核酸分子又は核酸配列を主として指すが、そのような核酸分子が本明細書で議論されるような組換え分子である場合、語句「核酸分子」と相互交換可能に使用することができる。本発明によれば、語句「操作可能に連結される」は、宿主細胞に形質移入された(すなわち、形質転換された、形質導入された、形質移入された、抱合された又は導かれた)場合、分子を発現させることができるような方法で核酸分子を発現制御配列に連結することを指す。転写制御配列は転写の開始、伸長及び終結を制御する発現制御配列である。特に重要な転写制御配列は、たとえば、プロモータ、エンハンサ、オペレータ及びリプレッサの配列のような転写の開始を制御するものである。好適な転写制御配列には、組換え核酸分子が導入されるべきである宿主細胞又は生物にて機能することができる任意の転写制御配列が挙げられる。本発明の組換え核酸分子は、組換え細胞に適合する、たとえば、転写調節配列、複製開始点、及び他の調節配列のような追加の調節配列も含有することができる。一実施形態では、宿主細胞の染色体に統合されるものを含む、本発明の組換え分子はまた、タンパク質を産生する細胞から発現されたタンパク質が分泌されるのを可能にする分泌シグナル(すなわち、シグナルセグメント又はシグナル配列の核酸配列)も含有する。好適なシグナルセグメントには、発現されるタンパク質に自然に会合するシグナルセグメント、又は本発明に係る分泌を指示することが可能である非相同のシグナルセグメントが挙げられる。別の実施形態では、本発明の組換え分子は発現されたタンパク質が送達され、宿主細胞の膜に挿入されるのを可能にするリーダー配列を含む。他のシグナル配列には、細胞周辺質又は細胞外の分泌、又は所望の区画内での保持を指示することが可能であるものが挙げられる。好適なリーダー配列には、タンパク質と自然に会合するリーダー配列、又は細胞の膜へのタンパク質の送達及び挿入を指示することが可能である非相同のリーダー配列が挙げられる。
本発明によれば、用語「形質移入」は外来性の核酸分子(すなわち、組換え核酸分子)を細胞に挿入することができる方法を指すのに使用される。用語「形質転換」は、そのような用語が微生物細胞又は植物への核酸分子の導入を指すのに使用される場合、用語「形質移入」と相互交換可能に使用することができる。微生物の系では、用語「形質転換」は微生物による外来性の核酸の獲得による固有の変化を記載するのに使用され、用語「形質移入」と本質的に同義である。しかしながら、動物細胞では、形質転換は、たとえば、細胞が癌性になった後、培養における細胞の増殖特性の変化を指すことができる(上述)第2の意味を獲得している。従って、混乱を避けるために、動物細胞への外来性の核酸の導入に関して用語「形質移入」が好ましく使用され、用語が細胞への外来性の核酸の導入に関する程度に、一般に動物細胞の形質移入及び植物細胞や微生物細胞の形質転換を包含するように本明細書で使用される。従って、形質移入法には、形質転換、粒子衝撃、エレクトロポレーション、微量注入、リポフェクション、吸着、感染及び原形質体融合が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物が過剰に粘性の粘液又は喀痰の粘性を低下させるために使用される。組成物はチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質を含み、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を低減する/減らすのに、又はそのような粘液又は喀痰の液状化を高めるのに使用することができる他の剤又は化合物のような1以上の追加の剤又は化合物を含み得る。そのような追加の剤又は化合物の例は当該技術で既知であり、それには、精製されたrhDNase、N−アセチルシステイン、ナシステリン(N−アセチル−L−システイン誘導体)、GSH及びゲルソリンが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、マンニトール又は高張食塩水のような粘液活性剤が単一システイン活性部位のチオレドキシンと併用で使用され得る。
一実施形態では、医薬組成物を含む組成物を用いてチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドをコードする核酸を治療される患者の細胞(たとえば、肺又は気道の上皮細胞)に送達することができるので、細胞はタンパク質で形質移入され、タンパク質を発現するようになり、タンパク質は細胞の微小環境にて粘液又は喀痰に接触することができる。
医薬組成物を含む組成物は、患者にタンパク質又は核酸又は他の調節性化合物を送達するために薬学上許容可能な賦形剤及び/又は送達ビヒクルを含む、たとえば、薬学上許容可能なキャリアも含むことができる。さらに、本発明の医薬組成物を含む組成物は、薬学上許容可能なキャリアにて患者に投与することができる。本明細書で使用されるとき、薬学上許容可能なキャリアは、治療用の本発明で有用なタンパク質、核酸又は他の化合物を好適な生体内又は生体外の部位に送達するのに好適な物質を指す。好まれる薬学上許容可能なキャリアは、所望の部位(たとえば、治療される粘液又は喀痰が分泌される又は排出される)でのタンパク質、核酸分子又は化合物の到達の際、粘液又は喀痰に接触することが可能である(タンパク質又は化合物の場合)、又は還元状態で発現されたタンパク質が粘液又は喀痰と接触できるように、細胞に入ること及び細胞によって発現され、分泌されることが可能である(核酸分子の場合)形態でタンパク質、核酸分子又は化合物を維持することが可能である。本発明の好適な賦形剤には、輸送する又は輸送を助けるが、治療剤(タンパク質、核酸、化合物)を細胞、組織又は流体(粘液又は喀痰)に具体的には向けていない賦形剤又は製剤(本明細書では非標的化キャリアとも呼ばれる)が挙げられる。薬学上許容可能な賦形剤の例には、水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス溶液、他の水性の生理的に均衡のとれた溶液、油、エステル及びグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。水性キャリアは、たとえば、化学的な安定性及び等張性を高めることによってレシピエントのおよその生理的条件に必要とされる好適な補助物質も含有することができる。治療剤の吸入のための製剤も界面活性剤分子を含み得る。
好適な補助物質には、たとえば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及びリン酸緩衝液、トリス緩衝液及び重炭酸緩衝液を作製するのに使用される他の物質が挙げられる。補助物質には、たとえば、チメロサール、m−又はo−クレゾール、ホルマリン及びベンゾールアルコールのような保存剤も挙げることができる。本発明の組成物は従来の方法によって滅菌することができ、及び/又は凍結乾燥することができる。
薬学上許容可能なキャリアの型の1つには本発明の組成物を患者にゆっくり放出することが可能である徐放性製剤が挙げられる。本明細書で使用されるとき、徐放性製剤は徐放性ビヒクルにて本発明の1以上の治療剤を含む。好適な徐放性ビヒクルには、生体適合性ポリマー、他のポリマーマトリクス、カプセル、マイクロカプセル、ボーラス製剤、浸透圧ポンプ、拡散装置、リポソーム、リポスフェア及び経皮送達系が挙げられるが、これらに限定されない。そのような徐放性ビヒクルは還元剤を組み入れて、保存及び送達の間に還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位も維持し得る。核酸のための好適な送達ビヒクルには、リポソーム、ウイルスベクター、又はリボザイムを含む他の送達ビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない。
患者に投与するためのチオレドキシンの単一システイン活性部位をを含有するタンパク質又はペプチドの好適な又は有効な量は、活性部位チオールのジスルフィドへの可逆的な酸化を介してレドックス反応に関与し、チオール/ジスルフィド交換反応を触媒し、特に患者にて粘液又は喀痰の粘性又は粘着性を低下させ及び/又は粘液又は喀痰の液状化を高めて、患者に治療利益を提供するのに十分であることが可能である量である。粘液又は喀痰の粘性又は粘着性の低下又はその液状化の上昇は本明細書で前に記載されたように、又は当業者に既知の好適な方法によって測定し、検出し、又は決定することができる。上記で議論したように、そのような測定には、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの好適な又は有効な量に接触させる前後に患者に由来する粘液又は喀痰の試料にて遊離のチオールの比率を測定し、比較すること、と同様に、還元状態でチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの好適な又は有効な量に接触させる前後に患者のFEVレベルを測定し、比較することが挙げられる。
一実施形態では、患者に投与されるチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの好適な又は有効な量は、患者の体重当たり約10マイクロモル/kg、15マイクロモル/kg、20マイクロモル/kg、25マイクロモル/kg、30マイクロモル/kg、35マイクロモル/kg、40マイクロモル/kg、45マイクロモル/kg、50マイクロモル/kg、55マイクロモル/kg、60マイクロモル/kg、65マイクロモル/kg、70マイクロモル/kg、75マイクロモル/kg、80マイクロモル/kg、85マイクロモル/kg、90マイクロモル/kg、95マイクロモル/kg、100マイクロモル/kg、105マイクロモル/kg、110マイクロモル/kg、115マイクロモル/kg、120マイクロモル/kg、125マイクロモル/kg、130マイクロモル/kg、135マイクロモル/kg、140マイクロモル/kg、145マイクロモル/kg、150マイクロモル/kg、175マイクロモル/kg、200マイクロモル/kg、225マイクロモル/kg、250マイクロモル/kg、275マイクロモル/kg、300マイクロモル/kg、325マイクロモル/kg、350マイクロモル/kg、375マイクロモル/kg、400マイクロモル/kg、425マイクロモル/kg、450マイクロモル/kg、475マイクロモル/kg、500マイクロモル/kg、525マイクロモル/kg、550マイクロモル/kg、575マイクロモル/kg、600マイクロモル/kg、625マイクロモル/kg、650マイクロモル/kg、675マイクロモル/kg、700マイクロモル/kg、725マイクロモル/kg、750マイクロモル/kg、775マイクロモル/kg、800マイクロモル/kg、825マイクロモル/kg、850マイクロモル/kg、875マイクロモル/kg、900マイクロモル/kg、925マイクロモル/kg、950マイクロモル/kg、975マイクロモル/kg、1000マイクロモル/kg、1100マイクロモル/kg、1200マイクロモル/kg、1300マイクロモル/kg、1400マイクロモル/kg、1500マイクロモル/kg、1600マイクロモル/kg、1700マイクロモル/kg、1800マイクロモル/kg、1900マイクロモル/kg、2000マイクロモル/kg、2100マイクロモル/kg、2200マイクロモル/kg、2300マイクロモル/kg、2400マイクロモル/kg又は約2500マイクロモル/kgの間を含む。
別の実施形態では、送達の経路が肺へのエアゾール送達又は類似の経路であるならば、患者に投与されるチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの量は投薬単位(たとえば、ヒトの投薬単位は通常約2〜3mlである)当たり約0.25mg〜投薬単位当たり約100mgの間を含む。好ましくは、患者に投与されるチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの量は、投薬単位当たり約0.25mg、0.50mg、1.0mg、5.0mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg又は約100mgを含む。エアゾール送達に使用される装置に応じて、一部のエアゾール送達装置は肺に実際に送達されるエアゾールの容積の約10%を可能にするにすぎない。しかしながら、送達装置が振動メッシュ式ネブライザであるならば、エアゾールの容積の約90%を送達することができる。電子振動メッシュ式ネブライザははるかに速く薬剤を送達することが可能であり、CF患者によって大いに好まれるさらに小型の携帯用の装置である(Geller, D.E., Pediatric Pulmonology, 43(S9):S5-S17, 2008)。振動メッシュ式ネブライザはエアジェットネブライザに対比して残留用量の少ない薬剤の送達ではさらに効率的でもある。このことは、治療上の利益を達成するのに必要とされるのがさらに少ない量なので治療コストを下げるのに特に重要である。これらのような装置はタンパク質の生物活性の低下も生じない(Kesser, K.C., et al. Resp Care, 54(6):754-768, 2009; Scherer, T., et al. J Pharm Sci, 100(1):98-109, 2011)。従って、部位に送達される組成物の容積がさらに大きい投与の他の経路については、チオレドキシン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの低用量が使用され得ることが容易に見られるであろう。
動物に投与される本発明のタンパク質の最適な量は投与の経路に応じて変化するであろう。たとえば、タンパク質が吸入(エアゾール)経路で投与されるならば、投与される最適な量は気管内微量スプレーによって投与される最適な量とは異なり得る。そのような投与経路に応じて量を変えることは当業者の能力の範囲内である。本発明のタンパク質の好適な量は動物にとって毒性ではなく所望の機能を有する量であることを言及するのは重要である。投与の他の経路には、特に消化管粘膜の治療のための経口投与、又は生殖器粘膜の治療のための局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態では、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含むタンパク質を含有する本発明の医薬組成物を含む組成物は、還元剤を用いた当初の還元に続いて還元状態でチオレドキシン活性部位を維持する1以上の剤と共にさらに製剤化される。本発明で使用されるそのような還元剤には、ジチオスレイトール(DTT)、リポ酸、NADH−又はNADPH−依存性のチオレドキシン還元酵素、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、還元グルタチオン、ジチオグリコール酸、2−メルカプトエタノール、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフェン、N−アセチルシステイン、NADPH、NADH及び他の生物学的な又は化学的な還元剤が挙げられるが、これらに限定されない。
上記で議論したように、本発明の医薬組成物を含む組成物は、組成物、及び特に組成物におけるチオレドキシンの単一システイン活性部位及び/又は他の化合物を含むタンパク質を標的部位(たとえば、タンパク質及び化合物で治療される粘液又は喀痰、組換え核酸分子で治療される粘液又は喀痰の環境にあるであろう又は環境にある標的宿主細胞)に送達するのに有効な方法で患者に投与される。好適な投与プロトコールには生体内又は生体外の投与プロトコールが挙げられる。
本発明によれば、有効な投与プロトコール(すなわち、本発明の組成物を有効な方法で投与すること)は、好ましくは患者がそのような投与から測定可能な、目に見える又は認識される利益を得るように、組成物にてチオレドキシンの単一システイン活性部位及び/又は他の化合物を含有するタンパク質の治療される粘液又は喀痰との接触を生じる好適な用量パラメータ及び投与の方式を含む。一部の状況では、患者から粘液又は喀痰を試料採取することによって、粘液又は喀痰の粘性又は液状化の評価のために本明細書で記載される方法を用いて有効用量のパラメータを決定することができる。或いは、試験管内の試料、生体内での動物モデル、及び患者がヒトであれば最終的には臨床試験を用いた実験によって有効用量のパラメータを決定することができる。有効用量のパラメータは、特定の疾患又は状態のための当該技術で標準の方法を用いて決定することができる。そのような方法には、たとえば、生存率の判定、副作用(すなわち、毒性)及び疾患の進行又は退行、と同様に、たとえば、1秒間での努力呼気肺活量(FEV1)のような関連する生理的パラメータが含まれる。
本発明によれば、患者に本発明の組成物を投与する好適な方法には、患者への所望の部位に組成物を送達するのに好適である生体内投与の経路が含まれる。投与の好まれる経路は、化合物がタンパク質又は他の化合物(たとえば、薬剤)であるかどうか、体のどの部分に組成物が投与されるべきか、患者によって経験される疾患又は状態に応じて当業者に明らかであろう。一般に、単一システイン活性部位のチオレドキシンの生体内投与の好適な方法には、皮膚送達、気管内投与、吸入(たとえば、エアゾール)、鼻内投与、経口投与、肺投与、及びカテーテルの含浸が挙げられるが、これらに限定されない。耳への送達には、点耳剤を挙げることができ、鼻内送達には点鼻剤又は鼻内注射を挙げることができ、眼内送達には、点眼剤又は強膜を横切る薬剤の通過のための好適な装置の使用を挙げることができる。当該技術で標準の方法を用いてエアゾール(吸入)送達も行うことができる(その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、たとえば、Stribling et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 189:11277-11281, 1992を参照)。経口送達には、たとえば、錠剤又はカプセルのような、口を介して服用することができる、と同様に、飲食製品又は動物餌又は餌ペレットに製剤化される固体及び液体が含まれ得る。粘膜組織で有用である投与の他の経路には、気管支、経鼻、他の吸入、直腸、局所、経皮、膣、経頚部、頚部周辺及び尿道の経路が挙げられる。加えて、投与プロトコールには、不妊のような適用での使用のための隔膜におけるタンパク質、ペプチド又は組成物の適用のような予備治療装置が含まれ得る。本発明の好まれる実施形態では、本発明のタンパク質又は組成物を投与して気道(気道)における過剰に又は異常に粘性又は粘着性の喀痰又は粘液を治療する場合、チオレドキシンの単一システイン活性部位又は他の化合物を含有するタンパク質又はペプチド(又は組成物)は吸入(すなわち、たとえば、界面活性剤にて又はそれと共にエアゾールを吸入することによって);気管支鏡、気管支内チューブ及び/又は人工的な換気装置を介した肺への直接導入;鼻適用(鼻内又は経鼻)、気管支又は気管内(すなわち、気管又は気管開口への直接注入によって)に直接又は液体カプセル化若しくは界面活性剤を介した経路を含むが、これらに限定されない経路によって投与される。それがその中の粘液又は喀痰に接触できるように気道の中に組成物又はタンパク質を導入する任意の考えられる方法が本発明によって包含される。
本発明の方法では、医薬組成物を含む組成物を、霊長類、齧歯類、家畜、ニワトリ、シチメンチョウ、及びペット動物を限定せずに含む獣医学のクラスのメンバーに投与することができる。保護するのに好まれる患者はヒトである。
本発明の別の実施形態は、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物に関するものであり、その際、単一システイン活性部位におけるシステインは粘液タンパク質におけるシステイン残基と共有結合する。粘液タンパク質には、呼吸器粘液タンパク質及び消化管粘液タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。粘液タンパク質には、たとえば、大量にジスルフィド結合したムチンMUC5AC及びMUC5Bのようなムチンが挙げられる。たとえば、粘液タンパク質のジスルフィド結合とのチオール交換反応にてN末端のチオレドキシン活性部位のシステインでの当初の触媒反応に続いて、チオレドキシンのモノシステイン酸を含有するタンパク質又はペプチドはN末端のシステインを介して粘液タンパク質に共有結合することができるので、繰り返される還元及び触媒に不応答である。単一システイン活性部位を含有するチオレドキシンのムチン標的への共有結合は、粘液における金属イオン封鎖によってチオレドキシンの細胞性の取り込み及び内部移行を妨げ、それは細胞内での望まれないチオレドキシンの活性による上皮での取り込み及び的外れな効果を妨げる二重の利益を有する一方で、同時に粘液に関連して消費された薬剤の生体からのクリアランスを促進する。
本発明のさらなる実施形態は、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物を投与することを含む、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を低下させる方法に関するものであり、その際、タンパク質は粘液タンパク質のシステイン残基に共有結合する。態様の1つでは、粘液タンパク質はムチンである。さらに別の態様では、チオレドキシン単一システイン活性部位は還元状態にある。さらに別の態様では、粘液タンパク質は呼吸器の粘液タンパク質又は消化管の粘液タンパク質又は生殖管の粘液タンパク質であることができる。
本発明の別の実施形態は、ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤を含む組成物に患者の粘液又は喀痰を接触させることによって、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を低下させる方法に関する。ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤は、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含むが、これらに限定されない同一分子であることができ、又はそれらは異なる分子であることができる。ジスルフィド結合還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、GSH、ジチオグリコール酸、2−メルカプトエタノール、N−アセチルシステイン、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフェン又は当該技術で既知の薬学上相溶性の還元剤であることができる。システイン遮断剤は、ヨードアセトアミド、ヨード酢酸、又は他のアルキル化剤、又はシステイン特異的な抗体、又は他の親和性をコードするタンパク質又はペプチドの組成物又は抗体模倣体であることができる。システイン遮断剤は、結合が還元される前に粘液タンパク質にてジスルフィド結合にあったシステインに結合する。システイン遮断剤は粘液におけるシステインのチオール基がジスルフィド結合を再形成するのを妨げる。
本発明のさらに別の実施形態は、細胞の取り込みの能力がないチオレドキシン活性部位を有する少なくとも1つの化合物を含む組成物を患者に投与することによって過剰に粘性又は粘着性の粘液を有する患者を治療する方法に関する。化合物はチオレドキシンの単一システイン活性部位を含むタンパク質又はペプチドであることができる。化合物はまた、チオレドキシン部分と細胞表面受容体のリガンド部分を含む融合タンパク質であることもできる。この実施形態では、細胞表面受容体のリガンド部分は細胞表面受容体に結合し、それによって融合タンパク質の細胞取り込みを妨げる。化合物は、チオレドキシン活性部位を含むタンパク質又はペプチドと、配列番号12のシステイン35に相当するシステインについて遮断する化合物との組み合わせであることができる。好まれる実施形態では、遮断する化合物は、チオレドキシン分子に結合するので配列番号12の35位のシステインを遮断する抗体又は抗体模倣体であることができる。この点で用語「遮断する」は、配列番号12の35位のシステインの能力を妨害して、たとえば、配列番号12の32位のシステインと分子内ジスルフィド結合を形成することを指す。
本発明のさらなる実施形態は、患者にて薬剤物質への全身性の暴露を防ぐ方法に関する。方法には、肺、経口又は局所の送達経路を含むが、これらに限定されない送達経路によって薬剤を患者に投与する工程が含まれる。薬剤はいったん投与されるとその標的部位との共有結合を形成することができる。作用のこのメカニズムは、分子の受容体への可逆的な結合によってリガンドが受容体に結合する分子の相互作用によって多数の薬剤が作用するような作用の既知の薬剤のメカニズムとは異なる。好まれる実施形態では、薬剤物質は、チオール基がその標的部位で別のチオール基との共有結合を形成するチオール含有薬剤である。たとえば、薬剤は還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチド含む。さらに別の好まれる実施形態では、標的部位は細胞外であり、薬剤は細胞外の送達経路によって投与される。
本発明のさらに別の実施形態は、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチド含み、さらにレドックス活性のあるチオール基を安定化することが可能である少なくとも1つのサッカリド又はサッカリド誘導体を含む医薬組成物に関する。サッカリド又はサッカリド誘導体は、スクロース、スクラロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、ラフィノース、マンノース又はマンニトールであることができる。レドックス活性のあるチオール基によって、還元状態(−SH)又は酸化状態(−S−S−)のいずれかで存在するチオール基を意味する。用語「安定化すること」には、たとえば、ポリペプチドがサッカリド又はサッカリド誘導体を伴う医薬組成物に存在する場合、サッカリド又はサッカリド誘導体を含めない組成物に比べて還元状態でのレドックス活性のあるチオール基の酸化の速度を低下させることが含まれる。「サッカリド」によって単糖類、二糖類、オリゴ糖類又は多糖類を意味する。サッカリドの例は、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、ガラクトース、ラフィノース、イヌリン、デキストラントレハロース、スクラロース、マンノース及びマンニトールである。サッカリド誘導体によって、それが由来するサッカリドに構造上類似する化合物を意味する。たとえば、塩素化されたスクロースであるスクラロースはスクロースのサッカリド誘導体であると見なされる。さらなる誘導体には、たとえば、アルジトール誘導体、たとえばマンニトール及びキシリトールが挙げられる。本発明の好まれる組成物は非還元型のサッカリド、たとえば、ラフィノース、トレハロース、スタキオース、及び特にスクロースを含む。
本発明の別の実施形態は、還元状態でのチオレドキシンの単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む動物飼料組成物に関する。動物餌の例には、干し草、藁、貯蔵牧草、圧縮され、ペレット化された餌、油及び混合飼料、発芽穀類、マメ科植物、作物残留物、穀類、穀類作物及びトウモロコシが挙げられるが、これらに限定されない。
以下の実施例は説明の目的で提供されるのであって、本発明の範囲を限定することは意図されない。
実施例
実施例1
この実施例は、野生型Trx(本明細書では「rhTrx」とも呼ばれる)及び単一システイン活性部位のrhTrx(本明細書では「r(Cys)hTrx」とも呼ばれる)のタンパク質の発現及び精製を実証する。rhTrx及びr(Cys)hTrxのタンパク質発現レベル及び翻訳後発現の忠実性は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるHarrisら,Biotechnol.Biogen.109:1987−97(2012)によって記載されたようなヒトTrx−1のDNA配列のコドン最適化によって最大化された。大腸菌での産生にための合成構築物の好適なベクターへのクローニングを行い、野生型及び単一システイン活性部位r(Cys)hTrx変異体のタンパク質がμg規模で産生されるのを可能にした。幾つかの発現タグ及び精製戦略を、内毒素及び内在性の宿主チオレドキシンからの精製を円滑にする親和性切断とともに実験室規模で評価した。
大腸菌におけるrhTrx及びr(Cys)hTrxの調製
開始因子メチオニンを含む105アミノ酸の成熟rhTrxタンパク質をコードするrhTrx遺伝子を大腸菌での発現のために最適化し、合成した(DNA2.0、Inc)。誘導性T7プロモータ、カナマイシン耐性マーカー、Ni親和性精製のための6−ヒスチジンタグ及びタバコetchウイルスプロテアーゼ切断部位(TEV)を含有するpEVベクターに遺伝子をサブクローニングした。rhTrxを発現させるために、rhTrxpEVプラスミド(配列決定で検証した)でC43大腸菌(Lucigen)を形質転換し、約0.6(600nm)の光学密度に増殖させ、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導した。ホモジナイズ及び界面活性剤溶解とその後の遠心分離を用いてタンパク質を大腸菌から抽出した。Ni親和性クロマトグラフィを用いて大腸菌溶解物からrhTrxを精製した。Ni親和性精製したrhTrxをプロテアーゼ切断(TEV)してニッケル親和性タグを取り除き、イオン交換クロマトグラフィ及び逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いてさらに精製した。タンパク質の純度はSDS−PAGE及びイオンスプレー質量分光分析法(LC/MS/MS)によって評価し、タンパク質の配列はrhTrxのトリプシン切断とその後のイオントラップ質量分光分析法によって検証した。タンパク質の濃度及び内毒素の濃度はそれぞれ、ビシンコニン酸アッセイ(Pierce)及びLimulus Amoebacyteアッセイ(Charles River Lab.)によって決定した。r(Cys)hTrxタンパク質は類似の方法に従って調製したが、r(Cys)hTrx遺伝子はDNA2.0によって最適化し、合成した。その後透析と脱塩カラム処理によって取り除かれたDTTを用いてこれらrhTrx及びr(Cys)hTrxタンパク質を試験管内で還元した。
実施例2
親和性結合法ではなく成熟タンパク質の直接発現を利用したネイティブのrhTrx及び単一システイン活性部位r(Cys)hTrxタンパク質のための好まれる発現、精製及び還元(活性化)の戦略をこの実施例で記載する。一般的な構成性又は誘導性のプロモータ系の範囲で細菌発酵の常法を用いて、大腸菌BL21及びK12に由来する宿主の振盪フラスコ回分培養及び流加発酵にてr(Cys)hTrx及びネイティブのTrx対照タンパク質を産生させたが、糖誘導性又はIPTG誘導性の系が、最高の発現株を生じるので好まれた。微量流体流動装置による細胞の粉砕に続いて、可溶性のTrxを含有する上清を遠心分離によって回収し、硫酸アンモニウム(AS)で処理して宿主細胞のタンパク質を優先的に沈殿させた。15mMのHEPES、10mMのβ−メルカプトエタノール(β−ME)、250mMのNaClへの緩衝液交換のために限外濾過/透析濾過(UF/DF)を用いて、得られたTrxを濃縮した上清を濾過した。この緩衝液では、TrxはQ-SepharoseHPアニオン交換クロマトグラフィ(AEC)樹脂には結合しないのに対してDNA及び他の不純物は高親和性で結合する。高塩AECに続いて、Trx濃縮の通過分画を、還元条件下(10mMのDTT)のHi−TrapQ−HPカラム(GE Healthcare)上での第2のAEC工程ために低塩緩衝液に交換し、その後、製剤化緩衝液(以下で記載する)に緩衝液交換した。或いは、AS沈殿の後、可溶性分画を30kDのカットオフで濾過し、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)カラムに負荷した。溶出した物質を濃縮し、1KDのUF/DFカセットを用いて緩衝液を交換し、SourceQ(アニオン交換)カラムに負荷した。塩勾配を用いてイオン交換カラムからチオレドキシンタンパク質を溶出し、次いで保存緩衝液に交換する追加のUF/DF工程を行った。
Limulus Amoebacyte溶解キット(LAL,Pierce)を用いて内毒素を定量し、0.2ミクロンのMustang E−filter(Pall)を用いて残留内毒素を取り除いた。適当な工程にてSDS−PAGEとウエスタンブロット/ELISAによってタンパク質の同一性及び収率を判定し、総質量及び最終的な配列同一性はMALDI及び電子スプレー質量分光分析によって検証した。Trx製剤の還元活性は、DTNB(Ellmanの試薬)還元アッセイを用いて定量した。2.5mMのrhTrx又はr(CYs)hTrxを96穴プレートに加え、その後175μlの試料緩衝液と25μlの6mMのDTNB(5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を加えた。DTNBの添加によって反応を開始させた後、DTNBの還元による412nmでの吸光度の変化を30℃にて15分間分光光度計で測定した。
以下で議論されるもののような様々な保存緩衝液条件を凍結乾燥との適合性及びr(CYs)hTrxの還元状態を安定化させる能力に使用する。緩衝液条件には、還元糖による低いpH、10mMのβ−MEを伴った酢酸アンモニウムpH5.5、と同様に還元されたネイティブのTrxの保存安定性を高めると以前同定された緩衝液製剤(40mMの酢酸Na、pH5.5、0.05%のEDTA、9.25%のスクロース)が含まれる。Trxを伴った各緩衝液状態を凍結乾燥し、乾燥形態で種々の時間保存し、以前記載されたようなNTNB及びタンパク質活性のアッセイを用いて保存したタンパク質のレドックス安定性を評価した。エアゾール安定性の評価については、Penn−Century噴霧器又はネブライザを使用し得る。インキュベートの様々な時点で、DTNBを含有する0.1Mのトリス緩衝液、pH8.0、1mMのEDTAにエアゾール化合物を回収し、r(Cys)hTrx及びネイティブのrhTrxのエアゾール安定性を測定した。凝集体がDTNBと反応するとは予想されないので、還元状態のみが検出されるであろう。DTNBの減衰係数(412nmで14150)を使用して、回収されたタンパク質の濃度の関数としての遊離のチオール(SH)基を算出する。ネイティブのrhTrxの気管内(IT)送達の以前の試験は正常な生理食塩水を使用した(Rancourt, R. et al., Free Radic Biol Med, 42(9):1441-1453, 2007)。たとえば、メチオニンのような、吸入送達に適合性であることが知られるレドックス安定剤の添加も含まれ得る。
実施例3
この実施例は、r(Cys)hTrx及びネイティブのrhTrxを発現させるための構築及び大腸菌株を明らかにする。r(Cys)hTrx及びネイティブのrhTrx対照は、種々のベクター系及び大腸菌の実験室BL21株又はK12株で可溶性の成熟タンパク質として容易に発現可能である。大腸菌の高い収率(>1g/L)のTrx発現株を作出するために、コドンを最適化したr(Cys)hTrx及びネイティブのrhTrxの配列を合成し、栄養欠乏に基づく誘導系、糖誘導性の系(たとえば、米国特許第7,871,815号のような当該技術で既知のラムノース、キシロース、メリビオース等で誘導性のプロモータ)、又はバクテリオファージT3、T5若しくはT7に由来するプロモータに基づくIPTG誘導性の系を含む様々な細胞内プロモータ系を用いて様々な発現ベクターにクローニングした。DNA配列の確認に続いて、誘導に使用される分子の利用を欠如するように操作された株を含む、又はメチオニンアミノペプチダーゼの過剰発現を誘導して高力価での発現の忠実性を改善し得る様々な一般的に使用されるB21/K12大腸菌宿主株を発現構築物で形質転換した(Liu, M. et al., Protein Expr Purif 84(1):130-139, 2012)。最少限の培地にて30〜37℃で振盪しながら、得られた作出宿主/ベクターの組み合わせを高処理能力形式の深穴マイクロタイタープレートにおける培地にて増殖させ、たとえば、ゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動のような当該技術で一般的に使用される方法を用いて発現についてスクリーニングした。SDS−PAGE及びウエスタンブロット及び/又はELISA/ELISPOTを介して陽性のクローンを確認した。株の流加発酵を行い、タンパク質(r(CYs)hTrx)の収量をSDS−PAGE及びウエスタンブロット及び/又はELISA/ELISPOTによって評価した。タンパク質を精製し、上記実施例1及び2で記載された方法を用いて還元し、活性化されたタンパク質の還元状態をDTNBアッセイによって評価し、特定のジスルフィド結合の還元活性をインスリン還元アッセイによって評価した。翻訳忠実性及び適正な分子量を確認するために配列同一性を質量分光分析法(MALDI又はエレクトロスプレー)によって解析した。
実施例4
この実施例は、野生型及び単一システイン活性部位のrhTrxの試験管内での活性及び機能を明らかにする。rhTrxの活性は、標準の比色DTNBアッセイにてその還元活性を測定することによって、及び好中球のエラスターゼ活性を阻害するその能力を判定することによって評価した。加えて、rhTrxと比べたr(Cys)hTrxのヒトCFの粘液を液状化する能力を、喀痰圧縮アッセイを用いて、及び任意で特殊化した流量計を用いてCF喀痰の粘弾性の低下を調べることによって判定した。rhTrx及びr(Cys)hTrxを看護CF粘液溶解Pulmozyme(rhDNaseI、ドルナーゼα)の標準と比較した。
rhTrxの当初の性状分析:還元活性
予備還元したTrx製剤の一般的な還元活性を以前報告された(Rancourt, R. et al., Free Radic Biol Med, 42(9):1441-1453, 2007)ようなDTNB還元アッセイを用いて定量した。rhTrx及びr(Cys)hTrxの酵素的還元については、5又は50mMのrhTrx及び0.5mMの精製TrxRを含有する50μlのアッセイ緩衝液(100mMのリン酸カリウム、pH7.0、10mMのEDTA及び0.05mg/mlのウシ血清アルブミン)を96穴プレートに加えた。次に720mMのNADPHを含有する175μlの試料緩衝液を加え、その後、試料緩衝液中6mMのDTNBを25μl加えた。化学的に予備還元したrhTrxの還元活性を測定するために、2.5mMのrhTrx50μlを96穴プレートに加え、その後、175μlの試料緩衝液及び25μlの6mMのDTNBを加えた。DTNBの添加によって反応が開始された後、DTNBの還元による412nmでの速度論的吸光度における変化を30℃にて分光光度計でモニターした。同じプロトコールに従って、r(Cys)hTrxをこのアッセイと同様に以下で記載するものに供した。r(Cys)hTrxの総還元活性はrhTrxよりも低く、r(Cys)hTrxに存在する1つ少ない還元されたCysを反映する。しかしながら、双方のタンパク質は潜在的な還元状態の90〜95%超えて還元され、完全な活性化を反映した。
好中球エラスターゼ(NE)活性の阻害
rhTrxのNE活性に対する効果を判定するためのインキュベート方式は以前記載されている(Lee, R., et al. (2005) Am J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 289(5):L875-882)。手短には、Trxをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.2)で所望の濃度に希釈した。混合物を精製したヒトNE(PBS、pH7.2、0.01%TritonX−100のml当たり100μg)に加え、37℃にて1時間インキュベートした。インキュベートの間の最終容量は210μlであり、NEの濃度は1.6μg/mlだった。インキュベートの後、60μlのアリコートをエラスチン分解活性について3つ組で調べた。エラスターゼ活性は、実験試料にPBS(pH7.2)中の0.8mMのN−メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val4−ニトロアニリドを120μl加えることによって測定し、速度論的吸光度を405nmにて37℃で4分間モニターした。これらの実験で使用したエラスターゼの濃度はアッセイの線形範囲内にあると判定された。パーセントNE活性阻害は、パーセント阻害=(1−実験群の吸光度の変化/PBS対照群の吸光度の変化)として判定した。r(Cys)hTrxのエラスターゼ活性はrhTrxに少なくとも匹敵することが見いだされた。
ヒトCF喀痰の液状化を評価するための圧縮アッセイ
操作すべてについて、CF喀痰は微生物フードのもとで取り扱った。関連する濃度でのrhTrx、r(Cys)hTrx又は希釈液のみ(25μl)を1.5mlのエッペンドルフ円錐管におけるCF喀痰(275μl)に加え、非常に短時間のボルテックスで混合した。37℃で30分間インキュベートした後、試料を再び手短に混合し、ヘマトクリット管に負荷して両端を封止した。ヘマトクリット遠心機における5分間の遠心分離の後、直接的な線形測定によってパーセント固体(ゲル)とパーセント液体を判定し、以下:100×液体/(液体+固体)のようにパーセント液体として表した。各条件については、少なくとも5人の異なるCF患者に由来する喀痰を3つ組で測定した。r(Cys)hTrxの液状化能は、rhTrxよりもはるかに大きくなければrhTrxに少なくとも匹敵し、作用のr(Cys)hTrxのメカニズムの予想外の潜在能を反映した。
喀痰の粘弾性の測定
これらの測定は、円錐平板流量計を用いて行うと共にチオレドキシンによる処理に続いて喀痰の流れを直接観察することを介して質的に行う。上述と同じ喀痰の取り扱いプロトコールを用いてインキュベートを行う。37℃での1ラド/秒の角速度を持つ振動モードでAR−1000流量計(TA Instruments, New Castle, DE)を用いて粘弾性を評価する。Trxの各調製物については、喀痰の粘弾性を低下させる能力は少なくとも5人のCF患者から得た喀痰にて3つ組で評価する。r(Cys)hTrxの喀痰の粘弾性を低下させる能力は、rhTrxよりもはるかに大きくなければrhTrxに少なくとも匹敵し、作用のr(Cys)hTrxのメカニズムの予想外の潜在能を反映することが予想される。逆転させたエッペンドルフ管にてrhTrx又はr(Cys)hTrxと混合した喀痰の流れの速度を観察することによる喀痰の粘弾性の測定を行ったが、このアッセイでは、r(Cys)hTrxの流れはrhTrx、DTT及びPulmozymeよりも広範囲であり、本質的に喀痰の流れを示さない陰性(ビヒクル)対照よりもはるかに大きいことが見いだされた。
看護去痰剤(rhDNase)の標準との有効性の比較
これらの試験では、上記のようにインキュベートすることによって関連する濃度のrhTrx、r(Cys)hTrx及びrhDNaseを比較した。30分後、喀痰の液状化(圧縮アッセイ)における変化及び粘弾性の変化について試料を評価した。加えて、相乗効果試験を行った。これらにおいて、喀痰試料をrhTrxに30分間、次いでrhDNaseに30分間暴露し、或いはrhDNaseに30分間、その後rhTrxに30分間に暴露した。これらの結果を各剤単独の効果と比較した。各条件について、少なくとも5人の異なるCF患者に由来する喀痰を3つ組で測定した。野生型及び変異体型のrhTrx変異体についての12試料(rhTrx×3、rhDNase×3、rhTrx+rhDNase×3、rhDNas+rhTrx×3)のそれぞれを調べるために、所与の日に個々のドナーに由来する十分な喀痰が必要だった。実際のところ、これは、単一ドナー/日に由来するよく混合した最少4.5〜5.0mlの喀痰である。r(Cys)hTrxの液状化能は、はるかに大きくなければ、rhDNase、rhDNase、rhTrx又はDTT陽性対照に少なくとも匹敵した。
ヒトCFの喀痰の採取
医療提供者によって決定されたような成人及び小児のCF患者から喀痰を得た。患者は臨床症状を示し、2回の別々のピロカルピンイオン導入発汗試験にて60ミリモルを超える汗中塩化物値を有し、その後の遺伝的解析で2つの対立遺伝子CF生成突然変異を示すのであれば、CFであると診断された。試料はすべて自然発生的な吐出物又は高張食塩水誘導によって提供された。視覚的に検出可能な唾液を含有する喀痰試料は捨てた。喀痰は実験室に送達されるまで氷上に保持され、次いで乾燥を防ぐようにO−リング封止バイアルでの使用まで−80℃で保持した。
実施例5
この実施例は、野生型チオレドキシン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドと比較したときのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドの酵素活性(図1b)及び非酵素活性(図1a)を明らかにする。図1aで説明するように、非特異的な5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸(DTNB又はEllmanの試薬)の還元は野生型に比べてチオレドキシン単一システイン活性部位における還元可能なシステイン1つの喪失を反映する。図1b及び図2で説明するように、チオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドは驚くべきことに、ヒト喀痰圧縮アッセイにて野生型チオレドキシン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドと比較して高い潜在能を示したと共に、DNase又はNACに対比して等モル基準で高い潜在能を示した(図2)。この結果は予想外であり、Cys35の突然変異による活性部位での実質的な修飾が得られ、総還元力は以前のDTNBアッセイにおける還元可能なCys残基1つの喪失のお蔭でネイティブのチオレドキシンの4/5だったという所見が得られた。チオレドキシン単一システイン活性部位の潜在能の驚くべき上昇は、ムチンタンパク質のCys残基への共有結合のために実現されたが、それは、これらのCysが新しいジスルフィド結合を再形成するのを妨げる予想外の結果を有した。
実施例6
この実施例は、ネイティブのrhTrxに比べて、初代培養のヒト気管支上皮細胞(HBE)による炎症誘発性サイトカインの放出を刺激するr(Cys)hTrx(還元された、活性状態での)低下した傾向を明らかにする。ドナーの組織及び細胞は、ヒト対象の権利を保護する認可されたプロトコールの庇護にもとで提供される。正常な(すなわち、病んでいない)肺からのHBE細胞を以前記載された(Fulcher, M.L., Methods Mol Med 107:183-206, 2005)ように酵素消化によって採取する。明確に定義された気道細胞培地(Fulcher, M.L., 2005、同書)にて2.5×10個/cmの密度でほぐしたHBE細胞を直径12mmのTranswellClear支持体(Corning)に播く。使用する前に完全に分化するまで(約4〜6週)、培養物を気液界面で維持する。
チオレドキシン送達プロトコール
この試験では、ナノリットル容量の試験剤(又は対照)をHBE培養物の表面に送達することが可能である用具が利用される。この系は、霧状にした薬物の超微細な噴霧を気道上皮細胞の表面に生体内で送達することを模倣する試験管内モデル系であるように設計され、たとえば、r(Cys)hTrxのような治療剤を加えることの効果を調べる理想的な方法を表す。気道の最初の20生成にわたるPariLCStarネブライザの平均堆積速度を明らかにする多重経路粒子線量測定モデル化(Anjilvel, S., et al. Fundam Appl Toxicol 28(2):41-50, 1995)の結果に基づいて、粒子の大半が送達されると予想される気道の最初の6生成にわたる平均堆積は15分間の経過にわたって約50nl/分/cmであると概算される。これらの試験では、合計5の異なる実験群に対する750nl(15分間にわたって)の総容量での噴霧化が行われる。これらには、(1)ビヒクル対照(等張生理食塩水)、(2)ネイティブの組換えTrx(500μM)及び(3)3用量のr(Cys)hTrx(10μM、250μM及び1000μM)が含まれる。これらの濃度は「最終」気道表面濃度を表す。各試験試薬(又はビヒクル対照)の噴霧化に続いて、培養物を組織培養インキュベータに戻し、サイトカインの分析の前に24時間インキュベートする。
サイトカインの免疫アッセイ
この試験では、IL−6、IL−8、TNF−α及びIL−1βを含む、HBE細胞によって放出される4つの主要なサイトカインの刺激に対するネイティブTrx及びr(Cys)hTrxの効果を評価する。市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(R&D systems)を用いて無細胞の非濃縮培養上清におけるサイトカインを測定する。5群すべての噴霧化の24時間後に基底外側ALI培地の試料(Fulcher, M.L., 2005,同書)を得て、分析前に凍結する。バックグランド対照として、きれいな(未使用の)ALI培地を値すべてから差し引く。各サイトカインの分析については、濃度の30年にわたる陽性対照を用いて適当な検量線を生成する。さらに、各「未知」の試料は2つ組で分析する。測定されるサイトカインは:TNF−α(0.3pg/mlの検出下限)、IL−6(0.35pg/mlの検出下限)、IL−8(2.4pg/mlの検出下限)、及びIL−1β(1.5pg/mlの検出下限)である。これらのアッセイの互いとの及び他の組換えヒトサイトカイン(IL−la、IL−2、IL−3、IL−4、IL−7、腫瘍壊死因子−S、顆粒球コロニー刺激因子、及び形質転換増殖因子−III)との交差反応性はすべて検出限界を下回ることが以前示されている。
試料サイズ及び統計的解析
合計9の個々のHBE培養物で5つの条件のそれぞれを評価する。これは3人の異なる患者(n=3)に由来する3つの培養物(n=3)を表す。そのようなアプローチは十分に統計的な検出力を持って各条件の試料間及び試料内の変動の理解を提供する。データ解析については、個々の試料/群間の比較は、両側スチューデントのt検定を用いて行う。複数の群間の比較については、一元配置分散分析(ANOVA)を使用する。解析すべてについて有意性はp<0.05に設定する。
DF患者ドナーに由来するHBE培養物におけるr(Cys)hTrxの炎症誘発性の評価
ヒトCFの初代気道上皮細胞培養:粘膜繊毛の分化を伴って気液界面でヒト初代気道上皮細胞を増殖させ、培養する最近の技法をSchlegelとその共同研究者ら(Liu, M. et al., Protein Expr Purif. 84(1):130-139, 2012; Suprynowicz, F.A., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 109(49):20035-20040, 2012)によって報告された方法に基づいて採用する。これらの方法は遺伝子操作することなく、ALIで最終分化が依然として可能である初代気道上皮細胞の実際に無制限の供給を可能にする。F508delについてホモ接合体である3人の独特のCFドナーのそれぞれから30日間にわたってALIでの分化まで30ウェルを培養する。3つの濃度(10μM、250μM及び1000μM)のrhTrx(野生型)及びr(Cys)hTrxに先端表面で培養物を暴露し、その後、暴露負荷の4時間後及び24時間後に先端と基底側部の培地試料を回収する(表1を参照)。使用した培地は無血清であり、遠心分離して残渣を取り除き、使用まで−80℃で保存する。先端と基底側部の培地の双方から採取した試料すべてについてヒトの炎症性サイトカインのELISAアッセイを行う。先端の回収物は、先端表面に200μlのPBSを置き、15分間インキュベートした後、回収することによって生じる。IL−8及びIL−6についてのELISAを各試料で2つ組にて行う(Becker, M.N. et al., Am J Resp Crit Care Med 169(5):645-653, 2004)。30のALI培養物を含む上記の計画を3人のCFドナーのそれぞれについて繰り返す。ネイティブrhTrxとr(Cys)hTrxの結果の比較は、CF患者の分化した気道上皮細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を誘導するチオレドキシンの傾向は、調べた濃度ではネイティブに対比して単一システインのTrxで減衰することを明らかにする。

実施例7
この実施例は、試験管内のHBE細胞培養から回収された均一な粘液に対するネイティブrhTrxに対比したr(Cys)hTrxの効果の生物物理学的及び生化学的な性状分析を明らかにする。
細胞培養粘液の調製
ヒトの気管支上皮細胞を記載されたように増殖させ、維持する(Matsui, H., et al., J Clin Invest 102(6):1125-1131, 1998)。手短には、培養物から回収された粘液をプールし、4℃で保存する。試料を透析チューブ(MWCO=3,500)に負荷し、4℃にて1〜5日間、ポリマー吸収剤(Spectra/Gel)によって濃縮する。次いで、濃縮された粘液を500μMのMgClと800μMのCaClを含有するPBSに対して4℃で透析し、適正な塩均衡を確立する(Matsui, H. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103(48):18131-18136, 2006)。
肉眼的レオロジー
円錐平板構造及び並行構造の双方にてBohlin Gemini流量計を用いて濃度及び時間経過のアッセイを行い、試験管内のHBE粘液特性に対する還元されたr(Cys)hTrx及びネイティブのチオレドキシンの粗大な肉眼的な生物物理学的効果を評価する。既知の応力(0.05〜約100Paの間)を処理した又は対照の粘液に10秒間適用し、流体のレオロジー回復をさらに50秒間記録するクリープ回復実験を行う。連続的な実行では、適用される応力は、流体の降伏応力に達する(すなわち、流体の粘性が突然且つ劇的に低下する応力)まで対数的に上昇させる。測定されるパラメータから、流体の粘性及び弾性を適用される応力の関数として決定する。一定応力と一定ひずみの双方で周波数掃引を行い、それを用いて流体の粘性及び剪断菲薄化挙動と同様に粘液のベースライン物性(それぞれG’及びG”)を決定する。実験はすべて23℃で行う。
高圧液体クロマトグラフィ
処理した及び対照の粘液におけるムチンの濃度及び分子質量を示差屈折率測定によって評価し、ムチンの構造に対するネイティブのチオレドキシン及びr(Cys)hTrxの効果を判定する。試料(500μl)をSepharoseS1000カラム(Amersham Pharmacia)に負荷し、0.5ml/分の流速にて200mMの塩化ナトリウム/10mMのEDTAで溶出する。Wyatt/Optilab DSP干渉式屈折計に結合させたインラインDawnEOSレーザー光度計を用いて、それぞれ光散乱及び試料の濃度を測定する(Wyatt Technology Corporation)。カラムの空隙容量で溶出される物質に関連する屈折率ピークを統合し、以前650nmで測定し、5%の範囲内で再現可能であることが見いだされている0.165ml/gの屈折率増分(dn/dc)についての値を採用することによってムチンの濃度を算出する。所与のムチン試料の総タンパク質含量(ムチンと低分子タンパク質)を類似の方法だが、G−25カラム(dn/dc=0.170)によって測定する。試料の非ムチン(又は低分子タンパク質)の含量は、ムチンとタンパク質含量の総質量(G−25カラムを介して試料を溶出することによって測定される)からムチン含量の質量(S−1000カラムを介して試料を溶出することによって測定される)を差し引くことによって決定される。ゲルに基づいた方法、たとえば、還元型又は非還元型のSDS−PAGEとの比較では、示差屈折率測定は、質的比較ではなく正確な分子量及び分子量分布が利用しやすいという点で有利である。これらの技法の定量的な利点は、サイズの基準が存在せず、分子量が1MDaを超えることが多いムチンのような大きな糖タンパク質の研究には特に重要である(Gillis, R.B., et al., Carbohydr Polym 93(1):178-183, 2013)。
炭水化物及びタンパク質のブロッティング
ムチンの微細構造に対するチオレドキシン処理の潜在的な効果をインタクトなHBE粘液におけるタンパク質ブロッティングアッセイを行うことによって評価する。試料の50〜200μlアリコートをニトロセルロース膜に負荷し、真空を5分間適用して負荷した試料全体を膜の中に入れた。蒸留水で試料を2回洗浄した。炭水化物含量の過ヨウ素酸シッフ(PAS)アッセイについては、負荷し、洗浄した試料を0.25%過ヨウ素酸+3%酢酸の水溶液にて30分間インキュベートする。蒸留水での2回の洗浄に続いて、試料をNaMBS溶液(0.1%メタ重硫酸ナトリウム、1%HCl)にて5分間2回インキュベートする。次に、試料をシッフ試薬と共に5〜15分間インキュベートし、NaMBSで2回、蒸留水で1回洗浄し、素早く真空乾燥する。負荷及び最初の蒸留水での洗浄に続いて、TBST緩衝液(1.21%トリスHCl、8.76%NaCl及び0.5%Tween、pH8)中の1%ミルクでタンパク質特異的な抗体のブロットをブロックする。TBSTによる5分間の2回の洗浄の後、試料を一次抗体(MUC5AC、MUC5BIIIにはMAN−5ACI及びMUC5BにはK5B)と共に30分間インキュベートする。さらにTBSTによる5分間の2回の洗浄の後、試料を二次抗体と共に2時間インキュベートする。Li−CorOdyssey赤外線検出器を用いて膜ブロットを展開する。さらに、抗チオレドキシン抗体を用いてムチンに結合したネイティブのチオレドキシンに対比する単一システインのチオレドキシンを検出し得る。PAGEゲル上での分離に続く標準のウエスタン免疫ブロットに比べて、この直接的なブロッティング法はムチン含量のさらに迅速で正確な決定を可能にし、単一システイン活性部位のチオレドキシン(r(Cys)hTrx)とムチンのジスルフィド結合との間での共有結合の相互作用を視覚化し、定量するのを可能にする。
実施例8
この実施例は、ラット及びマウスへの気管内送達に続いて肺にて炎症誘発性及び病態生理学的な効果を誘導するネイティブのrhTrxの傾向を減衰させる単一システイン活性部位のTrx(r(Cys)hTrx)の能力を明らかにする。
r(Cys)hTrx及びrhTrxを気管内投与された正常ラットにおける炎症誘発性サイトカインの放出及び細胞遊走の評価
ネイティブのrhTrxに比べて炎症誘発性のシグナル伝達を誘導するr(Cys)hTrxの能力を測定するために、ビヒクル対照と比較した漸増する濃度のチオレドキシンタンパク質の気管内(IT)送達を利用した比較生体内試験を行う。2つの試験成分は、(1)精製したネイティブのrhTrxで得られた以前の知見(Rancourt, R. et al., Free Radic Biol Med, 42(9):1441-1453, 2007)を再現するように設計される当初の試験と、(2)r(Cys)hTrxの炎症誘発性効果をネイティブのrhTrxと比較する主要な試験である。試験はすべて、DTT又は他の好適な還元剤で処理してTrxの活性部位のCys残基を還元している精製された内毒素を含まないタンパク質を利用する。還元に続いてサイズ排除クロマトグラフィを介してDTT又は還元剤を取り除く。TrxのCys残基の完全な還元を試験管内のアッセイ(DTNB還元)によって検証し、インスリン還元アッセイ又はHPLC標的/結合アッセイを用いてr(Cys)hTrxの触媒的なジスルフィド結合還元活性をアッセイする。
当初の試験:以下:第1群、ビヒクル対照;第2群、酸化された(不活性の)rhTrx;第3群、還元された(活性のある)rhTrx;第4群、ヒト血清アルブミン(HSA、陰性対照)のように投与される群当たり6匹での4つの実験群に24匹のラットを無作為化する。被験物質はすべてIT経路にて1回送達される。この試験の評価項目には、(1)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるTNF、サイトカイン誘導の好中球化学誘引物質−2(CINC−2)及びマクロファージ炎症タンパク質−3(MIP−3)のサイトカイン解析、並びに(2)炎症性細胞の比率(好中球対マクロファージ)を明らかにするWrightの染色による気管支肺胞洗浄(BAL)に由来する細胞計数が挙げられる。第2群(酸化されたrhTrxで処理された)は、ビヒクル対照の第1群及びHSAの第4群と比べて類似のレベルのサイトカインの活性及びBALにおける細胞計数を有する。還元されたrhTrxで処理された第3群は第1群及び第2群と比べて高いレベルのサイトカイン活性及び細胞計数を有する。
主要な試験:r(Cys)hTrxに対比したネイティブのチオレドキシンrhTrxを投与された場合のラットにおけるサイトカイン放出の比較。この比較試験では、r(Cys)hTrxに対比してrhTrxのIT投与に続く生体内のサイトカインの放出と細胞遊走の相対的な程度を測定する。還元されたrhTrx及び還元されたr(Cys)hTrxの3つの用量レベル(50μM、200μM及び1000μM)を調べる。評価項目は予備試験と同じであり、肺組織の免疫組織化学(IHC)の解析が加わる。r(Cys)hTrxでは、C末端の活性部位のシステインモチーフの突然変異(CXXCのCXXXへの変化)が、チオレドキシンの第2のチオール/ジスルフィド交換能を排除し、ジスルフィド結合標的への共有結合を生じることが示されている。IT送達されるTRXが最初に遭遇する肺における最も目立つ細胞外のジスルフィド結合の標的は粘液層及び上皮細胞表面タンパク質に位置する。その結果、ネイティブのTrxに比べて、肺上皮細胞及び関連する粘液へのr(Cys)hTrxの高い結合が生じ、この結合は抗ヒトチオレドキシン抗体を用いたIHCによって検出され得る。肺組織は、BALをせずにIHC解析のために各群からの2匹の動物から採取し、同じ群のそれぞれに由来する2匹のBAL後動物と比較する。従って、各群について8匹の動物を洗浄し、2匹の動物を処理するが、肺採取とIHCに先立ってBALに供さない。r(Cys)hTrxは、同じ用量レベルのrhTrxに比べてサイトカイン活性及び細胞計数を高める能力を用量依存性に減衰させることを示す。
気管内にr(Cys)hTrxを投与された正常ラットにおける毒性及び肺の病理の評価
大げさな投薬条件下でのr(Cys)hTrxをの肺への効果を評価するために、0.5〜20mg/kgのr(Cys)hTrxの様々な単回用量をIT経路で投与し、投薬後2日及び14日で病理変化が生じるかどうかの評価を行う。スプラーグ・ドーリー系のオス及びメスのラットを群当たり20匹(10/性別)の3つの実験群に無作為化する。動物はすべて試験前身体検査を受ける。ビヒクル(生理食塩水製剤)を陰性対照として使用する。この試験の評価項目には、(1)肉眼的な有害変化を探すための臨床検査及び組織病理検査、並びに(2)被験物質及び被験物質に対する抗体の存在を検出するための血清の性状分析が含まれる。単一システインr(Cys)hTrxはネイティブのrhTrxに対比して匹敵する投与量で比較的軽度の効果を生じる。
r(Cys)hTrx及びネイティブのrhTrxを気管内投与した正常マウス及びβENaCマウスにおける炎症誘発性のサイトカインの放出及び細胞遊走の評価
イソフルランでマウスを軽く麻酔し、傾斜した齧歯類用ワークステーションに載せる。拡大ルーペを装着した齧歯類用の咽頭鏡を用いて、咽頭を直接可視化し、微量噴霧器(PennCentury)を遠位気管に通す。固定した容量(25〜50μl)の被験物質溶液を気道に投与し、マウスを回復させる。気道導入及び安楽死の時点での体重を記録する。実験動物委員会(IACUC)が認可したプロトコールに従って、IT導入の6時間後に条件当たり5匹のマウスを、24時間後に別の5匹のマウスを安楽死させる。プロテアーゼ阻害剤(Pierce)を伴った合計1.5mlの冷却した無菌の生理食塩水で気道を洗浄する。肺全体を回収し、検体はすべてさらに処理されるまで氷上に保存される。気管支肺胞洗浄液(BALF)を遠心分離して白血球及び他の細胞残渣を沈殿させる。無細胞BALFはELISA試験が行われるまで−80で凍結する。BAL細胞ペレットを1mlの無菌生理食塩水に再浮遊させ、Coulterのカウンタ及び染色されたサイトスピン調製物からの300細胞の手動カウントを用いて白血球百分率の計数を行う。試料がすべて採取されている場合、BAL液を氷上で融解し、KC(IL−8の類似体)、TNFα、IL−6及びIL−1β(ElisaTech, Denver, CO)についてELISAを行う。BALFの細胞性を%及び合計の白血球(好中球、マクロファージ、リンパ球)の双方によって特徴付ける。
野生型及び変異体のTRX双方を対照動物と共に2つの濃度と2つの時点で調べ、希釈液対照に比べた変異体及び野生型のTRX双方に対する急性の気道炎症反応を測定する(表2)。反応は、体重、BALFにおける総白血球数、相対的な及び全体の好中球、マクロファージ及びリンパ球の数及び上記で列記した炎症性サイトカインにおける変化を特徴とする。r(Cys)hTrxは同一用量レベルのrhTrxに比べて有害効果と同様にサイトカイン活性及び細胞数を高める能力の用量依存性の減衰を示す。

r(Cys)hTrx及びネイティブのrhTrxを気管内投与した正常なマウス及びβENaCマウスにおける病態生理学的な及び炎症性の効果の評価
Rancourt及び共同研究者ら(Rancourt, R. et al., Free Radic Biol Med, 42(9):1441-1453, 2007)による以前の研究は、気道における追加の(外来性の)粘液の存在はネイティブのTrxによるサイトカイン放出の刺激を有意に低下させることを明らかにした。このことは、高い粘液負荷を持つCF患者がTrxの細胞外の還元のために低下した炎症反応を示し得る一方で、(1)内在性粘液の高い産生及び(2)前から存在する炎症反応(CFにおけるような)伴った気道モデルではチオレドキシンの効果に関する情報は現在のところない。この試験の目標は、慢性の粘液性の閉塞/炎症のマウスモデルを用いてネイティブのTrx及びr(Cys)hTrxの効果を調べることである。これらの試験については、ENaCチャンネルのβサブユニットを過剰発現し、肺において水の過剰吸収を示すβENaCマウスモデルが使用される(Mall, M., et al., Nat Med. 10(5):487-493, 2004)。βENaCマウスは過剰な粘液を産生し、粘液による気道の塞栓及び炎症を伴ったCF/COPD様の肺の表現型を発症する。これらのマウスは多数の前臨床試験にてCF肺疾患のモデルとして以前使用されていた(たとえば、Graeber, S.Y., et al., Am J Respir Cell Mol Biol 49(3):410-417, 2013)。本試験では、(1)気道/肺の組織病理及び炎症の状態に対するr(Cys)hTrxに対比したネイティブのrhTrxの効果、及び(2)βENaCマウスにおける粘液負荷に対するこれらの剤の効果を測定して送達用量の範囲にわたるネイティブTrx及び単一システインTrx(r(Cys)hTrx)の相対的な効果を調べ、慢性の粘液過剰産生と前から存在する炎症がこれらの化合物の潜在的な肺への毒性をどのように調節するのかを理解する。
WTマウス及びβENaCマウスを用いた生体内でのネイティブのチオレドキシンの3つの濃度(100μM、500μM及び1000μM)の効果及び同じ濃度におけるr(Cys)hTrx化合物の毒性と薬剤有効性の比較を判定する。条件当たり最少7匹のマウスを調べる。化合物はすべて所与の濃度にて気管内導入(10〜25μl)を介して投与する。単回用量処理を使用し、毒性と薬剤有効性は4つの時点(投薬後4時間、24時間、72時間及び7日)でモニターする。早期の時点(4〜24時間)は慎重にモニターする。後期の時点(72時間〜7日)は薬剤毒性が24時間で維持されるならばモニターする。低濃度(100μM、500μM)の効果はそれぞれ24時間後又は3日後持続されないと予想される。使用されるプロトコールはマウスの肺への10μlもの少量を確実に送達するのを可能にする。手短には、動物をイソフルランで麻酔し、小型咽頭鏡を用いて咽頭後部が可視化されるマウス用挿管台に載せる。薬剤を直接気管に導入する(気管内導入、IT)、又はさらに均質で深い堆積のために、PennCentury装置を用いた微量噴霧によって25μlを送達する。処理の後、適当な時点で動物を安楽死させる。インタクトな肺を組織学のために採取し、及び種々の測定、すなわち、細胞数、ムチン含量及び還元状態及びサイトカインの測定のために気管支肺胞洗浄液を採取する。さらに詳細には、主気管支の周りでの結紮を介して左肺を縛り、組織検査のために外科的に単離する。気管切開と500μlの無菌PBSを用いたカニューレを介して反対の肺(右葉)の気管支肺胞洗浄を行う。肺全体を固定した後、H&E及びAB/PAS染色によって長手方向の切片を分析し、炎症及び保持された粘液を評価する。細胞数/百分率、ムチンの含量と還元状態(アガロースゲル分離法及びウエスタンブロット)、及びサイトカインについてBALを分析する。
試料サイズ及び統計的解析:条件当たり7匹のマウス合計について種々の濃度(100μM、500μM、1000μM)で化合物のそれぞれを評価する。2つの群、野生型(WT)マウス及びβENaCマウスを調べる(表3)。以下の表にて「X」によって示すように、合計36の条件×7匹のマウス(合計252匹)を調べ、解析して各条件の試料間及び試料内の変動の十分な理解を提供する。データ解析については、個々の試料/群の間での比較は両側スチューデントのt検定を用いて行う。複数の群間の比較については一元配置分散分析(ANOVA)を使用する。解析すべてについての有意性はp<0.05に設定するであろう。単一システインr(Cys)hTrxはネイティブのrhTrxに対比して匹敵する投与量で比較的軽度の効果を生じ、この効果はβENaCマウスでは内在性の粘液の存在によってさらに減衰される。

実施例9
この実施例は、r(Cys)hTrxが野生型rhTrxに対比して粘液を正常化する活性を改善することを明らかにする。喀痰圧縮アッセイにて患者の喀痰試料(治療当たりn=6)の正常化に対する野生型rhTrx、r(Cys)hTrx及び2つの濃度でのジチオスレイトール(DTT)、等モル濃度でのN−アセチルシステイン(NAC)及び組換えヒトDNase(rhDNase)を含む種々の対照の効果を測定した。喀痰試験は、各実験について3人までの個々のCF患者からの4〜6の自然に吐き出された(誘導ではない)試料を用いて実施された。喀痰の「好まれる」部分(すなわち、粘液)を採取し、各試料から合わせ、合計した試料を撹拌又は穏やかなボルテックスによって均質化し、その後、試験管に分け、希釈液(すなわち、トリス緩衝液)、希釈液中のDTT(0.58mM及び1.5mM)、希釈液中のNAC(0.58mM)、希釈液中のrhDNase(0.58mM)、希釈液中のrhTrx(0.58mM)又は希釈液中のr(Cys)hTrx(0.58mM)のいずれかに暴露する。DTTは陽性対照として各実験で新しく作った。図2はr(Cys)hTrxが野生型チオレドキシン(図2では「rhTrx」と呼ばれる)に比べて患者の喀痰の液状化を顕著に高めることができたことを示すので、ネイティブのTrx及び看護用ヒトDNaseである「Pulmozyme」(商標)(「rhDNase」)の標準に対比して改善された粘液正常化活性を示す。チオレドキシン及びDNaseの双方は同様に、米国の外では一般に去痰剤として使用される等モル量のNACよりもさらに強力だった。ヒトCF患者の喀痰を用いたこれらの結果は、ムチンCysへの予想された共有結合にもかかわらず、単一システインのr(Cys)hTrxはCF喀痰の粘弾性の正常化について完全に有能なままである(及び未修飾のネイティブrhTrxよりも一層さらに強力である)ことを明らかにしている。しかしながら、肺上皮を交差する小分子12kDのr(Cys)hTrxの潜在力はムチンへの結合によって大部分最少限に抑えられるはずである。次いでその後、細胞の核に入り、たとえば、NFκBのようなレドックス調節性の標的タンパク質と相互作用する活性のあるr(Cys)hTrxの能力は、CD30TNF受容体のTrxが介在する活性化について理論化されているように、免疫細胞上の細胞外の膜貫通ドメインとの相互作用によるシグナル伝達のように、一層さらに減衰される(Schwertassek, U., et al., EMBO J 26(13):3086-3097, 2007)。r(Cys)hTrxについて観察された高い潜在能(図1a、1b及び2)は、ネイティブrhTrx(又は実際、小分子チオール剤)による処理とは異なって、結合したCysがジスルフィド結合の再形成から遮断されるので、分子によるムチンCysの共有結合に一致する。
本明細書で議論された又は引用された出版物及び他の参考文献のそれぞれは、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
本発明の種々の実施形態を詳細に記載してきたが、当業者がこれらの実施形態の改変及び改作を思いつくのは明らかである。しかしながら、そのような改変及び改作は、以下のクレームで言及されるような本発明の範囲内にあることが明白に理解されるべきである。



  1. 過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を低下させる方法であって、接触させる工程の前に比べて粘液又は喀痰の粘性を低下させるのに有効な、還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物に患者の粘液又は喀痰を接触させることを含む方法。

  2. 患者が、粘液又は喀痰の異常な又は過剰な粘性又は粘着性が疾患の症状又は原因である肺疾患を有する請求項1に記載の方法。

  3. 患者が、粘液又は喀痰の異常な又は過剰な粘性又は粘着性が生物学的還元剤活性の欠如に関連する肺疾患を有する請求項1に記載の方法。

  4. 患者が、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、喘息及び消化管疾患から成る群から選択される疾患を有する請求項1に記載の方法。

  5. 患者が嚢胞性線維症を有する請求項1に記載の方法。

  6. 消化管疾患がコクシジウム症である請求項4に記載の方法。

  7. 患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させる工程が、鼻内、気管内、気管支、肺への直接導入、吸入及び経口から成る群から選択される経路によって患者に組成物を導入することによって実施される請求項1に記載の方法。

  8. 接触させる粘液又は喀痰が患者の気道、消化管又は生殖管に位置する請求項1に記載の方法。

  9. 薬学上許容可能なキャリアにて組成物が患者に投与される請求項1に記載の方法。

  10. 患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させる工程が、組成物との接触の前に比べて患者に由来する粘液又は喀痰の試料における遊離のチオールの比率を高める請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  11. 患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させる工程の後、接触させる工程の前に比べて患者が努力呼気肺活量(FEV)で少なくとも約2.5%の上昇を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  12. チオレドキシン単一システイン活性部位が、C−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号21)、W−C−G−P−X−K(配列番号23)、X−C−X−X−S−X(配列番号25)、X−C−G−P−S−X(配列番号26)、及びW−C−G−P−S−K(配列番号27)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  13. チオレドキシン単一システイン活性部位がアミノ酸配列C−X−X−S(配列番号24)を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  14. チオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドが粘液タンパク質におけるシステイン残基に共有結合する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  15. 粘液タンパク質がムチンである請求項14に記載の方法。

  16. 粘液タンパク質が、呼吸器粘液タンパク質及び消化管粘液タンパク質から成る群から選択される請求項14に記載の方法。

  17. タンパク質が、原核細胞のチオレドキシン、真菌のチオレドキシン、植物のチオレドキシン及び哺乳類のチオレドキシンから成る群から選択されるチオレドキシンを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  18. タンパク質がヒトのチオレドキシンを含む請求項1〜9及び17のいずれか1項に記載の方法。

  19. 組成物がさらにタンパク質のチオレドキシン単一システイン活性部位を還元するために還元剤を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

  20. 組成物がさらにチオレドキシン還元酵素を含む請求項19に記載の方法。

  21. 粘液又は喀痰の粘性を低下させるのに使用するための組成物であって、還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドと、過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰の治療のための少なくとも1つの追加の剤とを含む組成物。

  22. チオレドキシン単一システイン活性部位が、C−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号21)、W−C−G−P−X−K(配列番号23)、X−C−X−X−S−X(配列番号25)、X−C−G−P−S−X(配列番号26)、及びW−C−G−P−S−K(配列番号27)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項21に記載の組成物。

  23. チオレドキシン単一システイン活性部位がアミノ酸配列C−X−X−S(配列番号24)を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項21に記載の組成物。

  24. タンパク質が、原核細胞のチオレドキシン、真菌のチオレドキシン、植物のチオレドキシン及び哺乳類のチオレドキシンから成る群から選択されるチオレドキシンを含む請求項21〜23のいずれか1項に記載の組成物。

  25. タンパク質がヒトのチオレドキシンを含む請求項21〜24のいずれか1項に記載の組成物。

  26. 組成物がさらに還元剤を含む請求項21〜25のいずれか1項に記載の組成物。

  27. 組成物がさらにチオレドキシン還元酵素を含む請求項26に記載の組成物。

  28. 還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む医薬組成物であって、前記組成物が経口投与又は肺へのエアゾール投与のために製剤化される医薬組成物。

  29. チオレドキシン単一システイン活性部位が、C−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号21)、W−C−G−P−X−K(配列番号23)、X−C−X−X−S−X(配列番号25)、X−C−G−P−S−X(配列番号26)、及びW−C−G−P−S−K(配列番号27)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項28に記載の医薬組成物。

  30. 肺へのエアゾール投与がネブライザ装置による請求項28に記載の方法。

  31. ネブライザ装置が振動メッシュ式ネブライザである請求項30に記載の方法。

  32. 組成物がさらに還元剤を含む請求項28〜31のいずれか1項に記載の医薬組成物。

  33. チオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物であって、前記単一システイン活性部位におけるシステインが粘液タンパク質におけるシステイン残基に共有結合する組成物。

  34. チオレドキシン単一システイン活性部位が、C−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号21)、W−C−G−P−X−K(配列番号23)、X−C−X−X−S−X(配列番号25)、X−C−G−P−S−X(配列番号26)、及びW−C−G−P−S−K(配列番号27)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項33に記載の組成物。

  35. 粘液タンパク質が、呼吸器粘液タンパク質及び消化管粘液タンパク質から成る群から選択される請求項33〜34のいずれか1項に記載の組成物。

  36. 粘液タンパク質がムチンである請求項33に記載の組成物。

  37. 過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を低下させる方法であって、ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤を含む組成物に患者の粘液又は喀痰を接触させることを含む方法。

  38. ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤が同一分子である請求項37に記載の方法。

  39. 分子がチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドである請求項38に記載の方法。

  40. ジスルフィド結合還元剤及びシステイン遮断剤が異なる分子である請求項37に記載の方法。

  41. ジスルフィド結合還元剤が、ジチオスレイトール(DTT)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルタチオン、ジチオグリコール酸、2−メルカプトエタノール、N−アセチルシステイン及びトリス−(2−カルボキシエチル)ホスフェンから成る群から選択される請求項37に記載の方法。

  42. システイン遮断剤が、ヨードアセトアミド、ヨード酢酸又は他のアルキル化剤から成る群から選択される請求項37に記載の方法。

  43. 細胞取り込みができないチオレドキシン活性部位を有する化合物を含む組成物を患者に投与することによって過剰に粘性又は粘着性の粘液を有する患者を治療する方法。

  44. 化合物が、チオレドキシンの単一システイン活性部位を含むタンパク質又はペプチド、チオレドキシン部分と細胞表面の受容体リガンドの部分を含む融合タンパク質、及びチオレドキシン活性部位を含むタンパク質又はペプチドと配列番号12の35位でのシステインに相当するシステインを遮断する化合物との組み合わせから成る群から選択される請求項43に記載の方法。

  45. 標的部位への共有結合を形成する薬剤を投与することによって、肺送達、経口送達及び局所送達から成る群から選択される経路による送達に続く患者における薬剤物質への全身性の暴露を防ぐ方法。

  46. 薬剤物質がチオール含有の薬剤物質である請求項45の記載の方法。

  47. 還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含み、且つさらに、レドックス活性のあるチオール基を安定化することが可能である少なくとも1つのサッカリド又はサッカリド誘導体を含む医薬組成物。

  48. サッカリド又はサッカリド誘導体が、スクロース、スクラロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、ラフィノース、マンノース及びマンニトールから成る群から選択される請求項47に記載の医薬組成物。

  49. 還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む動物飼料組成物。

  50. 患者が、哺乳類及び鳥類から成る群から選択される脊椎動物である上記請求項のいずれか1項に記載の方法。

  51. 患者がヒトである請求項50に記載の方法。

  52. 患者がニワトリ又はシチメンチョウである請求項50に記載の方法。

  53. 過剰に粘性又は粘着性の粘液又は喀痰を有する患者にて粘液又は喀痰の粘性を低下させるための、還元状態でのチオレドキシン単一システイン活性部位を含有するタンパク質又はペプチドを含む組成物の使用であって、患者の粘液又は喀痰を組成物に接触させることが、接触させる工程の前に比べて粘液又は喀痰の粘性を低下させる使用。

  54. チオレドキシン単一システイン活性部位が、C−X−X−S(配列番号24)、C−X−X−X(配列番号17)、X−C−X−X−X−X(配列番号19)、X−C−G−P−X−X(配列番号21)、W−C−G−P−X−K(配列番号23)、X−C−X−X−S−X(配列番号25)、X−C−G−P−S−X(配列番号26)、及びW−C−G−P−S−K(配列番号27)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、C残基が還元状態にあり、X残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である請求項54に記載の使用。

 

 

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